PALFINGER

「難しい」「なかなか定着しない」MBSEをめぐる課題をどのようにクリアするか

 

  • ものづくり
写真左より Two Pillars GmbH Managing Director Dr.-Ing. Christian Tschirner(クリスチャン・チュアナー氏)、PALFINGER EUROPE GmbH Head of competence Cluster System Engineering Dr.-Ing. Johannes Christian Zingel(ヨハネス・クリスチャン・シンゲル氏)、株式会社電通総研 シニアディレクター 兼 Two Pillars マネージングディレクター 松田 有記
  • 株式会社日経BPの許可により、『日経クロステックActive』 2024年1月25日掲載の広告から抜粋したものです。禁無断転載©日経BP社

複雑化する開発プロセス。多くの製造業が目指すMBSEの実践

AI(人工知能)やセンサーを駆使して自動制御を可能にするなど、製品のさらなる高度化を図る。IoT(Internet of Things)を活用してリモートからの監視やメンテナンスサービスも併せて提供し、製品単体だけでなくソリューションとしての価値も提供する。

製造業のビジネスは、この数年で大きく様変わりしている。

この変化するニーズやビジネスに対応するために、多くの製造業がチャレンジしているのが「MBSE(Model-Based Systems Engineering)」の実践だ。冒頭で述べたような価値を実現するには、ハードウエア、ソフトウエア、ファームウエア、人、情報、技術、設備、サービスなど様々な要素を適切に扱っていく必要がある。その複雑な製品開発を、モデルに基づいたシステムズエンジニアリングによって実現しようと考えているわけだ。

しかし、チャレンジしたものの、扱う要素が多様かつ複雑すぎて検討しきれない、またそれを支援するはずのモデルも複雑になりすぎて使い勝手が悪い。その結果、メリットが体感できず、社内に定着しないなど、多くの企業が課題に直面し、MBSEの実践に向けた取り組みが頓挫しているという。

では、MBSEの実践と定着に成功した企業は、どのように課題をクリアしたのか。例えば、革新的なクレーンおよびリフティングソリューションで世界をリードするメーカーおよびプロバイダーであるPALFINGER社では、自動車業界からプロセス型製造業まで、幅広い企業のMBSEの実践を支えているツールを活用して、現場へのスムーズな定着を図ったという。以下では、その取り組みを紹介する。

なぜ業界を代表する企業がMBSEの実践に舵を切ったのか

PALFINGERは世界規模で事業を展開し現在ヨーロッパと米国で最大手であり、アジア太平洋地域でも強力にビジネスを拡大している※1。また、ローダークレーンの分野では世界ナンバーワン※2。リサイクル、輸送、物流からオフショア船やクルーズ船まで、建設業や林業業向けのカスタマイズされたソリューションに特化した幅広い製品とソリューションを提供している。

同社がMBSEを実践する背景には、現在、取り組んでいる経営目標がある。

「当社は、2030年をターゲットとした経営目標の中でソリューションの多様化、そしてデジタル化に注力することを掲げています」とPALFINGERのJohannes Christian Zingel(ヨハネス・クリスチャン・シンゲル)氏は語る。

PALFINGER EUROPE GmbH
Head of competence Cluster System Engineering
Dr.-Ing. Johannes Christian Zingel(ヨハネス・クリスチャン・シンゲル氏)

ソリューションの多様化とは、顧客ニーズをさらに細分化し、これまでは同社のクレーンを活用することが難しかった場所や用途でも利用できるようにするための取り組みだ。現在の同社は陸上用だけでなく海洋上用も含めた8つのプロダクトラインを有しているが、それらを単にクレーン機器単体として提供するだけではなく、最初から自動車とセットアップした状態で提供するなど、ソリューションとしての選択肢を拡充しているのである。

また、デジタル化対応とは、文字通りデジタル技術を駆使した製品・サービス、およびソリューションの高度化である。AI、IoT、xR(クロスリアリティ)など、様々な先進技術を製品・サービスに組み込み、これまでにはなかった機能やサービスを実現している。

「これらを念頭に取り組む企画、設計、開発プロセスは、これまでのクレーン単体とは異なり非常に複雑。新しい機能や構造の要求を考慮しなければなりません」とZingel氏は言う。

図1 パルフィンガーが取り組むソリューションの多様化イメージ
*本画像の出展は2023年11月28日に実施した電通総研主催セミナー「欧州最新事例とサステナブルMBSEの実践方法」にて、PALFINGER社のJohannes Christian Zingel氏が発表された資料となります。また、本セミナーの動画は電通総研のホームページにて公開中です。https://mfg.dentsusoken.com/solution/mbse-conceptual-design/concept-design/mbse-2.php

MBSE実践の定着に貢献するプラットフォーム

このような事情を背景に同社はMBSEの実践に取り組んでいる。そのプラットフォームとして利用しているのが電通総研の「iQUAVIS」である。

iQUAVISは、自動車や精密機器などの複雑なシステム製品の構想設計段階において、設計のすり合わせが必要な箇所を特定し、最適な設計手順を導く、日本発の構想設計支援システムである。技術や業務、判断の見える化をサポートするツールとして、全世界で約150社の製造業に採用されている実績を持つ。

「MBSEに取り組むものの、実践しているのは社内のごく少数のユーザーだけ。なかなか定着につながらない──。iQUAVISは、多くの製造業が直面するMBSEの課題解決をサポートします」と電通総研の欧州拠点であるTwo PillarsのChristian Tschirner(クリスチャン・チュアナー)氏は語る。

Two Pillars GmbH
Managing Director
Dr.-Ing. Christian Tschirner(クリスチャン・チュアナー氏)

iQUAVISの最も大きな特徴は、製品の企画、設計、開発といった上流フェーズにおけるシステムモデリングから品質やリスクの分析、さらにはプロジェクト計画の立案・管理までを一貫してサポートしていること。その使い勝手によって、なかなか定着しないというMBSEの最大の課題を解決する。それを評価して、導入を決める製造業は多い。

図2 段階的にブレークダウンしたモデルを作成できるiQUAVIS
*本画像の出展は2023年11月28日に実施した電通総研主催セミナー「欧州最新事例とサステナブルMBSEの実践方法」にて、PALFINGER社のJohannes Christian Zingel氏が発表された資料となります。また、本セミナーの動画は電通総研のホームページにて公開中です。https://mfg.dentsusoken.com/solution/mbse-conceptual-design/concept-design/mbse-2.php

パートナー、顧客との情報共有がスムーズになり手戻りが減少

iQUAVISの導入後、PALFINGERは、様々なプロジェクトでMBSEを実践している。海洋上で動作させるクレーンの開発プロジェクトもその1つ。※3

「このプロジェクトは、顧客であるAker BPや関連機器のサプライヤーなど、複数の企業が共同で進めています。数年をかけて取り組んでいる大プロジェクトですが、iQUAVISを使ってMBSEを実践したことでプロジェクトは一気に加速しました」とZingel氏は語る。

具体的には、iQUAVISで定義したモデルが共通言語となったことで、他社も含むプロジェクトメンバー間、そして顧客企業との間で情報共有が進み、議論の質が向上。ともすれば、手戻りの原因ともなっていた認識のズレが解消された。「使い勝手に優れたiQUAVISによってMBSEが簡便に実践できるようになりました。そのことがプロジェクトのスムーズな進捗、ひいてはプロジェクトチームのチームワークの強化につながっています」とZingel 氏は強調する。

図3  iQUAVIS画面例
*本画像の出展は2023年11月28日に実施した電通総研主催セミナー「欧州最新事例とサステナブルMBSEの実践方法」にて、PALFINGER社のJohannes Christian Zingel氏が発表された資料となります。また、本セミナーの動画は電通総研のホームページにて公開中です。https://mfg.dentsusoken.com/solution/mbse-conceptual-design/concept-design/mbse-2.php

製品から導入、定着支援サービスまでをワンストップで提供

PALFINGERは、iQUAVISだけでなく、Two Pillarsを介した電通総研のサポートも高く評価している。

「電通総研ならびにTwo Pillarsは、高度かつ専門性の高いノウハウを持っているだけでなく、緊密なコミュニケーションを通じて当社の業務を深く理解しながらサポートを行ってくれました」とZingel氏は語る。

実際、電通総研はZingel氏が強調するようにiQUAVISの提供に伴う導入支援を非常に重視している。
「iQUAVISの初期導入から活用の定着まで、全てのフェーズにおいて、お客様に伴走型のサービスを提供します。ツールの提供から業務適用コンサルティング、また他のツールやシステムとの連携開発まで、お客様の課題解決に必要となる多様な支援サービスをワンストップで提供できるのが私たちの強みです」と電通総研の松田有記は紹介する。

株式会社電通総研
シニアディレクター
兼 Two Pillars
マネージングディレクター
松田 有記

伴走型のサポートは、製品の進化にもつながっている。同社はサポートを通じて得られる、製品への要請にも真摯に向き合っているからだ。「要望に応じたカスタマイズにも柔軟に対応しています。その機能に対するニーズが高いと判断すれば、お客様の協力も得ながら、iQUAVISの標準機能として実装する場合もあります」と松田は明かす。

このようにPALFINGERは、iQUAVISを活用して、社内にMBSEを実践する文化を定着させ、既に様々な成果を上げている。「今後も力強くMBSEの実践を推進していきます。私たちが追求しているのは上からの押しつけではなく、現場主導、ユーザーセントリックなMBSEの実践。そのためには、誰でも取り組める環境が必要不可欠。それで導入したのがiQUAVISです。今後もiQUAVISを活用して使いやすい環境を整え、開発にかかわるすべての人員がMBSEに取り組んでいける体制を実現していきます」とZingel氏は語る。

MBSEの実践が進まない。実践に向けたチャレンジを開始したい。そう考えている製造業にとって、同社の事例は大きな示唆を含んでいるはずだ。

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