電通総研コンパス vol.13 これからの防災を考えるための意識調査
~自然災害に備えて今改めて考えたい、身近な人との繋がり

自然災害の報道を目にする機会が増えたと感じていませんか。電通総研では2024年4月に全国1万人を対象に「これからの防災を考えるための意識調査」をおこないました。本記事では、調査で明らかになった身近な人との繋がりにフォーカスします。

◎電通コンパス vol.13「これからの防災を考えるための意識調査」レポート新しいウィンドウでPDFファイルを開きます

〇これからの防災を考えるための意識調査~防災・減災の自分ごと化に向けて~

1.自然災害に対する意識

自然災害に対する8項目の意識について、ABどちらの考えに近いか尋ねました。回答の割合が7割を超えたのは「過去に起きた自然災害から学べることがある」92.8%、「気候変動によって自然災害が激甚化していると思う」87.3%、「自然災害について考えるべきだと思う」75.5%、「自然災害を身近に感じている」74.0%、「自然災害が起きたら大変なことになると思う」71.8%、「自然災害に対して人間は無力である」70.2%。多くの人が自然災害に対して漠然とした不安な気持ちと、理性的に自然災害を捉えようとしている意識との両方を抱えていることがわかります(図1)。


図1 自然災害に対する考え方


男女で意識の差が見られる項目もありました。「自然災害が起きても何とかなると思う」か「自然災害が起きたら大変なことになると思う」かについて尋ねた項目において、「大変なことになると思う」と答えたのは男性では65.2%、女性では78.4%と、13.2ポイントの差が見られました(図2)。
また、「自然災害について考えても仕方ないと思う」か「自然災害について考えるべきだと思う」かについて尋ねた項目では、「考えるべきだと思う」は男性の69.8%に対して女性は81.3%と11.5ポイントの差があります(図3)。
このように、男性よりも女性のほうが自然災害が起きた時を想像し、考えるべきだと危機感をもつ人が多いようです。

     
図2 自然災害に対する考え方(自然災害が起きても何とかなると思う―自然災害が起きたら大変なことになると思う)


     
図3.自然災害に対する考え方(自然災害について考えても仕方ないと思う―自然災害について考えるべきだと思う)

2.自助・共助・公助への期待

災害発生後の時間の経過とともに誰がどのような行動をすべきか、「自助」「共助」「公助」の果たす役割がそれぞれどの程度の割合であってほしいかを合計100%になるように尋ねたところ、発生から数時間後までは「自助」が半数を超えていますが、時間の経過とともに「公助(国・自治体など)」の割合が増えていきます。また、「共助(地域・コミュニティなど)」は時間の経過にかかわらず2割強でした(図4)。

     
図4 災害発生後に自助・共助・公助が果たす役割への期待

 

3.救助や支援を受けるために提供してもよい個人情報



 

災害が起きた時に、円滑に救助や支援を受けることを目的に、国や自治体に提供してもよい個人情報について尋ねたところ、平常時と被災時でも平均5ポイント程度しか差がなく、その順序についても大きな違いは見られませんでした。提供してもよいのは「氏名」「年齢」「住所」「携帯電話番号」「家族構成」が上位5項目でした。続いて6位が「家族の勤め先・学校」となっています(図5)。
災害が起きた時に実際にできることや自身で確認できることは限られており、家族に関しては情報を提供して支援を受けたいと思っていることがわかります。「家族構成」については、男女差が見られ、平常時でも被災時でも、男性より女性のほうで10ポイント以上高く挙げられていることも特徴的でした。
家族と別々に過ごす日中の生活時間に大きな自然災害が起きることもあり得ます。携帯電話が手元にない、または携帯電話が繋がらなくなる可能性もあります。そのため、携帯電話以外の家族の勤め先や学校の電話番号を書き留めておくと安否確認が円滑になるかもしれません。昨今では、従業員や職員本人だけではなく家族の緊急連絡先を安全配慮の視点から情報登録している職場も少なくありません。
平常時であろうとも被災時であろうとも、個人情報の取り扱いは十分に注意しなければなりませんが、適切な情報の提供により人命救助や物資の支援等、大きく状況が変わる可能性もあります。

     
図5 円滑に救助や支援を受けるために、国や自治体に提供してもよい個人情報(平常時と被災時)

 

4.家族とどのように連絡を取るか、集合できるか



 

家族との連絡に関してはほかの設問でも尋ねています。防災・被災地支援のツールやしくみについて、広く活用されることを期待したいものを尋ねた設問のうち、「携帯電話が通じない中でも、家族がどこにいるかわかるしくみ」が58.7%で4位でした(図6)。被災時に即座に家族の所在や安否を確認したいと思っていることがわかります。
また、防災や減災に関して実際におこなっていることとして家族の連絡や集合にまつわる項目について尋ねたところ、「家族で避難場所、集合方法、連絡方法について決める」は2割に満たず(15.8%)、「家族の連絡手段を試す、確認する」は13.1%でした(図7)。2023年の調査ではスマートフォンの世帯保有率は90.6%と言われていますが(総務省 通信利用動向調査)、いざ携帯電話が通じない時に慌てないよう、緊急時の集合場所や方法はきちんと確認しておくことが重要です。
 

     
図6 防災・被災地支援のツールやしくみ(広く活用されることを期待したいもの) 上位10項目


     
図7 防災・減災のための備え(実際におこなっていること)より家族に関する項目

5.考察


 

自然災害についての報道を目にし、漠然とした不安を抱える人が多くいるものの、何かあった時は自治体や国が何とかしてくれる(公助)と、どこかで思っていないでしょうか。いつ起きるかわからない自然災害に対する備えは、なかなか自分ごと化しづらいと思います。しかし、被災時には地域のコミュニティや周囲の住民同士の声掛け、助け合い(共助)が命を守ることもあります。自分自身・家族・近隣の住民や地域の円滑な連携が、被害をできるだけ小さくする大きな力となります。
ここで気をつけるべきこととしては、平常時にできないことが被災時にできるはずはなく、例えば気候変動によって自然災害は激甚化していると感じていても、それを意識して日頃からのシミュレーションができていないと適切な判断や行動に繋がらず、ただ助けを待ってしまうということが推測されます。調査結果からは、男性よりも女性のほうが自然災害や防災を意識している人が多いこともうかがえたため、昨今注目されている女性視点の防災対策を進めることはダイバーシティの観点からだけではなく、防災対策の推進にも繋がるかもしれません。
自然と共生する日本列島に住むからこそ、まずは家族が集まる時、遠出や旅行をする時等に、災害時のことを考える、避難場所を確認することは防災意識を高める初めの一歩です。災害時に備えて、日頃から自分自身・家族・身近にいる人が繋がりをもち、力を合わせてできることを考え、備えておくことが大切です。

■調査概要

調査時期
2024年4月8日~4月11日
調査方法
インターネット調査
対象地域
全国
対象者
18~69歳の男女 ※学生を含む
サンプル数
10,000人(都道府県×性年代の人口構成比に合わせて回収)

※グラフ内の各割合は全体に占める回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しています。また、各割合を合算した回答者割合も、全体に占める合算部分の回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しているため、各割合の単純合算数値と必ずしも一致しない場合があります。

※本調査(10,000サンプル)の標本サイズの誤差幅は、信頼区間95%とし、誤差値が最大となる50%の回答スコアで計算すると±1.0%となります。


Text by Nozomi Ogasawara


お問い合わせ先

本調査に関するお問い合わせ先
qsociety@dentsusoken.com
担当:山﨑、中川、小笠原、合原

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