株式会社INPEX

生成AIサービス「Know Narrator Chat」の導入でカルチャートランスフォーメーションを実現

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株式会社INPEX 情報システムユニット ITサービスグループ マネージャー 森真之助氏

2022年11月、Open AI社による「ChatGPT」公開により注目を集め始めた生成AI。石油・天然ガスを中心に、長年、生活と産業の礎となるエネルギーの安定供給を担ってきた株式会社INPEXは、このツールをいち早く全社へと取り入れました。水素や再生可能エネルギーなどの事業の多角化も進む中、新たなテクノロジーを活用した次世代の働き方を追求するため、ChatGPTの導入を検討。そのソリューションとして選ばれたのが、電通総研が提供する「Know Narrator Chat(ノウナレーターチャット)」です。
Know Narrator Chatは、マイクロソフトが提供するAzure OpenAI Serviceを活用して、ChatGPT環境を企業内に構築するソリューションです。入力データを学習に利用されることがなく、情報漏洩リスクに対応したセキュアな環境を構築できます。
情報システムユニット・ビジネスソリューショングループに所属し、本プロジェクトのリード役を担った森真之助氏は、「当社はさまざまな新技術にアンテナを立て、トライアンドエラーを実践しながら、より良いものを取捨選択していくスタンスです。発展途上の生成AIも、ポジティブ・ネガティブの両面があり、これは実際に使った人だけが実感できるもの。それでも可能性に満ちた新たなテクノロジーをいち早く社員に”実感”してもらうため、早急な導入が求められていました。電通総研には自社のノウハウもあり、想定以上のスピード感で導入を進めていただけた。一般業務における生成AI利用をKnow Narrator Chatで始められてよかったと感じています」と本プロジェクトを評価しました。


業務における生成AI活用意識が高まる中、全社的な展開が急務に

株式会社INPEXは石油や天然ガスの探鉱・開発・生産という上流事業を中核とした会社として、グローバルに事業を展開してきました。現在は、化石燃料の中でも比較的クリーンといわれる天然ガスの探鉱・開発・生産に注力する一方で、再生可能エネルギーや水素などの新エネルギーへの投資、さらには事業で排出された二酸化炭素を地下に貯留する「Carbon dioxide Capture and Storage(CCS)」技術などの実証を進めています。

「石油や天然ガスの探鉱・開発・生産のプロセスでは、膨大なデータを収集、整理、解析する必要があり、数年前から、そうしたビッグデータへのAIの活用もトライしてきていました」。生成AIの全社的な導入が進められた下地となる環境について、森氏はそう語ります。業務へのAI活用意識が高まる中、ChatGPTの公開により2023年1月頃から生成AIの話題が社内で活発化。この流れを受けて、社内一般業務への早急な導入を発案したのは、森氏の上長となるジェネラルマネージャーだったといいます。

「指示を受けてすぐに検証を始めましたが、当初はAIの精度に課題があり、実用段階には達していないと感じました。しかし、3月頃になると翻訳や文章要約、文書のドラフティングに利用できる可能性が見え始め、4月から、当時生成AIの導入に積極的なパートナーを探していたマイクロソフト 社と、包括的な取り組みが始まりました」(森氏)

プロジェクトは社内のインフラ、セキュリティ担当者を含めた約8名による、グループ横断のタスクフォースで進められることに。もともとWordやExcelなど、業務系ツールの基礎的なリテラシー向上等を通じた社員の業務効率化に携わっていた森氏は、「社内における“AIを使う文化”の醸成」という観点から意義を感じていたといいます。

「生成AIが使える場面はまだ限定的かもしれないが、早い段階で導入し、社員自らが生成AIを体感するべき、というのが私の想いでした。そこで、”AIが空気のように、自然にある職場へ”というミッションの元に”AIR”というAIをPRするための社内ブランドを立ち上げました。生成AIの能力は今後進歩することはあれ、衰えることはありません。今、社員一人ひとりがトライ&エラーで生成AIを”使い倒す”訓練をしておくことが、将来必ず当社の力になります。また、セキュアな環境を準備することで、シャドーITのリスクを低減することも目的の一つでした」(森氏)


選定の決め手は「想定以上」のスピード感と、生成AIへの知見の深さ

電通総研からは、導入前の打ち合わせの時点で私たちの質問への迅速で的確な回答をいただけた。当時、生成AIに対しては探り探りの企業もあった中で、理解度の高さを感じました

株式会社INPEX 情報システムユニット ITサービスグループ マネージャー 森真之助氏

本格導入の段階で3社ほどの提案を受けて選ばれたのが、電通総研が提供する企業向けソリューションKnow Narrator Chatでした。

Know Narrator Chatは、マイクロソフトが提供するAzure OpenAI Serviceをベースにしており、クライアント専用のセキュアな環境でChatGPTを利用できます。
セキュリティに加えて重要視したのは、「構築のスピード感」と、変遷の早い生成AIにおいて電通総研が有する知見の深さだったといいます。実際に、Know Narrator Chat導入のための環境構築は約2週間という短期間で実現。森氏はそのスピード感を「想定以上だった」と評価します。

同社では、他社製の社内文書検索用AIチャットボットと翻訳サービスも同じタイミングで導入しています。森氏はその相乗効果に言及しながらも、最初に導入したKnow Narrator Chatが速やかに機能したことが「良い足がかりになった」とあらためて評価。「実際に使ってみると、情報システム部門と利用者とのコミュニケーションも増え、次々と問い合わせが届いています。『APIで他システムと連携して使わせてほしい』『ファイルごと入れられるツールもある』など、より便利に使うための要望なども多く、予想以上の反響でした」と笑顔を見せます。

現在、社内での利用率は「週に数回利用」が約40%、「毎日利用」が10%程度、と約半数の社員が活用中です。森氏は社内周知と活用幅の拡大に引き続き力を入れています。これまでは、独自に制作した利用動画を配信する方式で周知を進めていましたが、今後は10~15人ほどの少人数を対象にしたハンズオンのセミナーを実施して体感してもらう予定だといいます。「各自のPCで実際に生成AIツールを動かし、課題解決を図るようなセミナーを数ヶ月の内に実施したい。当社には、私のように新ツールの導入や社内周知をメイン業務とするポジションがあり、こうしたプロジェクトやセミナーに専念できるのは、新技術の導入や活用文化を醸成するうえでとても大きいと感じます」 。

生成AIという未完のテクノロジーに社員がいつでも触れられるようになったことは大きいと思います。AIRのミッションである”AIが空気のように、自然にある職場”の実現に向けて更に邁進していきたいです

株式会社INPEX 情報システムユニット ITサービスグループ マネージャー 森真之助氏

今後の生成AI活用においては、ソリューションごとの特性に合わせた“使い分け”が重要になると指摘する同氏。その上で、「ワンプラットフォーム」に対する期待感を明かします。「現在は社内の情報検索に他社の検索用ボットを利用していますが、Know Narrator Chatとの関連性を考えると、社内文書を参照し回答文を生成することを可能にする、エンタープライズRAG『Know Narrator Search』にも興味があります。理想としては、やはりワンプラットフォームでAIサービスが完結することを目指していきたいですね」

ITパートナーに対しては、新しいテクノロジーと潮流を掴み、サービスへ実装していくスピード感を求めていきたいと言及。「今後は同じプラットフォーム上で用途に合わせてモデルを選択できるようなソリューションの開発と、ファイルのアップロード可否が肝になると考えています。そうした生成AIを“利用する環境”の最新化と網羅性、世の中のニーズとの適応性を重要視しています。電通総研にも、引き続きその面においてスピード感ある提案をいただけると非常にうれしいです」

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社名:
株式会社INPEX
本社:
〒107-6332 東京都港区赤坂五丁目3番1号 赤坂Bizタワー
設立:
2006(平成18)年4月3日
資本金:
2,908億983万5,000円
従業員数:
単体:1,384人、連結:3,531人(2023年12月31日現在)
事業内容:
石油・天然ガス、その他の鉱物資源の調査、探鉱、開発、生産、販売及び同事業に付帯関連する事業、それらを行う企業に対する投融資等
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  • 記載情報は取材時(2024年1月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。

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