京王電鉄株式会社
人事シェアードサービスに「POSITIVE」を活用
人事給与システムのトータルコストを約20%削減
人事給与システムのトータルコストを約20%削減
- 人事
グループ企業内の間接業務をいかにスリム化し、業務効率向上とコスト削減の両立を図るか。これは多くの企業にとって重要な経営課題の1つです。このため大企業ではシェアードサービスセンター(SSC)の立ち上げが加速していますが、最も難しいのがシステムと業務の標準化といわれています。
京王グループでは、2017年4月に新たな人事シェアードサービス基盤としてISIDの統合人事システム「POSITIVE」を導入。業務の効率化とトータルコスト削減を実現したプロジェクトの詳細を、京王電鉄 小野郁恵氏に伺いました。
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※本内容は2017年7月に開催された「Human Capital 2017」で発表したものです。
京王電鉄を中心に運輸業、流通業、不動産業、レジャー・サービス業など大きく5つの事業グループから構成されている京王グループ。従業員数は全体で約2万人を数えます。
同グループでは、経理・人事・システムといった業務を集約し、人件費などのコスト低減と業務効率の向上などを目的に、2000年以降3つのシェアードサービス会社を設立しました。経理関連業務を担う「京王アカウンティング(KAC)」と、人事関連業務を担う「京王ビジネスサポート(KBS)」、システム関連業務を担う「京王ITソリューションズ(KIS)」です。
業務の標準化の推進プロジェクトが窮地に
システム集約をしながら、各社の業務を極力システムに合わせるよう見直してもらうことで、京王グループ全体のコストが低減できます。
京王電鉄株式会社
経営統括本部 IT管理部 課長
小野 郁恵氏
その中で、京王グループ各社から人事管理業務や給与計算業務の受託を拡大してきたKBSでは、グループ経営強化構想の一環として、統一システムによる業務の標準化を進めるため、外資系人事ERPの導入を決断。京王電鉄、京王電鉄バスで本番稼働を果たした後、グループ企業1社で稼働を開始しました。
しかし「その展開を進める過程で大きな問題が発生しました」と京王電鉄の小野郁恵氏は振り返ります。「3社への導入で想定以上のコストと期間がかかってしまいました。それぞれ自社開発で運用していた旧システムの機能に合わせるため、アドオン(機能追加)開発を重ねてしまったのが原因です」
このアドオン開発が、継続使用を妨げることになります。 数年後に2回目のハードウエアとソフトウエアの保守・使用期限が迫っており、バージョンアップが必要でしたが、その一時費用だけでも2億円以上かかるということが判明。
「アドオン開発が多かったことが、今後も使い続ける上で、バージョンアップコストなどトータルコストを膨大なものにしていることから、改めて検討した結果、その期限までに新システムを構築すべきという結論に至りました。そこで、まずは給与計算対象者1,000人以上の大規模会社を対象に新しい人事給与システムの選定に入ったのです」(小野氏)
アドオンなしで8割以上の業務適合率
これまでの反省点を踏まえ、新システムでは業務をパッケージ標準に合わせ、アドオン開発を極力抑えること、将来的なグループ展開を考慮して、可能な限り機能の共通化を図ることが前提となりました。その上で、1システムで複数会社・複数制度の管理が可能な「マルチカンパニー対応のシステムであること」、「シェアードサービスセンターでの活用実績があること」、「1システムで10,000人以上の管理実績があること」の3つを選定条件に、6社に提案を依頼。その後、標準機能で80%以上をカバーする業務適合率の高さを目安に3製品で最終選考を行った結果、ISIDが提供するPOSITIVEが新たなシステム基盤として選ばれました。
「当社業務の標準適合率が最も高かったこと、10年の運用でかかる想定コストが最も安かったこと、そして2017年4月に本稼働させたいという、非常にタイトなスケジュール要求にも応えられる点が決め手となりました」と小野氏は語ります。
POSITIVEは、人事システムの主要機能である人事・給与・就業管理やタレントマネジメントなど広範な機能を網羅した大企業向けパッケージです。人事シェアードサービスの基盤システムにも多く採用されており、その導入実績は2,000社以上に及びます。制度・運用が異なる複数企業を1つのシステムで管理できるマルチカンパニー機能を備えるほか、顧客要件に合わせて導入・運用プロセスを標準化したグループ会社用の標準プラットフォームを構築するため、グループ展開が容易に行えることなども大きな特長です。
柔軟性と操作性の高さで業務効率向上に貢献
プロジェクト責任者として小野氏も参加した京王グループとISIDの導入プロジェクトは、2015年8月にキックオフ。「システム構築経験の浅いKBSメンバーを、実績豊富なISIDの方々がしっかりフォローしてくれました。また現行の業務課題を細かくヒアリングして、アドオンを極力抑えつつ高度なパラメータ設定で標準機能に反映していただけたため、スムーズにプロジェクトを進められました」と小野氏は評価します。
そして2017年4月、プロジェクトは予定通りカットオーバー。京王電鉄、京王電鉄バスの2社に加え、京王バスグループの3社を含む計5社に対し、新たにPOSITIVEを基盤とした人事給与システムが適用されました。
「KBSのスタッフからは、POSITIVEの柔軟性と使い勝手が高く評価されています。例えば、受託先企業の人事担当者から特定の条件でデータを抽出してほしいといった要望があると、従来ならシステム管理者に都度依頼しなければなりませんでした。しかしPOSITIVEなら、担当者自身で簡単に要件に沿ったデータをシステムから抜き出すことができます。また、給与計算などを1人分でも間違えた場合、これまではロールバックで全員分の計算をやり直す必要があったのですが、POSITIVEなら1人分のみの修正が容易に行えます。こうした細かな機能が現場業務の効率化につながっているのです」(小野氏)
京王グループの給与支給は毎月15日締めの25日払いというケースが多く、勤怠情報を締めてから銀行への振込手続日を除いた実質3~5営業日ほどで給与計算を集中的に行わなければなりません。これがKBSの大きな負担になっていました。しかし、POSITIVEなら最終的な勤怠情報が入る前に、給与データの処理作業を進めることができます。このため業務プロセスが改善され生産性が大幅に向上したといいます。
スケールメリットのさらなる拡大へ
ランニングコストの低減でもPOSITIVEへの期待は大きく、従来システムと比較した場合、今回のプロジェクト範囲において、10年間でトータルコストを約20%低減できる計算となります。
将来的にグループ内の大規模企業6社の受託業務をPOSITIVEでシェアードサービスした場合については「システム集約をしながら、各社の業務を極力システムに合わせるよう見直してもらうことで、KBSは受託コストをさらに安く提案できるようになり、グループ全体のコストも低減できます」と小野氏は期待しています。KBSは今後、まだシェアード化されていない大規模企業のシステム更新・改修時期などに合わせ、POSITIVEへの移行を提案し、スケールメリットを拡大していく方針です。
POSITIVEを基盤に人事給与システムの集約が進めば、グループ内の人材分布や人件費の推移など、より俯瞰的な視点からリアルな人材状況を把握することが可能となります。今後も京王グループでは、戦略的な人材育成や人材の最適化といった、グループ全体の企業価値向上に向け、新しいシステムをフル活用していく考えです。
2017年9月更新