Microsoft Dynamics 365 Salesで顧客接点情報を統合。
部門と国境の壁を越えた「ひとつなぎの組織」へ

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写真左より株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズ 海外営業支援部 林 太一 氏、株式会社SCREENホールディングス 経営戦略本部 IT室 IT推進部 IT推進一課 課長 日髙 貴博 氏、株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズ 事業統轄部 経営管理部 計画課 課長 渡部 泰樹 氏、同社 サプライチェーンプランニング統轄部 部長 村元 僚 氏

半導体製造装置メーカーとして世界市場で事業を展開する株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズ。半導体ウエハー洗浄装置分野で、世界シェアNo.1を誇る同社は、近年の事業成長に伴う業務量の増大と、部門間・海外拠点間の情報連携における課題を解決するため、全社的な業務改革プロジェクトに着手。その中核として、電通総研の支援のもとMicrosoft Dynamics 365 Salesを導入し、顧客情報管理基盤を構築しました。これにより、特定の担当者に依存しない情報共有の仕組みと業務プロセスの標準化を実現。全社視点で、年間約5,000時間以上の業務余力・システム統合効果を生み出し、さらなる事業成長に向けたデータ活用の礎を築き上げました。

情報の分断と属人化が、グローバルな連携の足かせに

SCREENセミコンダクターソリューションズは、半導体市場の活況を追い風に、目覚ましい成長を遂げています。しかしその一方で、急成長を支えるため、業務プロセスの抜本的な見直しが必要となっていました。「近年、売上が急速に伸びていることで、業務負荷が増大しています。また、海外売上も非常に高いため、海外との情報連携を強化する必要もありました」と、プロジェクト全体を統括したサプライチェーンプランニング統轄部 部長の村元僚氏は語ります。
特に、個別受注生産というビジネスモデル上、顧客との仕様の打ち合わせから開発、受注設計、製造、販売、保守に至るまで、国内外の営業部門と工場の密な連携が不可欠となりますが、以前は情報管理の仕組みに課題を抱えていたといいます。
「従来、海外の現地法人はセキュリティの観点から国内のシステムにアクセスできず、情報共有は日本メンバーが必要な資料を抽出した上でメール送信していました。これにより、コミュニケーションに時間と手間がかかっていました」と、海外営業支援部 林太一氏は振り返ります。
国内においても事業拡大に伴い各部門で個別最適化されたシステムが存在しており、全社的な業務効率の向上が課題となっていました。各部門がそれぞれの業務に特化した運用を行っていたため、部門を跨ぐ情報連携が複雑化。データ整合性の確保や二重入力といった作業負荷が大きくなっていました。
同社におけるDX推進や業務プロセス改善プロジェクトなどを担う事業統轄部 経営管理部 計画課 課長の渡部 泰樹氏は、「情報の入力形式や粒度が標準化されていなかったため、担当者ごとの入力内容にばらつきが生じていました。後工程である工場が必要とする情報が十分に連携されないケースもあり、個人の裁量に依存しない情報連携の仕組み作りが課題となっていました」と説明します。
事業の拡大に対応し、グローバルで一貫した顧客対応を実現するためには、全部門・全拠点で情報を共有し、バリューチェーン全体を効率化する抜本的な改革が急務となっていたのです。

コンサルティングと実装の両輪が、最適なソリューションを最短で導き出す

この課題を解決すべく同社は、設計・製造BOM活用、調達方式効率化、データ基盤構築とデータ意思決定まで、バリューチェーン全体を対象とした業務効率化を目指す全社的な改革プロジェクトを発足。その第一歩として、顧客情報管理基盤の構築に着手しました。
ソリューションの中核として選ばれたのは、Microsoft Dynamics 365 Salesでした。同社の情報システム関連業務を担うSCREENホールディングス 経営戦略本部 IT室の日髙 貴博氏は選定理由について、「社内の別領域ですでにMicrosoft Dynamics 365を利用していた実績があり、社内の情報を1つのシステムに集約させるという観点から選定しました」と話します。
さらに同社は、Microsoft Dynamics 365 Salesを中心に、Microsoft Power PlatformやMicrosoft Teamsといった周辺ソリューションも活用した統合基盤を構築することを決めました。
「会社として適切に管理すべきデータと、その周辺に存在するコミュニケーションを結び付けることで、情報管理や履歴の追跡を容易にできると考えていました。そのため、積極的に活用していくべきだと判断しました」(日髙氏)
そして、導入パートナーとして選ばれたのが電通総研でした。村元氏は、その決め手を次のように語ります。
「まず電通総研のコンサルティングチームに、営業から技術、調達、製造、保守に至るバリューチェーン全体を分析していただきました。そのうえで、課題解決のためのシステム導入を検討するにあたり、コンサルティングと実装(SI)の両部隊が緊密に連携し、『最短で最適な最高のソリューションを提供できる』とコミットいただけたことが大きかったです。この両輪で推進していただけることが、プロジェクト成功の鍵だと考えました」(村元氏)

会社として適切に管理すべきデータと、その周辺に存在するコミュニケーションを結び付けることで、情報管理や履歴の追跡を容易にできる。積極的に活用していくべきだと判断しました

株式会社SCREENホールディングス 経営戦略本部 IT室 IT推進部 IT推進一課 課長 日髙 貴博 氏

立場を越えた対話と仲間づくりで、数々の壁を乗り越える

プロジェクトは、業務要件を定義するチームと、システムを構築するITチームが両輪となって推進されました。しかし、8つもの既存システムを1つに統合し、ほぼ全部門が関わる大規模な改革への道のりは、決して平坦なものではありませんでした。
「関係者が非常に多い分、それぞれの立場からの要望をひとつの仕組みにどう落とし込むか、その合意形成に最も苦労しました」(日髙氏)
「業務効率化のための機能を追加するとなると、関係部門のワークフロー変更といった大きな影響が発生する可能性もある。関係部門の理解と賛同を得るため、実現したいことの目的や背景の説明には多くの時間を割きました」(林氏)
さらに、今回のプロジェクトは全社最適の観点から経営管理部門が主導したため、実際にシステムを使う営業部門との間には、どうしても『視点の違いによる壁』が存在しました。渡部氏は、その壁を乗り越えるためのコミュニケーションをこう語ります。
「一方的に『決まったからやってください』と押し付けることは避けました。私も過去に営業経験があり、現場の苦労が想像できるからこそ、あくまで業務のプロの方々に『ありたい姿はこうですよね?』と常に問いの形で対話する姿勢を徹底しました。『べき論』ではなく、どうすれば良くなるかを一緒に考える姿勢で現場の皆さんと会話できたことは大きかったと思います」(渡部氏)
経営層の推進支援と合意形成も壁のひとつでした。複数のシステムで問題なく稼働しているように見えるなかで、新しいツールに置き換えることの投資対効果を明確に示し、予算承認を得る必要がありました。
「事業規模拡大に向けて社内資料のメールリレーでは情報整合が取れず製品品質低下を招いている状況であり、一過性のシステム導入時の入力工数増加はあるが一元化した全体最適が必要である、という信念を貫きました。ありたい姿を共有し、役員へもこまめに進捗を報告することで、『なんだか良くなりそうだ』という期待感を醸成していきました」(村元氏)
こうした地道で粘り強いコミュニケーションを踏まえて、村元氏は「DXはキラキラしたものではなく、現場に根ざした泥臭いもの。部分最適ではなく、全体像を描いたうえで共に進める仲間づくりが何より重要」だと語ります。電通総研のメンバーも交え対話を重ねたことも、部門を越えたひとつなぎの組織としての一体感を育みプロジェクト推進の力となりました。
電通総研のコンサルとSIの一体体制に対する評価の声も多く上がりました。
「コンサルチームもSIチームも、契約をこなすというスタンスではなく、プロジェクトを一緒に成功させようというモチベーションで取り組んでいただいたように感じています。コンサルと実装が違う会社同士であれば、要件の伝言ゲームが発生しがちですが、定例会には両チームが参加し、生の声を直接やり取りできました。これにより検討スピードが上がり、要件の精度も高まったように思います」(村元氏、日髙氏)

年間約5,000時間以上の業務余力・システム統合効果を創出。今後はBOM(部品表)との連携や見積もりの迅速化を進め、バリューチェーン全体の最適化を目指します

株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズ 事業統轄部 経営管理部 計画課 課長 渡部 泰樹 氏

全社視点で、年間約5,000時間の業務余力の創出と、未来へのデータ活用基盤の実現

2023年4月のPoCを経て本格導入された新しい顧客接点情報管理基盤は、着実に成果を上げています。
「最も大きな変化は、海外営業拠点も直接システムにアクセスし、工場とやり取りできるようになったことです。コミュニケーションのスピードが向上し、案件の進捗も格段に追いやすくなりました。従来は日本側が休みだと止まってしまっていた業務も、今では海外の担当者が直接進められるようになり、ビジネスの停滞を防げています」(林氏)

定量的な効果について、渡部氏は次のように分析します。
「現状の見積もりで、全社視点で年間約5,000時間の業務余力・システム統合効果の創出につながっていると試算しています。これは主に、二重入力の回避や、データの探索・加工、確認調整にかかる時間の大幅な短縮によるものです。これはまだ導入初期の成果に過ぎません。今後はこの基盤を活用して見積もり提出の迅速化や、後工程であるBOM(部品表)とのシームレスな連携などを進めることで、その効果をさらに拡大していく予定です」(渡部氏)
導入当初は新しいシステムへの抵抗感があった現場も、今では「もっとこうしたい」という改善要望が積極的に上がるまでになり、定着は着実に進んでいるようです。

海外営業拠点も直接システムにアクセスし、工場とやり取りできるようになったことです。コミュニケーションのスピードが向上し、案件の進捗も格段に追いやすくなりました。

株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズ 海外営業支援部 林 太一 氏

データをつなぎ、マーケティングやものづくりを高度化する

顧客接点情報の基盤が整ったことで、同社は次なるステージを見据えています。
「顧客に関する情報が一元化されたことで、今後はより高度なマーケティングに活用していきたいと考えています。たとえば、失注した案件の分析や、より適切な価格設定の検討などです。さらに、この基盤をBOMシステムなどと連携させ、海外を含めたグループ全体でのシステム統合へと発展させていきたいです」(村元氏) 渡部氏も、「各領域のデータがつながることで、ビジネス全体を俯瞰した意思決定が可能になります。これにより、3年、5年、10年先といった長期的な視点での『あるべき姿』を描きやすくなりました。また、生成AIをはじめとする最新技術を即座に取り込むための「データ活用の土台」が整ったことにも、大きな意義を感じています」と、将来の可能性に期待を寄せます。
最後に、村元氏は今回のプロジェクトを、同社のパーパスである「人と技術をつなぎ、未来をひらく」という言葉に重ね合わせました。
「今回の改革は、人と人とのコミュニケーション(=人)を、CRMというデジタルツール(=技術)でつなぐ活動でした。まさに当社のパーパスを体現する取り組みになったと感じています。この基盤を土台に、これからも未来をひらく挑戦を続けていきます」(村元氏)

今回の改革は、人と人とのコミュニケーション(=人)を、CRMというデジタルツール(=技術)でつなぐ活動。これからも未来をひらく挑戦を続けていきます

株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズ サプライチェーンプランニング統轄部 部長 村元 僚 氏

社名:
株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズ
本社所在地:
京都市上京区堀川通寺之内上る四丁目天神北町1番地の1
設立:
2006年7月3日
主な事業:
半導体製造装置事業
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