オリンパスメディカルシステムズ株式会社

iQUAVISで医療機器開発のトレーサビリティを担保し、攻めのものづくりへ

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写真左より オリンパスメディカルシステムズ 開発効率マネジメント 開発プロセス推進 武田百恵氏、開発効率マネジメント 辻潔氏、開発効率マネジメント 開発プロセス推進 Specialist 伊藤満祐氏

2004年設立のオリンパスメディカルシステムズ株式会社。医療用光学機器の世界最大手メーカーオリンパスの子会社として中核事業である医療用内視鏡の開発製造を担い、世界100カ国以上に市場展開している同社は、2012年からものづくりのプロセス改革に取り組んできました。主な目的はQFD(品質機能展開)を軸とした設計開発のトレーサビリティ強化。人の生命に関わる医療機器の承認を得るためには製品開発に関わるさまざまな情報を各国の薬事当局の求めに応じて提出する必要があります。2016年、同社は製品関連情報(VoC:Voice of Customer、要求品質、品質特性、薬事規制など)を一元的に管理するサイトを立ち上げ、さらに2018年、それらの情報を紐付けて可視化する仕組みを構築しました。システムとして選ばれたのは電通総研のiQUAVIS(アイクアビス)。改革プロジェクトを指揮した開発プロセス推進チームの辻潔氏はiQUAVISについて「医療機器に求められるレギュレーションや製品の機能要件を、さまざまなドキュメントに紐付けて管理できるだけなく、検討計画や開発計画にも展開し、プロジェクト内での検討過程の見える化や、日程管理にも活用できる。医療機器という安全や信頼が最も大切な製品開発を強力に後押ししてくれている」と話しています。

医療機器開発の生命線

ハイビジョン内視鏡システムなど先端光学医療機器を開発するオリンパスメディカルシステムズ。そのものづくりにおいて重要課題の一つといえるのが、製品を作る・改良を加える際の要件や基となった情報のトレーサビリティです。同社開発プロセス推進チームSpecialistの伊藤満祐氏はそれを「生命線」と呼びます。

「たとえば北米市場で医療機器を販売するにはFDA(アメリカ食品医薬品局)の承認が必要で、その製品はQSR(品質システム規制)に準拠していなければなりません」と伊藤氏は話します。「そのためにはどうやってユーザーの要望を吸い上げ、それをどう解釈して製品に落とし込んでいったのか、開発の意図や経緯を法規制当局の要求に応じて説明することが必要です。すべてをエビデンスとして残し、追跡できなければなりません。ここにトレーサビリティの課題が生じるわけです。そこが解決できなければ製品を販売することができません」。

しかし、その仕事は一筋縄ではありません。製品開発は膨大な要件や技術のつながりによって成り立っており、それらはまた複雑に絡まり合っているためです。

「内視鏡カメラの映像ユニットだけでも2万近くの要件が存在し、それらを紐付けると5万本もの線が入り乱れるネットワーク図になります」と伊藤氏は説明します。「もはや表計算ツールなどで整理できるレベルではありません」。


QFDから要件管理へ

オリンパスメディカルシステムズでは2012年から本格的なものづくりのプロセス改革が始まっており、その道筋をつけてきたのが伊藤氏らのチームを指揮する辻氏。新規製品開発の経験のある辻氏は早期からQFD(品質機能展開)の重要性に気づき、ユーザーの要望を正確な設計用語に翻訳し、開発に生かす仕組みを模索してきました。

その足がかりとして辻氏はコールセンターに届いたユーザーの声や営業の日報、医師の要求、製品指針、市場動向、製品要件など、社内に散在する情報を統一されたフォーマットで一元的に保管するVoC(Voice of Customer)サイトを立ち上げました。

2013年、辻氏はこの仕組みをさらに実践的に生かすため大手システム会社のソリューションを導入。しかし、それは残念ながら現場に根付かなかったと言います。「開発元の責任者を招いて講習会を開いたりしましたが、使いこなすのに手間がかかり、結局、受け容れられませんでした」と辻氏は振り返ります。「新しいツールというのは便利さがすぐに実感でき、自然に広がっていくようなものでなければいけません」。

諦めかけていた矢先、辻氏は電通総研(当時ISID)の開発したツールiQUAVISに出会います。「機能要件をさまざまなドキュメントに紐付けて管理できるだけなく、それをベースにした設計管理や日程管理にも有効で、かつ使い易く、まさに一石二鳥。あれこれ検討して来ましたがこれこそ求めていたツールだと思いました」と辻氏は話します。

iQUAVISは、電通総研が製造業向けに提供する「開発の見える化」のためのツールです。複雑に絡み合う要件や機能、実現手段、課題と対策、実行計画と進捗状況等、様々な情報を紐づけ、トレーサビリティが担保された状態で、検討の粒度を段階的に詳細化していくことが可能です。


開発部隊に浸透

「日程管理機能も備えたiQUAVISはプロジェクトマネージャーにとっても有効なツールです」

オリンパスメディカルシステムズ株式会社 開発効率マネジメント 開発プロセス推進 武田百恵氏

その後QFD理論や各国の薬事法規制への理解を深めた辻氏らは2018年、開発の2部門15ユーザーにiQUAVISを試行的に導入します。このトライアルが奏功し好感触を得た辻氏らは、徐々に適用領域を拡大させ、現在は25部門340ユーザー、全開発部隊の6割にまで利用が広がりました。
現場でiQUAVIS導入支援を担当した武田百恵氏は「いままで表計算ツールを使って要件管理をしていたエンジニアたちが、他部門の評判を耳にして問い合わせてくる」と話します。「日程管理の機能も備えたiQUAVISは設計エンジニアだけでなくプロジェクトマネージャーにとっても役立つツールだと言えます」。

要件管理、トレーサビリティ管理ではPLMに勝る

「必要最小限の設定で使いこなせるiQUAVISは手軽さにおいてPLMに勝っています。忙しい現場で使っていくには重要なファクターの1つです。」

オリンパスメディカルシステムズ株式会社 開発効率マネジメント 開発プロセス推進 Specialist 伊藤満祐氏

また伊藤氏はiQUAVISについて、用途によってはPLMに勝ると話します。「要件管理、トレーサビリティ管理、システムズエンジニアリング(MBSE)、プロジェクト管理についてはPLMよりもiQUAVISの方が使いやすい。必要最小限の設定で手軽に行えます。PLMはツールが大がかりなゆえに設定項目も多く、とても手軽とはいえません」。

オリンパスメディカルシステムズの開発部隊が実感しているiQUAVISのメリットについて武田氏は以下を挙げています。
 

  • 「ユーザー要求」「製品要求」「設計/仕様/コスト」の複層的な親子関係をツリー形式やリスト形式で手軽に表示できる(要素間の因果関係の見える化)。
  • 要件同士の関係性を表計算ツールの二元表、スプレッドシート、ツリー形式のネットワーク図、連番照会用ルックアップテーブルなどの形で表示し、かつ手軽に切り替えられる(トレーサビリティマトリクスと 因果関係の追跡)。
  • 電気/機構/ソフトなどの製品構成を示すブロック図をはじめ、機能ブロック図、状態遷移図、ユースケース図といったブロックダイアグラムを容易に作成できる(ブロックダイアグラムによる要件の可視化)。
  • タスクの折りたたみや一行への複数タスクの書き込み、大中小日程の階層表現が可能な日程表により、関連する開発プロジェクトの進捗を一望できる。管理者が各日程の影響を容易に把握できる(プロジェクト管理への有効活用)。
  • 国ごとの法規制(日本薬事/米国510K/韓国薬事など)を網羅した共通テンプレートを構築し、申請したい国を選択するだけで申請資料を作成できる(法規制対応テンプレート)。

 

生き残りの必須要件

「iQUAVISはこれからの製造業が市場競争で生き残っていくための武器となります」

オリンパスメディカルシステムズ株式会社 開発効率マネジメント 辻潔氏

iQUAVIS導入により設計開発プロセスの効率と透明性を高めたオリンパスメディカルシステムズ。医療機器業界だけでなく製造業全体において今後トレーサビリティへの対応力が盛衰の鍵を握るようになると辻氏は話します。

「顧客の声、市場の声を正確に開発に取り込み、それを製造まで落とし込むことができるかどうか、そしてその経緯や潜在的リスクを機敏に追跡できるかどうか。そうした力を備えた企業だけが今後の市場競争で生き残っていく。iQUAVISはそのためのツール以上の武器なのです」。

社内で独自に作り上げたVoCサイトを起点に、全体を俯瞰・管理できるプラットフォームへと発展させた今回のプロジェクト。プロジェクトを伴走した電通総研について、伊藤氏はこう話します。「疑問や質問などへのレスポンスが早く、解決が難しい場合も代替案を提案し、解決に導いてくれた。とても頼れるパートナーだと感じていました」。
辻氏も、電通総研を次のように評します。「これまでお付き合いしたパートナーのなかで一番心強かった。現場の課題に耳を傾けしっかり把握したうえで一緒に解決策を考えてくれる。ほかのパートナーにはない意欲と能力が感じられるサポートでした」。

会社概要

社名:
オリンパス メディカル システムズ株式会社
本社:
東京都八王子市石川町2951番地
設立:
2004年
主要製品:
内視鏡、治療機器(処置具)、エネルギーデバイスなどの医療機器の開発、製造、販売
  • 記載の会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。

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