リースシステム「Lamp」で外貨契約を分離管理
基幹システムの限界を補完
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写真左より、三井住友ファイナンス&リース株式会社 ICT開発部長 大川仁氏、ICT開発部 部付部長 平野佳孝氏、ICT開発部 部長代理 木村輝海氏
株式会社三井住友フィナンシャルグループと住友商事株式会社の戦略的共同事業を担う会社として発足した三井住友ファイナンス&リース株式会社(以下、「SMFL」)。メガバンクグループと総合商社が有する広範かつ強固な顧客基盤とネットワークを活用し、それぞれの得意領域を掛け合わせることによって、国内外に付加価値の高い金融サービスを提供しています。
これまで同社の幅広い事業を支えていた基幹システムの更改に動き出したのは、構築から約18年が経過した2022年。開発ツールのサポート終了に伴い、新基幹システム開発プロジェクトがスタートします。その中で、海外への事業展開に欠かせない「外貨建て契約管理システム」は、柔軟性と機能性におけるメリットを考慮し、別システムとして構築されることに。その基盤として選定されたのが、電通総研が提供するリース・ファイナンス業務管理パッケージ「Lamp」でした。
Lampの導入・開発において求められたのは、多様な取引内容を管理し、システム内で業務フローを完結させること。また同社のセキュリティ環境は、国内の金融機関と同等の厳しさであり、遵守しなければならない制約や手続きが多く存在し、プロジェクト進行の難易度は高かったといいます。そうした中、電通総研はLampの開発元である電通総研上海とともに確実で柔軟な対応を行い、2025年5月に無事リリースを迎えました。
グローバル市場の成長領域に向けたビジネス展開は、同社中期経営計画における戦略の一つです。ICT開発部長を務め、新基幹システム開発の全体統括を担当した大川仁氏は、「海外事業の拡大にあたっては、ガバナンス強化と同時に柔軟かつ高度な活用が見込めるシステムが必要です。Lampであれば、そうした対応が可能だと考えています」と今後のLamp活用に期待を寄せます。
目次
多様なケースが存在する外貨建て契約管理。手作業の増加が課題に
大川氏は新基幹システムの開発の背景として、長年使用を続けたシステムには課題が顕在していたと振り返ります。
「旧基幹システムは改修を繰り返し非常に重厚なシステムになっていたため、軽微な修正でも影響範囲が広く、手を入れにくい状態にありました。また、開発ツールのサポート終了が迫る中で、開発言語も古く、対応できる技術者も不足しつつあったのです。そこで、この更改を機に、より汎用性を高めた基盤を作り、今後の新規ビジネスにも柔軟に対応していくことで、事業の推進をシステムによって後押ししたいと考えました」(大川氏)
2022年に基幹システムの構築がスタート。その中で「外貨建て契約」の管理は新たな基幹システム内で行うのではなく、別システムとして管理し、基幹システムと連携する案が浮上します。Lampの導入・開発を主導し、関連部署との連携役を担った平野佳孝氏はその背景について次のように語ります。
「旧基幹システムでは、外貨建て契約管理用のシステムは後発で開発されたため、既存のシステム構造との整合性や設計制約の影響を受け、業務要件に対する柔軟な対応が困難でした。特に契約の進捗管理、会計処理時の入出金管理、為替換算など、外貨特有の業務においてはシステム対応が不十分で、実務に即した運用ができない場面が多く発生していました。その結果、これらの業務はすべて手作業で対応せざるを得ず、業務負荷の増加と効率性の低下が大きな課題となっていました」(平野氏)
外貨建て契約管理は、基幹システムで管理される取引数に比べると件数は少ないものの、多様な種類の契約への柔軟な対応が求められると平野氏。「新基幹システムの外貨建て契約管理機能をカスタマイズするという選択肢もありましたが、また同じように制約を受けてしまうことが予想されました。外貨取引用に準備されたパッケージシステムを導入した方が、基幹システムと連携する際の負荷やコストと比較しても有益ではないかと考えたのです」と、当時の判断を思い返します。
業務効率化に寄与する機能的なシステムとしてLamp導入を決める
Lampであれば、外貨建て契約管理業務の負荷増大という課題を解決できると考えました。海外現法で導入に関わったメンバーの話から、活用方法も想像できました。加えて、保守における電通総研のサポート対応も評価が高く、採用の後押しになりました
ICT開発部 部長代理 木村輝海氏
こうした状況の中、外貨建て契約の管理システムとして選ばれたのが「Lamp」でした。平野氏の下でLamp導入・開発の現場リーダーを務めた木村輝海氏は、選定の理由にLampの導入実績を挙げます。「Lampは当グループの中国・ASEANにある現地法人で導入され、長年使用を続けています。多種多様な種類の商品を管理できることや、電通総研のサポートの良さなどがわかっていたので、外貨建て契約管理システムとして十分に機能するイメージが持てたことが大きな理由の1つです」。さらに大川氏、平野氏が挙げた旧システムの課題に対しても、Lampの導入により解決のイメージが湧いたといいます。
「本来システムによる取引管理では、登録した取引データを基に、契約時の書類作成から進捗状況の管理、会計、契約完了までの業務フローをシステム上で遂行できる状態が理想です。しかし旧システムでは、 契約管理や入出金履歴の記録はできても、それぞれの処理が連動しておらず、一連の業務として進めるまではできていませんでした。Lampを導入することによって、手作業や縦割りの業務になってしまっていた部分をつなげることで、業務の効率化を実現できると考えたのです」(木村氏)
加えて「セキュリティ対策」がポイントになったといいます。木村氏は、この点について国内屈指の金融グループであるSMFLならではの状況を打ち明けます。「当社システム環境は、銀行を基準としたかなり堅牢なものです。そのため新たなシステムの開発や導入においても厳密な制約があります。厳しいセキュリティを担保したうえでのシステム構築が必要不可欠な中、電通総研は、当社の国内データセンターにおける構築実績を有していたことが安心感につながりました」
“適時・適材・適所”のエキスパートを動員したプロジェクトマネジメントで、「ジャパンクオリティ」の品質とスピード感ある対応が可能に
当社の複雑な要件に対応しきれないベンダーも少なからずいる中で、電通総研はフェーズごとに知見や経験の豊富な“適材適所”の人材をアサインし、とても前向きに取り組んでくれました
ICT開発部 部付部長 平野佳孝氏
木村氏は、実際の開発プロジェクトにおいても、そうした厳しい制約の背景や実情を理解したうえでの対応に助けられたと頷きます。「当社のシステム構築経験がないベンダーの場合、あまりの厳しさにうまくプロジェクトを進行できなくなってしまうケースもあります。電通総研はそういった点も含めて、金融業界のシステム開発に対する理解があり、常に現実的な対応をしてくれました」
セキュリティ面の品質を担保する上では、同じ事務所内で開発を完結できることの多い海外現法と異なり、各地に散らばるさまざまな部署と連携してシステム構築を進める日本ならではの難しさがあるといいます。その中で、「ジャパンクオリティ」を前提とした認識共有を当初から徹底。電通総研は、東京本社のメンバーが開発実務を担う上海メンバーとの橋渡し役と品質管理を行うことで、厳密な要望をクリアしました。
木村氏は「基幹システムの開発スケジュールに合わせてLamp導入を進める必要があったため、非常にタイトな進行になることもありました。そのような中でも着実にプロジェクトを進行してくれただけでなく、本来基幹システム側で対応しなくてはならないところも、『Lamp側で修正した方が早いので対応します』と柔軟な対応をしてくれました。東京本社のメンバーのプロジェクト推進力はもちろん、開発拠点の上海メンバーのスピーディーな修正対応も頼もしかったです」と、東京と上海による合同チームの利点に言及しました。
開発中、特に難所となったのは「会計」領域に関わる仕組みだったといいます。平野氏は、3年かけて構築される基幹システムに対し、後発で開発がスタートしたLampの短期スケジュール内において会計領域の課題をクリアした理由に、電通総研による“適時・適材・適所”の対応があったと笑顔を見せます。
「たとえば、開発当初の上流工程に対しては、タイの現地法人におけるLamp導入経験者が、このパッケージで対応可能な範囲やカスタマイズ可否をしっかり取捨選択したうえで提案してくれました。その次の工程では、会計の仕様にとても詳しい担当者が入って進めてくれました。インフラ周りの対応時には、当社のデータセンターのシステムと他システムの連携経験がある方を連れてくるなど、当社の実情をよく知るその時々のエキスパートをアサインしてもらえました。そうしたメンバー編成をしっかりと組んでもらえたことで、難所をクリアできたと感じています」(平野氏)
外貨建て契約管理における8割の課題が改善。さらにLamp活用の幅を広げられるか、引き続き検討していきたい
電通総研には、今後の継続的な開発・保守はもちろん、Lamp以外でも、当社が活用できるより良いソリューションがあれば、引き続き相談していきたいと考えています
ICT開発部長 大川仁氏
5月に無事リリースされ、まだ走り始めたばかりではあるものの、平野氏はすでに成果が見え始めているといいます。「Lampの導入で、外貨建て契約管理に関連する業務の多くをシステム上で遂行できるようになりました。ワークフロー機能も備わり、外貨建て契約業務における課題の7~8割は改善ができたと感じています」。また木村氏は、「基幹システムと分離されたことによって、柔軟な改修ができるようになりました。改修時のスピードも基幹システムとは比べものにならないぐらい速く、機動力は大きく上がったと思います」とシステム運用上の成果について言及します。
今後の展開として、大川氏は基幹システムとのさらなる連携強化を視野に入れています。「海外への事業展開を強化している今、新たな事業領域が広がる可能性は大いにあります。その際に、基幹システムで事業管理をできるのがベストではあるものの、なかなか当てはまらない状況も考えられます。もともとLampは外貨建て契約管理機能だけでなく、リース・ファイナンス業務システムとしての機能が多く備わっている。Lampが、新規事業管理に使えるシステムとして1つの候補になり得ると思っています」
木村氏も今後のさらなる活用に意欲を見せます。「国内本社がLampを導入し製品理解が高まったことで、海外現法でも適用範囲をさらに広げられる可能性も増えたと考えています。以前から使用している国の事務改善を図ったり、新たな活用方法を波及させたりしていきたいです。電通総研には、現場から上がってきた声を反映させるエンハンス開発を一緒に考え、よりよい活用に向けた提案してもらえると嬉しいですね」
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※記載情報は取材時(2025年9月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。