「Know Narrator」を基盤に生成AIの社内活用プラットフォームを構築
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プロジェクトを牽引したメンバー 写真左より、シスメックス株式会社 情報ソリューション部 システム開発グループ 係長 松本 純明氏、同グループ シニアプランナー 東 昌芳氏、同グループ 堀 孝彰氏
血液中の赤血球や白血球などを分析するヘマトロジーや血液凝固検査、尿検査の分野で世界トップシェアを誇り、世界190以上の国や地域で事業展開するグローバル医療機器メーカー、シスメックス株式会社。同社は2023年7月、生成AIの安全な活用と早期の全社展開を推進するため、電通総研の生成AI活用プラットフォーム「Know Narrator(ノウナレーター)」を導入。現在では、シスメックスグループの国内約5,000人の従業員を対象に独自の生成AI利用環境を展開しています。
このプラットフォームは、同社が契約しているMicrosoft Azure上に展開しており、生成AIによるチャット機能、画像やグラフにも対応したマルチモーダルRAG(Retrieval-Augmented Generation)機能、利用率分析機能を提供します。さらに、権限管理を含む強固なセキュリティを備え、企業における安全で高度な生成AI活用を支援します。
今回の導入プロジェクトを統括した東氏は、「業務効率化と企業競争力の強化を実現するため、安心・安全な生成AIサービスの早期導入を目指していました。その中で、Know Narratorは、十分な完成度と即応性を兼ね備え、私たちの期待に応えるソリューションでした」と話しています。
現在、シスメックスでは「生成AIツールの徹底活用」「自社データに基づく生成AIの活用」「AIを前提とした業務プロセスの構築と運用」の3本柱を中心に、生成AIの活用推進を進めています。
目次
禁止ではなく活用へ シスメックスが選んだ生成AI基盤「Know Narrator」
「禁止するのではなく、安全に使いたい」。そう語るのは今回の導入プロジェクトを統括した東氏です。現在、世界中で一日に億単位のユーザーが利用しているとされる生成AI。自然言語で瞬時に回答やコンテンツを生み出すこの技術は、一般公開時に知的労働のあり方に大きな衝撃をもたらしました。しかし、生成AIが話題になり始めた頃、企業の現場では「使ってみたいけれど、本当に大丈夫なのか?」と慎重な意見が多く、すぐに導入する企業は少数派でした。新しい技術に期待が集まる一方で、「情報漏洩や誤った回答のリスクがあるのでは?」と心配する声が多く、産業界全体が様子見の姿勢を取っていました。また、医療機器メーカーとして膨大な薬事文書や品質関連資料を扱う同社にとって、インターネット環境での生成AI活用は情報漏洩リスクを伴うものでした。
「禁止すれば生成AIの生産性革命に乗り遅れる。かといって、安易に許容するわけにもいかない」そうした考えのもと、安心・安全な自社専用のChatGPTの構築を検討するにいたったと、東氏は振り返ります。
現場ニーズに即応する生成AI基盤 シスメックスがKnow Narratorを選定した理由
Know Narratorはすぐに使える完成度と即応性を備えています
シスメックス株式会社
情報ソリューション部 システム開発グループ
シニアプランナー 東 昌芳氏
2023年、東氏はこの課題を解決するため部内の他のメンバーとともにソリューションの選定に取りかかります。複数の候補を比較検討しました。その結果、他社が「要件に合わせてこれから開発します」と提案する中、「Know Narrator」はすでに必要な機能を備え、製品として完成している点が際立っていました。「価格面でも他社と比較して十分に競争力があり、導入までのスピードも現場のニーズに合致していました。結果として、Know Narrator以外に現実的な選択肢はありませんでした」と東氏は選定理由を説明します。
「Know Narrator」はセキュリティを担保しながら専用クラウド(Microsoft Azure)環境でChatGPTの機能を展開する仕組みで、対話(Know Narrator Chat)、AIエージェント(Know Narrator Search)、分析(Know Narrator Insight)の機能はもとより、専門エンジニアによるRAG(Retrieval-Augmented Generation)のデータ加工やプロンプトのチューニング、活用促進のための相談会など、導入後の運用・定着を支援するサービスも充実しています。このように、単なる製品導入にとどまらず、現場でのAI活用を継続的に支援する体制が整っている点も、「Know Narrator」を選定した大きな理由です。
シスメックス、生成AI活用を加速 Know Narratorで安全・迅速な社内展開
電通総研のサポートチームは課題を事前に見抜き、未然に対処してくれます
シスメックス株式会社
情報ソリューション部 システム開発グループ
係長 松本 純明氏
2023年7月、東氏の率いるプロジェクトチームは安心・安全な社内版ChatGPTとして「Know Narrator Chat」を全社導入します。そこで得た手応えをもとに、同年9月には「Know Narrator Search」のPoC(概念実証)を開始。設計書や品質関連書類など社内の文書を対象としたRAGの開発を進めました。評価プロジェクトに参加した情報ソリューション部システム開発グループの係長 松本氏はその結果について「業務で十分に使えるという感触を得た」と振り返ります。さらに2024年3月、「Know Narrator Search」を全社導入することで、従業員自らがAIエージェントの開発に取り組むことができるようになり、現場の業務課題に即した独自のAIエージェントを創出する環境が整いました。この取り組みにより、各部門のニーズに合わせたAI活用が加速し、業務効率化や品質向上、イノベーションの創出につながっています。
こうしたAI導入・展開を伴走支援してきたのは電通総研のAIトランスフォーメーションセンター(以下、「AITC」)。AIの調査・研究や自社ソリューションの開発、AIを活用した業務改革を担う専門部隊で、そのサポート力について松本氏は「非常に頼りになる」と評価します。「課題を事前に見抜き、対処してくれるので、トラブルを未然に防ぐことができます。問題が起こってからその場しのぎの対応をするようでは “これは使えない”という印象が生まれかねません。電通総研のサポートチームとはコミュニケーションも良好で、導入から展開まで円滑に進みました」と、そのサポート力を高く評価しています。
また、同じくシステム導入や運用ルール策定など現場対応を担った堀氏もまたそのサポートについて「プラットフォームの安定稼働と利用定着に大きく貢献した」と話しています。「生成AIのプロンプトエンジニアリングや回答精度の改善について具体的で実務に直結するアドバイスをいただきました」。
プラットフォームの安定稼働と利用定着に電通総研の支援が大きく貢献しています
シスメックス株式会社
情報ソリューション部 システム開発グループ
堀 孝彰
全社で広がる生成AI活用
堀氏はまた今回のプロジェクトで定量的な効果も出始めていると報告します。「Know Narrator ChatやSearchを中心とした社内の生成AIサービスのデイリーアクティブユーザーは30%の定着率を達成しており、社内での利用が着実に広がっています」。また、AIエージェントの活用状況については、2025年12月時点で稼働中の事例は24件に達しています。今年度中には新たに41件の追加予定しており、AI活用のさらなる拡大が見込まれています。
「そのためには専門性の高いノウハウが不可欠です。その意味で、今後も電通総研の支援部隊に期待しています」と東氏は締めくくりました。
従業員が作成したAIエージェント
Technical Reviewエージェント:
点在する設計ノウハウをデータベース化し、AIチャットボットが設計者の頼れる相談相手に!品質強化と知識継承を実現
日報分析エージェント:
営業日報と顧客の声(VOC)を学習したAIチャットボットが、現場のリアルな課題やニーズをもとに、企画・提案のヒントを提供
固定資産の科目判定エージェント:
Power Platformと組み合わせて、固定資産の科目判定業務を自動化。問い合わせ対応の工数削減と業務最適化を実現
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※記載の会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。
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※記載情報は取材時(2025年12月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。