ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ株式会社
iQUAVISをベースにMBSE環境を構築し、医療系システムの新規開発を加速
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2013年、ソニー株式会社とオリンパス株式会社の医療事業合弁会社として設立されたソニー・オリンパスメディカルソリューションズ株式会社。同社はソニーの得意とするデジタルイメージング技術とオリンパスが長年培ってきた医療用内視鏡機器開発のノウハウを融合し、優れた画像処理機能を搭載する外科用内視鏡システムなどを開発しています。
この開発現場でシステム設計を担当する水上聡氏は、上流からのトレーサビリティの向上やリスクマネジメントへの対応を目標にMBSE(モデルベース・システムズエンジニアリング)手法の導入や適用範囲の検討を推進。開発現場の課題の明確化や課題に対するアプローチとしてのMBSE適用、プロセス改善の具体化を見出しました。
その取り組みを積極的にサポートしたのは電通総研です。水上氏は同社の支援について「こちらの目標や意図を丁寧に汲みながら柔軟にプロジェクトを後押ししてくれた」と話しています。またMBSEを実践するツールとして採用されたのは電通総研のシステム設計支援ツール「iQUAVIS(アイクアビス)」。その評価について水上氏は「さまざまな要素が複雑に絡み合うシステム設計で設計者が思考を整理するのに非常に優れている」と話しています。
負の連鎖、いかに断ち切るか
「最優先課題は開発期間の短縮です」。そう話すのは同社第1技術部でシステム設計を担当する水上氏。ここでいう「開発期間」とは外科用内視鏡システムの開発期間のこと。
医療系システムの開発では市場投入に手間取ると、新たな法規制や他社の新製品発表などに対応するため仕様変更を余儀なくされ、大きな手戻りが発生します。「そうした負の連鎖を断ち切らなければ」と水上氏は話します。
また他にもその開発には独特の難しさがあると水上氏は指摘します。「自分たちが日頃使っているものであればそのニーズを知ることは比較的容易ですが、医療機器のエンドユーザーは医師や看護師などの医療従事者。彼らがどのようにそれを使い、そこにどのような要求や課題をもっているのかを掴むのは非常に難しいのです」。
こうした難題を乗り越えいかに開発期間を短縮できるか、その処方箋を見出すことが設計現場の大きな課題となっていました。
MBSEによる設計プロセス改革
ソニー時代から“モデルベース”の設計手法に関心が高かった水上氏は、2019年、MBSEの手法がそうした課題を解決する糸口となるのではないかと思い至ります。
MBSEはシステムを構成する要素を構造、機能、振る舞い、要件、性能などの“モデル”として扱い、それらの相互関係をブロック図やアクティビティ図などで視覚化しながら最適設計を導き出すアプローチです。
「しかし、その実践は簡単ではありません」と水上氏は打ち明けます。「一言でMBSEと言ってもまず何をすべきなのか。これまでやっていないことをゼロから始める場合そこにはどうしても産みの苦しみがともないます。なぜそれが必要なのか、経営層を含め社内を説得し、予算取りにも奔走しなければなりません。個人の力技だけではとても難しいのです」。
併走するコンサルティング
電通総研のコンサルティングは目標を共有し、勇気づけ、こちらのモチベーションを支えながら併走してくれました
ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ株式会社
第1技術部1課 システムデザインエンジニア 水上聡氏

MBSE実現の具体策を思案していたタイミングの2021年に、電通総研と同テーマについて相談する機会を持つようになります。
電通総研はもともと自動車や電気精密をはじめ製造業に幅広くものづくりの技術ソリューションを提供しており、コンサルティングサービスの一環として現場力向上、デジタル技術習得、データの分析・活用など、企業の独自ニーズに合わせた研修を行っています。
水上氏からの相談を受けて、電通総研はまず現状プロセスの評価を行い、MBSEの導入を阻む主な要因を特定。さらにソニー・オリンパスメディカルソリューションズのものづくりのあるべき姿からMBSEの適用範囲を絞り込みました。
水上氏はその助言に基づきシステム要求と製品アーキテクチャの明確化を目指したパイロットプロジェクトを立ち上げ、開発プロセス、品質プロセスの検証を2年にわたり実施しました。
サポートにあたった電通総研について水上氏は「長い期間にわたりモチベーションを支えながら併走してもらい、非常に勇気づけられた」と話しています。「多少無理なことでもこちらの意図を汲み、目指す目標を共有して支援してくれました。他社の事例も挙げながら論理的にいま選んでいる道が間違っていないと示してくれたこともありがたかった」。
エンジニアの思考を整理する
直感的な使い勝手が特長のiQUAVISは、エンジニアの思考を整理するのに最適なツールです
ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ株式会社
第1技術部1課 システムデザインエンジニア 水上聡氏

水上氏らのMBSE環境を支えているのは電通総研のシステム設計支援ツールiQUAVISです。水上氏はその一番の特長を使いやすさに見ています。
「iQUAVISならSysMLなど専門性を要するモデリング言語を使用せず、自在にモデルの設定ができます。要求と機能の紐付けや相反する要素の洗い出しも簡単に行え、ある機能を廃止したような場合、その影響範囲を示しながら、なぜ止めたのかの理由も辿れます。エンジニアの思考を整理するのに最適なツールといえます」。
ものづくりの文化としてのMBSE
2024年、iQUAVISを基盤とするMBSEの取り組みを本格始動させた水上氏。上流からのリスクマネジメントや帳票群のトレーサビリティ向上に成果を挙げた一方で、まだやるべきことは多いと話します。
「若いエンジニアも熟練のエンジニアもともにiQUAVISを活用するようになりましたが、MBSEの取り組みはまだ端緒についたばかりです」と語る水上氏。「設計開発の方針を検討するのに必要な情報をiQUAVISに集約し、お客様の期待に応える仕様・スケジュールで製品を提供できるようなエンジニアリング環境を作っていきたい」。
さらに水上氏はこう言葉を続けます。「もちろん時代に応じてものづくりの手法や仕組みは変わっていきます。しかし、そうした変化のなかでも今回導入したMBSEの手法や思考法が現場の文化として長く定着してくれればと思っています。それが結果として魅力的な製品をより速く市場に送り出す力につながっていくなら、エンジニアとしてとても嬉しいですね」。
ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ株式会社様 概要
- 社名:
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ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ株式会社
- 本社:
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東京都八王子市子安町四丁目7番1号
- 設立:
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2013年4月16日
- 資本金:
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5,000万円
- 従業員数:
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約120名(2023年8月現在)
- 事業内容:
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4K以上の解像度技術、3D機能等を有する新型外科用内視鏡及びその関連システムの開発・設計・販売、および手術室等への医療機器・映像機器の統合ソリューション事業

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※記載の会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。
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※“Sony Olympus” logo は、ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ株式会社の商標です。
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※記載情報は取材時(2024年11月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。