東京エレクトロン株式会社 OutSystemsでローコード開発を定着させ基幹システムの刷新を加速

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写真左より 東京エレクトロン株式会社 柿良幸氏、東原広子氏、福島直哉氏、樋健士氏

半導体製造装置の開発製造販売で国内シェア1位、世界3位の実績を誇る東京エレクトロン株式会社。半導体需要の高まりを追い風に最高益を更新中の同社はいま、グローバル市場での競争力をさらに強化するため、全社を横断する業務プロセス改革とシステム構築に取り組んでいます。事業を支える基幹システムとしてSAP S/4HANAが導入され、多岐にわたる周辺システムとのデータ連携やアドオン開発などにローコード開発の世界的プラットフォームOutSystems(アウトシステムズ)が採用されました。
「OutSystemsは、プログラミングの専門知識がなくてもトレーニングを受ければ誰でも使いこなせる」と話すのは導入プロジェクトを指揮した情報システム部部長代理の柿良幸氏。「現場の声に応える機能を短期間で提供できれば、社内の業務改革の流れにも勢いが生まれます」と語ります。OutSystemsはGUIでロジックや画面を構成できるため、トレーニングコストが低く、スピード感をもって開発できることが特長です。さらには、SAP S/4HANAとの連携用コネクタを多数装備、画面やバッチ、APIを高速開発する統一基盤も提供します。この開発プラットフォームの導入とユーザー教育に大きな力を発揮したのはISIDでした。

垣間見た業界1位の環境

今後さらにOutSystemsを活用してシステムのモバイル化にも取り組んでいきたい

情報システム部 部長代理
柿良幸氏

1963年、半導体製造装置の技術専門商社として創業し、その後メーカーに転じた東京エレクトロン。顧客の要望に応えながら自社開発の技術を磨き、現在は国内外18の国と地域で事業を展開。2021年度の売上高は2兆38億円、市場シェア国内1位、世界3位の実績を誇ります。

同社はいま、基幹システムを含む全社的なシステムの刷新に乗り出しています。そのきっかけは2015年、立ち消えとなった経営統合の際に垣間見た、業界1位の企業のシステム環境。そこには事業の現状を隅々まで一元的に把握するシステムとデータ基盤があったと情報システム部部長代理の柿良幸氏は話します。

「商社として出発した当社の場合、取り扱う装置ごとに事業部が存在し、業務やシステムは各々個別最適化されていました。それに比べ業界1位の企業ではすべての情報が統合され、経営陣は装置ごとに売上や利益を確認しながらデータドリブンで迅速な経営判断を行っていました。彼らとグローバル市場で肩を並べて戦っていくには情報武装が急務。分断されたシステムやデータ環境を全体最適の観点で見直さなければ、という機運が社内で高まりました」。

周辺システムの課題

ローコード開発が社内に根付いたのはISIDのおかげです

情報システム部 部長代理
樋健士氏

しかし、それは楽な道のりではありません。東京エレクトロンの社内には基幹システムを中心に営業、保守、調達、製造、生産計画などの周辺システムが多数立ち上がっており、そこに承認、照合、計上、検索、出力といった数々の業務が絡んでいました。それらは現場の利便性を主眼に徹底的に作り込まれているため、基幹システムの標準プロセスに合わないことが少なくありません。

「一般的に基幹システムの導入に際しては、業務を標準プロセスに合わせていくのが常識。そうしなければ面倒なカスタマイズに膨大な時間とコストを取られてしまう。しかし、一方で標準プロセスが現場のニーズに合わない場合が多いのも事実です」と話す柿氏。

ローコード開発プラットフォーム

OutSystemsは自由度が高く、とにかく速く開発できます

情報システム部 グループリーダー
東原広子氏

この矛盾した課題に対し情報システム部がたどり着いた解決策は、「基幹システム側に手を入れず、ローコード開発で周辺システムを構築する」方法でした。

ローコード開発はC言語やJavaなどを用いた従来のプログラミングとは異なり、スキルのないユーザーでもトレーニングを受ければGUIでシステム開発ができる手法。Web上で画面デザインや業務ロジック、データ構造といった要素を組み立てるだけで、アプリケーションを自動生成できます。しかもコーディング作業が少ないため手戻りが発生しにくく、開発期間の大幅短縮が見込めます。

2019年8月、情報システム部はUIに優れており、導入が決定していたSAP S/4HANAとのデータ連携が容易に実現できるOutSystemsを候補に選び、導入実績のあるISIDとともに検証を開始しました。

ユーザー教育と標準化で広く浸透

わずか1週間でC#のプログラムと同様のUIと機能を実現できました

情報システム部
福島直哉氏

プロジェクトチームは、SAP S/4HANAのデータを活用した独自フォーマットのレポートや、個別ワークフローの機能を2ヶ月あまりで開発。これにより有効性が実証されるとOutSystemsの活用が活発化し、翌2020年1月には開発標準化をめざしたユーザー教育がISIDによって始まりました。以降、OutSystemsは東京エレクトロン本社に広く浸透していきます。

柿氏と同じく情報システム部で部長代理を務める樋健士氏は「ローコード開発に対する認識が社内に広がりOutSystemsがツールとして根付いたのはISIDのおかげ」と話します。

ユーザー教育でOutSystemsにはじめて触れた情報システム部のメンバーもその生産性の高さに驚いたと話しています。Webベースの伝票申請の仕組みを開発した東原広子氏はその操作性について「自由度が高く、とにかく速く開発できます」と話します。また、福島直哉氏はC#で作成したプログラムをOutSystemsで再現。その容易さを実感したと言います。「数か月も掛けて開発していたものが、わずか1週間で同様のUIと機能を実現できました」。

OutSystemsの活用で業務効率化も推進

OutSystemsで構築した発注、受注、配送、売上、仕入伝票のワークフロー機能は、申請時にSAP S/4HANA内の関連データと整合性を自動でチェックする仕組みを搭載。「従前は業務プロセスの後半で、データ不整合が判明し、最初からやり直しということも少なくなかったが、この機能のおかげで現場の業務効率化も実現できました」と樋氏は話します。

また、OutSystemsが持つ豊富なコネクタを活用し、全社権限管理システムとSAP S/4HANAの連携機能を開発。SAP S/4HANAのユーザー・権限管理も従来通りの仕組みで一元的に行うことで、現場の負担を減らすことに成功しました。
「新しいシステムに変わると、どんなに丁寧に教育を実施しても、現場には少なからず負担を強いることになります。そこをなるべく減らすために、OutSystemsのような開発プラットフォームで、柔軟に仕組みを補完することができました」(福島氏)

「DX(デジタル・トランスフォーメーション)というのは仰々しく取り扱って祭りあげるものではなく、身近にあって仕事を助けるもの」と柿氏は話します。「その意味で今後さらにOutSystemsを活用してシステムのモバイル化にも取り組んでいきます」。

東京エレクトロンは2021年5月に本社へのOutSystems導入を完了。2022年10月には米国現地法人への導入を計画し、その後数年で世界各地の事業拠点や工場に順次展開していく方針です。

図表 東京エレクトロンでのOutSystemsによるローコード開発の例

システム 概要
OutSystems共通開発基盤

SAP S/4HANAとのデータ連携機能、ロール管理機能、タイムゾーン連携機能など、OutSystemsでアプリケーション開発する際に必要な機能群

各種レポート

通関業務などSAP S/4HANAそのものは使わないがそのデータを利用し必要な情報の提示を行うレポートなど

各種伝票ワークフロー

SAP S/4HANAで起票された発注、受注、配送、売上、仕入伝票の承認を得るためのワークフロー機能

間接購買ワークフロー

サービスや役務、試作品といった定常業務で発生するが、品目マスター化されづらい間接購買プロセス全体をカバーする機能

会計伝票ワークフロー

グループ間や部門間での費用振替や請求書処理など会計処理を一括してカバーするワークフロー

システムインシデント管理

業務ユーザーからの問い合わせやリクエストなどを一括して管理する機能。J-SOXに対応した証跡管理にも対応

SAP S/4HANAユーザー管理

社内標準の権限管理システムの情報を元に複雑なSAP S/4HANAのロール設定とユーザー登録を自動化する機能

  • SAP、SAPロゴ、記載されているすべてのSAP製品およびサービス名はドイツにあるSAP SEやその他世界各国における登録商標または商標です。またその他記載された会社名およびロゴ、製品名などは該当する各社の登録商標または商標です。

2022年8月更新

東京エレクトロン株式会社 会社概要新しいウィンドウで開きます

社名
東京エレクトロン株式会社
本社
〒107-6325 東京都港区赤坂5-3-1 赤坂Bizタワー
設立
1963年(昭和38年)11月11日
売上
2兆38億円(2021年度)
資本金
549億6,119万円
従業員数
15,883人(連結/2022年4月1日時点)
事業内容
半導体製造装置事業、フラットパネルディスプレイ製造装置事業
  • 記載情報は取材時(2022年5月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。

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