融資分野の業務改革プロジェクトに伴走。深い業務理解とシステムの知見を活かし、現場の実情を捉えた改革への道筋をつくる
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「ON YOUR SIDE~一緒がうれしい~」をキャッチコピーに、地域社会の繁栄を共通理念として事業を展開する京都中央信用金庫。1940年の設立以降、地域に根差した協同組織の金融機関として、預金・融資・為替などの金融サービスに加え、資産運用や事業承継、M&A支援などのコンサルティングなど多面的な事業を展開。 さらに、地元の伝統素材や工芸品を活用した店舗・オフィスの内装プロデュース、販路拡大やブランド戦略の支援、ITソリューションの提供などを手掛ける8つのグループ会社との連携により、金融領域の枠を超えた幅広いサービスで地域企業の競争力強化に貢献しています。
そんな同金庫が、2024年10月に開始したのが、融資分野の業務改革プロジェクトです。融資支援システム更改を前に、まずは融資業務の「あるべき姿」を見出してから、理想的なシステムを作っていきたいという思いのもと始まったこのプロジェクトに、電通総研はコンサルタントとして伴走しました。
まず課題の洗い出しを行ったあと、3つのフェーズに分けて取り組まれたワークショップを経て、課題整理と業務の「量」にフォーカスを当てた施策提案、ロードマップの設定が完了。2025年6月からは、電通総研の地域金融機関向けソリューション「BANK・R」に、施策内容を反映していく更改プロジェクトが進行中です。
システム活用の観点から本プロジェクトを主導した、デジタル戦略部の高橋良輔氏は、「プロジェクトを通して、当金庫の融資業務の『あるべき姿』と、実現のためのコンセプトが明確化し、改革実現にあたっての “軸”が持てました。今回の上流工程から、最終的にシステム更改まで伴走してくれる電通総研には、今後もこの『あるべき姿』が実現できているかを一緒に確認しながら、力を貸してもらいたい」と話し、コンサルティングとシステムの連携によって生まれる、電通総研ならではの働きに期待を寄せました。
目次
「融資業務のあり方を変えたい」
業務の見直しとスリム化の必要性を痛感し、多彩な知見を持つ電通総研へ相談
業務改革プロジェクト発足のきっかけは、15年以上にわたり融資業務の支援システムとして利用されてきた基幹システム更改の必要性が生じたことでした。高橋氏はこのシステム更改にあたり、「融資に関わる営業活動のあり方自体を変えたい」と考えたといいます。
「これまで融資業務は、長年の経緯の中で、業務フローや作業全体にいくつもの課題が生じていました。例えば、契約書の作成や不動産の担保評価といった作業の部分最適化を図ってきた結果、9つのサブシステムが乱立。同じ情報を複数のシステムに入力しなければいけない状況が生じていました。また、稟議書に添付する資料のうち約70種類を表計算ソフトや文書作成ソフトで内製しており、活用状況も把握しきれない状態でした。こうした中で、営業よりも事務作業に多くの時間と手間が取られていたのです」(高橋氏)
「システムをただアップデートするだけではこの状況は変わらない」。同氏は業務全体のスリム化と業務改革の必要性を痛感する一方で、金庫内のメンバーだけで改革を進めるのは困難だと考え、現行システムのサポートを担う電通総研へ相談することに。「当金庫内ですと、融資支援システム全体について網羅的に理解している人員は多くありません。また業務改革を実現していくにあたっては、その道筋の立て方や検討の仕方に対する知見も必要になると考え、両方の知見を持った電通総研に相談をしました」
電通総研からは、まず業務全体を振り返り、改革の進め方を決めるワークショップを実施のうえ、方向性に納得すれば詳細な改革を進める形の提案があり合意。システムの更改を担うパートナーは後にあらためて選定される前提の下、同金庫の融資業務を変える、業務改革プロジェクトが始動しました。
“現場の実情”を反映したアンケートに、営業店担当者からリアルな声が届く
業務改革プロジェクトは、業務フローの明示化と課題の洗い出しからスタート。その後、「フェーズ1:事業全体の現状分析(課題整理)」「フェーズ2:ToBe(あるべき姿)検討」「フェーズ3:業務改革ロードマップ策定」と段階を踏んだコンサルティングへとつなげる形で進められました。
課題整理を経て、同金庫の融資分野における業務課題を「量」と「質」の2種類に分割。まずはシステム面での対策が解決に大きく寄与する、「量(営業にかけられる時間の少なさ)」の課題解消がプロジェクトの柱に据えられました。
高橋氏は「業務フローを最初から最後まで通して見直す取り組みは、これまでなかなか実施できずにいましたが、現行のフローをしっかり可視化できたのは非常に良かった。現状分析から課題を洗い出し、その原因を見つけだしていく手法は新鮮でしたし、勉強になりました」と評価します。
業務改革ワークショップの第1フェーズからは、同金庫内の融資統括部、営業統括部、システム部といった他部署のメンバーを含む約10名のプロジェクトチームを設立。業務フローをさらに10段階に分割し、課題となっている点をより明確化して、現場の認識と相違がないかを確認するため営業店担当者へのアンケートが行われました。
アンケートは電通総研の担当者がベースを起案後、約1カ月間の綿密な打ち合わせを通してブラッシュアップし作成。2011年の入職以降、営業店の現場で融資分野等を経験し、2025年2月から本プロジェクトの主担当としてデジタル戦略部に配属された高田祐希氏は、「第1フェーズの成果は、このアンケートがすべてではないかと考えています」と振り返ります。
「最終的には522人から回答がありました。我々が仮説として立てた各課題について、認識にずれがないかなどを聞いたのですが、その課題の中に『喫緊で解決したいもの』と『そこまで解決を急いでいないもの』といった“強弱”があることが判明した点は大きかったですね。私自身が長く営業店にいた経験を生かし、現場の実情に即した内容を意識しながら電通総研とアンケート内容を作りあげられたことで、とても率直な回答をもらえたのもよかったです」(高田氏)
さらに高田氏は、「優績者のアクションを分析し、業務効率化やより営業を進めやすい方法を可視化して改革案に反映する」といった提案にも魅力を感じたと話します。「各営業担当者が良いアクションを取り入れることも業務改革につながります。そうした視点の取り組みは我々だけでは難しかったため、興味深かったです」(高田氏)
「事務作業8割、営業活動2割」からの逆転へ
あるべき姿の明確化と、成果の定量化で改革推進に向けた“軸”が定まる
「ToBe(あるべき姿)検討」を軸とした第2フェーズでは、約150点挙がった課題を集約し、改革の方向性を位置づけるコンセプトを策定。そのうえで具体的な施策が検討されました。その結果、課題の根幹は、個別最適化されたシステムが乱立し、個々の業務も分断され増加したことから「事務作業負担が大きく、営業力強化のための顧客折衝能力を向上させる機会を損失している懸念がある」点であると判明。解決に向けたコンセプトとして、「『書類の山』から『チャンスの山』へ~ユーザーファーストへのチェンジ&チャレンジ~」が策定されました。
高橋氏は「2:8から8:2へ」の考え方がポイントになったと回想。「現状の融資業務の中では事務にかけられる時間が8割、営業にかけられる時間が2割だったところを、逆転させるという大きな目標が策定され、以降の検討や考え方のベースができました」と手ごたえを伝えます。
また、高田氏はこの取り組みを、「『ToBe』の裏には『AsIs』、つまり今の業務状況(課題)があります。このフェーズでは現状課題の洗い出しを経て、それらを解決し得る“あるべき姿”の検討ができたので、フェーズ1からのつながりを強く感じましたし、納得感を持ちながら進められました」と振り返りました。
続くフェーズ3では各課題をどのタイミング、どの視点から解決していくかを検討。「融資支援システムの更改による解決」「サブシステムの改修による解決」「業務への取り組み方による解決」の他、今後別途取り組む「“質”の課題」へと分類し、最終的にすべての課題が網羅されて、解決への道筋を提案できているかの確認が進められました。
今回の柱となった「“量”の課題」は、システム改修をもって解消できるものも多いため、電通総研では社内のシステムの担当者・営業担当者もワークショップに参加して具体施策を検討。各施策が実現することによって見込める、営業店担当者の事務稼働削減時間を、明確な根拠をもって定量的に示していったといいます。
「こうしたプロジェクトやシステム更改では、効果をどのように定量化させるかを考えるのが難しい。電通総研の『ロジックモデル』という考え方を基に、各施策の実現によって営業にかける時間を確保できた場合の、金額的な効果の示し方を経験できたことは大きな学びの一つです」。高橋氏は、フェーズ3の取り組みを思い返し、本プロジェクト内の成果に留まらない有用性についてそう話します。
また高田氏は、「このプロジェクトでは、あくまで“考え方”をベースに施策を話し合っていましたが、電通総研は並行して『Fit&Gap分析』という形で、一部の課題解決に資するシステムへの具体的な反映方法も提案してくれたため、解決手段のイメージがつきやすくなりました」と評価しました。
大きなシステム更改などの稟議を進めるには、明確な成果を提示できるかが重要です。本プロジェクトでは、各施策による業務改革の効果を金額換算できたことで、他部室などへの説明に説得力とインパクトが出ました
京都中央信用金庫デジタル戦略部 業務役 高田祐希氏
「量」の次は「質」の改革へ。今後も業務への深い理解と、システムへの知見を生かした提案に期待したい
「我々としてはこうした業務改革自体が初めてのことで、導かれるままに進むしかない状況でした。期間も限られた中でしたが、電通総研の知見と、WBSを信頼しながら、忌憚なく意見を交わせたことで、よい成果につながったと思っています」。フェーズ3までの業務改革プロジェクトを終えて、高田氏は全体を通してのコンサルティングをそう評価します。
中でも、段階を経て今後目指す「ToBe(あるべき姿)」を明確に定められたことが、プロジェクト推進の拠りどころになったと話します。「施策を考えていく際も、コンセプトの『ユーザーファースト』を軸として、私自身が営業店で実施した際に効果的な施策と思えるかを考え、意見を交わすことができました。こうした軸が自身の中で定着したのは、今後の取り組みを進める上でも大きな成果です」(高田氏)。さらに、プロジェクトチームに参加した各部室の担当者とは、目的の共有化が実現。今後のシステム更改や施策の実施に向けて話しやすい環境ができたといいます。
同金庫内であらためて選定が行われた結果、融資支援システムの更改は、引き続き電通総研が担うことに。その理由について高橋氏は「当金庫の融資業務の実情を熟知している点と、業務改革の効果をいち早く享受するため、最終的な更改終了予定日の2027年5月を待たずに、一部機能を先行して更改していく提案をいただいたことが決め手になりました」と説明します。
今後の取り組みについて高田氏は、「電通総研とは本プロジェクトを通して私たちの目的と希望に対する、共通認識を持てました。今後も深い業務理解と活発な議論を通じて、システムの知見も生かしたアドバイス・提案をいただけることを期待しています」と、意欲を示しました。
今回は営業担当者の業務『量』にフォーカスしたプロジェクトでしたので、次は『質』の面だと考えています。どちらか一方の改革だけでは最大の効果は発揮できないため、営業の『質』を変える方法についても、引き続き一緒に考えていきたいですね
京都中央信用金庫デジタル戦略部 課長代理 高橋良輔氏
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※記載情報は取材時(2025年12月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。