株式会社ニコン
「魂を込めた変革」の実現
“iQUAVIS”による見える化で製品開発の日程遅延を解消
“iQUAVIS”による見える化で製品開発の日程遅延を解消
- ものづくり
- プロジェクト管理
カメラ、映像関連機器の領域で世界をリードし続けているニコン。一般ユーザーから映像作りのプロに至るまで、世界中のあらゆる層から寄せられる多様で高度な期待に応えていく使命を同社開発陣は担っています。光学・エレキ・メカ・ソフトウエアの担当者たちが、いかに価値ある技術変革を製品に結びつけ、いかに早くユーザーに届けるか、という課題と格闘する中、解決策として導入されたのがISIDの“iQUAVIS(アイクアビス)”でした。
開発から属人性を排除し、組織の力を上げる
映像に関わるニコン製品のすべてを開発しているのが映像カンパニー開発本部。そして、これらの製品に用いられる交換レンズの設計を一手に引き受けているのが第二設計部です。チームの目標は、圧倒的に高品質な製品を、適正な価格で迅速に市場投入するための製品設計を行うこと。第二設計課の泉水隆之氏は、マネジャー就任以来、この目標を達成するために、まずは第二設計課の仕事のやり方をあらゆる角度から改善・改革していったといいます。
「その一例が映像カンパニー全体で取り組んでいる試作レスによる開発です。シミュレーション技術を用いて、基本設計はもちろん、ゴーストなどのトラブル対策や衝撃耐久試験に至るまで、試作機を作ることなくコンピュータ上で進めています」
改革は、先端開発技術の導入だけではありませんでした。
「ニコンにしかないノウハウと知見。我々はそれを大量に持っている。長きにわたり世界のトップを走ってきた事実がそれを証明しています。しかし、その多くは特定の開発者の頭脳に収められてきました。つまり属人性が非常に高かったのです。私たちはそれを標準化し、皆で共有しようと考えました」(泉水氏)
独自技術も含めた知見とノウハウの標準化・共有。さらに泉水氏は第二設計課内で行われる全オペレーションの棚卸しにも踏み切りました。実現すればすべての開発者が尖った技術を自在に操り、高度なノウハウを組み合わせて、今まで以上にクリエーティブな成果を生み出していける。開発そのもののスピードも向上する。ただし、この「業務の見える化・標準化・共有化」を実現するには膨大な作業が必要です。
「私は号令を発しただけ。実際に大汗を流して形にしたのは、ここにいる二人です」(泉水氏)
その一人、小濱昭彦氏は改革の実行当初をこう振り返ります。「大変な作業量になるのは分かっていました。しかし、今まで以上にニコンの組織力を上げるためには絶対に必要だと確信できた。だからこそ喜んで挑戦していきました」
見える化の実現には有効なプラットフォームが不可欠
業務の棚卸し、見える化には
多大な作業量が必要でしたが
最適なプラットフォームを得て、
効果は期待以上に上がっています。
変革の流れを今後さらに加速させていきます
泉水 隆之氏
もう一人、三輪哲史氏は動き出してすぐに、有効なプラットフォームの必要性を痛感したといいます。
「業務手順やノウハウを精緻にドキュメント化したとしても、それらが開発プロセスの流れに沿って分かりやすく表示されなければ真の『見える化』にはなりません。さらにはそういった情報が、メカ、エレキ、ソフト、光学、生産など、開発に関与するすべての部署で等しく共有できなければ、実際の開発には適用できません。ところが、こういった要件を満たす操作性の良いツールがなかなか見つかりませんでした」
それまで多くの開発者が工程表管理に使用していた表計算ソフトは操作性は良いものの、プロセスの細やかな表示や成果物の共有面に問題があり、プロジェクトのたびに工程表の作成に膨大な時間がかかっていました。また、市販のプロジェクト管理ツールは、機能は豊富ではあるものの、操作性や工程表示の柔軟性、部門間での情報共有機能に問題がありました。こうして数多くのツールを模索し、そして到達した答えが“iQUAVIS”の導入でした。「画面を見た瞬間、これだ!と思いました。複雑なプロセスを柔軟に表示することができる。開発プロセスの節目に当たるゲートも見える化できる。プロジェクトで発生している問題点を全員で共有し、解決した上で次のプロセスに進める。そうして日々変化していく日程を皆が同じプラットフォーム上でたどっていける。有効な機能が、非常に判りやすいインターフェースの上でしっかり揃っていたのです」(小濱氏)
「プラットフォーム+魂注入=明確な効果」で変革は加速
“iQUAVIS”の導入を即決したのは
多機能で操作性に優れていたという理由
だけではありません。
運用する者、利用する者が魂を注入できるプラットフォームだったからです
小濱 昭彦氏
こうして導入された“iQUAVIS”。ではその効果は?
「開発段階における遅延が一掃されました。これまで1年かかっていたものが5カ月で達成できた例もあります。そして、各工程での設計の精度も上がり、手戻りがなくなりました。つまり、開発期間の短縮と設計品質の向上が同時に実現できたのです」(泉水氏)
「これまでの属人的環境での開発に慣れていたため、当初は見える化や標準化という取り組みに懐疑的な関係者もいたのですが、今ではそうしたムードもなくなっています」(三輪氏)
「優れたプラットフォームを入れただけではなく、魂を注入できたからこそ、短期間で一気に効果が表れたのだと自負しています」(小濱氏)
魂の注入。この小濱氏の一言に泉水氏も三輪氏も「それだ」と大きく頷きます。はたして「魂」とは何なのか?
「本気で改革するためにはいったい何が必要なのか。細部まで手を抜くことなくプロセスを『見える化』すること、それが私が考える魂。“iQUAVIS”は、その魂を受け止めることができるプラットフォームでした」(小濱氏)
誇り高きプロフェッショナルが集うニコン。それだけに、改革当初は逆風も吹きましたが、納得さえすれば一気にアクセルを踏み込めるのが一流のプロ集団の強み。第二設計課から始まり第二設計部へと広がった変革は、今では生産拠点にも広がりつつあります。「生産拠点の一部ではすでに私たち同様に業務の棚卸しに着手し、小濱・三輪が生産拠点と協力して作成したプロセスのテンプレートを活用しています。そうして“iQUAVIS”を用いて魂を注入する現場が増えれば、部門間の連携はさらに効果的になり、大きな成果につながる。私たちの期待はどんどん膨らんでいるのです」(泉水氏)
2013年12月更新