生成AIソリューション「Know Narrator」と伴走サポートで、業務効率化を推進

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写真左より スルガ銀行株式会社 市場ファイナンス本部 ストラクチャードファイナンス部 営業推進室 戦略営業グループ 斎藤瑞也氏、システム部 開発推進室 アシスタントマネージャー 笠井美名氏、システム部 開発推進室 副部長 櫻井聡司氏、コミュニティバンク 法人営業推進室 副室長 稲毛隆裕氏、コンプライアンス・リスク管理本部 統合リスク管理室 マネージャー 堀江恭太氏、市場ファイナンス本部 ストラクチャードファイナンス部 ポートフォリオ管理室 チームリーダー 伊庭一輝氏

リテールバンキングに特化した金融サービスを展開するスルガ銀行。静岡県沼津市の本店を中心に全国約100店舗の支店を展開しており、早くからネットバンキングに力を入れていることでも知られています。また、電通総研とともに、インターネット支店預金口座開設システム、コールセンターシステム、CRMシステムの3つを「Salesforce」で刷新する全社的なプロジェクトに挑戦、革新的な銀行DXを積極的に推進し続けています。

そんな同社が2024年の夏~秋にかけて新たに取り組んだのが、「生成AIソリューション『Know Narrator』を活用した業務改革プロジェクト」でした。現在は同社の全社員が、社内規程の確認、資料の作成、業務関連の疑問の解決などに「Know Narrator」を活用しています。

プロジェクトを牽引したシステム部 開発推進室 副部長の櫻井聡司氏は、「生成AIは劇的に成長をしている最中の、ある種、未知のテクノロジー。だからこそ躊躇なくいち早く導入し、実際に触って、知ることが重要だと考えた」と話します。加えて、「電通総研が、セキュアな生成AI環境の構築、オリジナルの研修開発、導入後の伴走支援など総合的なサポートを提供してくれたことが成果につながっている」と、その動きを高く評価しました。

生成AIに関する豊富な知見、RAGの構築実績などが決め手に

スルガ銀行が「生成AIを銀行業務の効率化に生かす取り組み」をスタートさせたのは、2023年10月頃のこと。まずは全社員が生成AIを使えるような環境を整え、使いたい社員が使いたいときに、生成AIを活用していたと言います。「この取り組みをもう一歩深化させたい」、そう考え櫻井氏が相談を持ち掛けたのが電通総研でした。

「生成AIのネクストステップとして実施したかったのが、社内の情報を活用し業務改善を進めていくことです。そこで、RAG(Retrieval Augmented Generation)を利用できる生成AIの環境を構築したいと考えました。ただ、我々にはまったく知見がない状況でして……。そこで電通総研に相談したところ、RAG構築の実績やノウハウを豊富に有していること、社内に生成AI活用のプロフェッショナルチームがいることなどがわかりました。」(櫻井氏)

また、電通総研が提供するKnow Narratorなら最新の生成AIモデルが使える、という点にも魅力を感じたとのこと。新しいモデルが出るたびに、Know Narratorでも活用できるよう対応していることがわかり、一気にKnow Narratorへの興味関心が増しました。

Know Narratorは、電通総研がこれまで取り組んできたさまざまなAIプロジェクトの遂行実績を基に独自に開発したエンタープライズ向け、生成AIソリューションです。ChatGPTを安心・安全かつ便利に利用するための各企業専用の環境を提供する「Know Narrator Chat」、ユーザーのチャット履歴を分析し、より効率的な利用方法を提案する「Know Narrator Insight」、ChatGPTが社内文書を参照し回答文を生成することを可能にする「Know Narrator Search」の3つのソリューションで構成されます。

「月1回、計画的にバージョンアップが行われるところにも惹かれました。常にシステムが最新化され続け、陳腐化しないというのは、生成AIを使う上で非常に重要なこと。そこがしっかり担保されているところに信頼感を覚えました。
また、導入を決定する前後に、とある製薬会社さんの事例を教えていただいたことも印象に残っています。ITにそれほど詳しくない社員の方がRAGをはじめとする機能をスムーズに使いこなしているというお話を聞いて、ソリューション自体の使い勝手がよいこと、サポートが確立されていることに好感を抱きました」(櫻井氏)

2か月で約9割の正答率を実現

同社がAIに関する知見やツールそのものの使い勝手のよさとともに重視していたのがセキュリティの部分です。金融機関は、お客様のお名前やご住所だけでなく、資産の保有状況などといった、非常にセンシティブな個人情報を大量に管理しなければならない組織です。「だからこそ、セキュリティは絶対だった」と櫻井氏は話します。

「我々が入力したプロンプトや業務マニュアル、社内規程などが生成AIの学習に使われないことが絶対条件でした。以前使っていた生成AIソリューションについてもそこは意識しており、もちろんクリアもしていたのですが、Know Narratorなら、当行のセキュリティ要件に応じた利用方法にカスタムでき、よりセキュアな環境が構築できると提案いただきました。その点で、非常に安心できたというのも大きかったですね」(櫻井氏)

導入後、すぐに電通総研と共にRAGの構築を開始。まずは社内規程や業務手続を読み込ませて、プロンプトを入力し、その正答率を測るという取り組みを地道に行っていきました。

「9割程度の正答率を目指し、約2か月かけて、資料を読み込ませてプロンプトを投げかけるということを繰り返しました。生成AIが間違った回答をするたびに、『なにが原因で間違っているのか』『どこを改善すれば正しい答えを導き出せるようになるのか』を考え、仮説を立て、改善・検証を行う日々。非常に泥臭く、愚直に、トライ&エラーを積み重ねて正答率を上げていきました。
その際にとても有用だったのが、電通総研のアドバイスです。生成AI開発やRAG構築の経験を十分に持っていたため、『ここが問題なのではないか』『このプロンプトを調整してはどうか』など、まさにプロンプトエンジニアリングの視点で的確な助言をいただけました。また、私たちシステム部だけでなく、社内規程や業務手続を管理する業務企画部のメンバーに、議論に参加してもらったのもよかったです。業務の課題や視点がよくわかりました」(櫻井氏)

櫻井氏は、RAG構築についてこのように振り返りました。Know Narratorを管理するシステム部、データの管理部署である業務企画部、ベンダーである電通総研の3者が、膝を突き合わせて議論や調整を行った結果、2か月で、目標である9割の正答率を達成。この結果を持って、2024年11月に、Know Narratorを全社展開したと言います。

生成AIの使いこなしに関するオリジナル研修を開発

電通総研の研修によって、具体的に業務にどうやって生成AIを活用したらよいかが理解できました。プロの活用術、考え方などを見ることができて、とても有難かったです

スルガ銀行株式会社 コミュニティバンク 法人営業推進室 副室長 稲毛隆裕氏

Know Narratorの全社展開と時期を同じくする2024年11月、同行の市場ファイナンス本部にて、電通総研のサポートによる生成AI研修が開催されました。当時、研修企画の責任者を務めていた稲毛隆裕氏は、経緯について次のように話します。

「市場ファイナンス本部では、以前から定期的に、全メンバーが集まって業務に関する知識を深めるための研修を実施していました。研修のテーマは毎回企画メンバーで話し合って決めており、たまたま2024年の9月頃に『次は生成AIをテーマにした研修をやりたい』という話になったんですよね。そこでシステム部に相談したところ、電通総研を紹介してもらいました」(稲毛氏)

研修は全2時間。前半1時間は電通総研の生成AI担当者による講義、後半1時間は市場ファイナンス本部の全職員約40名が参加してのグループワークが行われました。グループワークのテーマは「自動車メーカーの格付けレポートをその場でKnow Narratorに取り込んで、ある自動車会社に対する融資について判断する」というもの。短時間の研修ではありましたが、生成AIの概念や基礎を学び、その上で実際にKnow Narratorを使って高度な作業を行うことができ、参加者から非常に好評だったと言います。稲毛氏と共に研修の企画に携わりつつ受講もした堀江恭太氏、斎藤瑞也氏は、研修の感想やその後の変化について次のように話します。

電通総研の方から『最初から100%の結果を期待せずに使い続けてほしい』と言われたことが印象的でした。使い続けることで、試行錯誤しながら生成AIの精度を上げていく。その面白さを、今、実感しています

スルガ銀行株式会社 コンプライアンス・リスク管理本部 統合リスク管理室 マネージャー 堀江恭太氏

「以前から生成AIを使える環境ではあったのですが、いまいち具体的な使い方がわからずモヤモヤしていました。また、部署内で生成AIを使っているメンバーもごく一部に限られていたように思います。そんなときにこの研修を受けて、グッと生成AIが身近になりました。研修で、『グラフを作成するときに使えるプロンプト』などを具体的に教えていただけたことも役立っています」(堀江氏)

研修で実際に手を動かし『Know Narrator』を使ってみて、精度の高さに驚きました。これは業務で活用できるなという強い手応えを感じましたね

スルガ銀行 市場ファイナンス本部 ストラクチャードファイナンス部 営業推進室 戦略営業グループ 斎藤瑞也氏

「私は、法人融資を行う際に、生成AIを使って対象企業の財務分析やSWOT分析を行うようになりました。資料作りなども生成AIを使いながら行っています。こうしたこまごました作業の時間が、体感で、1/10ぐらいになった印象があります」(斎藤氏)

堀江氏、斎藤氏のコメントを受けて、「2時間という短い時間のなかで、参加者全員に『自分にも生成AIを使えそうだ』という実感を持ってもらえたところがなによりよかった」と稲毛氏。電通総研の研修サポートや講義について、改めて高く評価しました。

資料作成や調査などの時間が大幅に減少

ただ質問に回答するのではなく、こちらの立場やリテラシーまで考慮して情報の整理や提案をしてくれる。『Know Narrator』は今や業務に欠かせないパートナーです

スルガ銀行株式会社 システム部 開発推進室 アシスタントマネージャー 笠井美名氏

現在は、社内規程や業務に関する疑問の解決の他、資料作成、複数契約書の差分確認、データ分析など、多くの職員がさまざまな用途でKnow Narratorを活用しています。システム部で櫻井氏と共にKnow Narratorの活用推進やサポートなどを行う笠井美名氏は、「自分自身の業務に、既にKnow Narratorが欠かせない存在になっている」と話します。

「半年ほど前に営業店からシステム部に異動してきたこともあり、最初は業務やITのことが何もわからない状態でした。そんなとき助けになったのがKnow Narratorだったんです。事前に『営業店から移動してきたばかりで何も知識がないこと』などを設定しておき、その上でわからないことを質問すると、初心者の私にふさわしい説明をしてくれるんですよね。IT用語、エラーコード、生成AIを活用した画像の作り方など、本当にあらゆることを教えてもらいました。
また、Know Narrator Insightで職員の利用履歴を見て、どんな使い方がよくされているかも確認しています。今後は、使いこなしている方を見つけてインタビューをしたり、よく使われているプロンプトや用途を発信したり、活用の推進に使っていきたいですね」(笠井氏)

研修によって部署全体の意識が高まりました。現在は、『Know Narrator』を活用して部署内の業務効率化・高度化を推進するプロジェクトを行っています。今後も使い続けていきたいですね

スルガ銀行 市場ファイナンス本部 ストラクチャードファイナンス部 ポートフォリオ管理室チームリーダー 伊庭一輝氏

稲毛氏と共に研修の企画に携わり、現在、市場ファイナンス本部で、生成AIを活用した業務効率化の取り組みを推進している伊庭氏は「私も、もはや生成AIなしでは業務を円滑に進めないぐらいに感じている」と話します。

「市場ファイナンス本部で取り扱うのは、税務会計や法務の知識が必要な、非常に複雑な事案ばかり。不明な点をイチから自力で調べるとなると多大な時間がかかります。生成AIがあれば、ある程度当たりをつけて仮説を立てながら調査や情報の整理ができるんですよね。まずは私自身の業務効率化に、大いに役立っていると感じています。
その上で、今後は、有効なプロンプトを一覧化したり、定型的な作業についてマニュアル化するなどして、生成AIの活用術を部署内に広げていきたいと考えています」(伊庭氏)

会社としても生成AIの活用を強く推進しようといているタイミング。生成AIの知見が豊富な電通総研と共に、より深い活用を模索していけることになり心強く感じました

スルガ銀行株式会社 システム部 開発推進室 副部長 櫻井聡司氏

スルガ銀行全体としては、今後、融資審査業務やコールセンター業務への活用も検討していきたいと考えているそうです。「導入の提案から、RAGの構築、研修、定期的なバージョンアップ、日々のサポートまで……。スポット的な関わりではなく、長く、全面的に伴走してくれるのが有難いですね」と櫻井氏。これからも電通総研と二人三脚で、生成AIの活用を広げ、深めていく構えです。

社名:
スルガ銀行株式会社
本社:
〒410-8689 静岡県沼津市通横町23番地
設立:
1895年(明治28年)10月19日
資本金:
30,043百万円
従業員数:
1,172名(2025年3月31日現在。※出向者除く)
事業内容:
普通銀行業務(クレジットカード発行・信託業務含む)
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  • 記載情報は取材時(2025年4月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。

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