岡山県

自治体に特化した生成AIソリューション「minnect AIアシスト」を導入!
電通総研の定着支援で、庁内の活用を推進する

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岡山県 総務部 デジタル推進課 中津敏晴氏

他の自治体に先駆けて「生成AIの活用」を推し進めてきた岡山県。2023年5月に生成AIに関するワーキンググループを立ち上げ、同年8月に「生成AI利活用ガイドライン」「生成AI利活用事例集」を公開し、生成AIの業務利用を開始しました。

当初は一般公開している生成AIサービスを使っていましたが、活用を重ねる中で、「より庁内に閉じたセキュリティが担保されるべき業務でも利用したい」「一般的なWebサービスだと、自治体に特化した情報が提供されにくい」という要望や課題に直面。そこで、2024年3月にプロポーザルを実施し、電通総研が提供する自治体向け生成AIソリューション「minnect AIアシスト」を採用しました。
導入後は、岡山県庁に勤務する約4,000人を対象に利用希望者を募り、登録制で活用を進めています。主な用途は、施策のアイデア出し、表計算ソフトの関数やプログラムの作成、挨拶文や連絡文の作成など。稼働開始から約半年で270名ほどの職員が登録を申請し、実業務において使用しています。

生成AIの利活用を推進する岡山県デジタル推進課の中津敏晴氏は「導入してまだ1年も経っていませんが、ユーザーからは『資料の作成時間が1/3程度になった』『表計算ソフトのプログラムコードを生成AIに書いてもらい圧倒的短時間で新規機能を開発できた』などの効果が出ていると聞いています」と話します。「活用するのが難しいイメージがある生成AIが受け入れられ、成果が出始めているのは、電通総研の手厚いサポートがあったからこそ。技術的な支援だけでなく、活用促進のための戦略を一緒に描いてくれ、ユーザー数は着実に増えています」と振り返りました。


いち早く「岡山県生成AI利活用ガイドライン」を公開!庁内課題を解決し、よりよい住民サービスの提供を目指す

2023年8月、岡山県は、他の自治体に先駆けて「岡山県生成AI利活用ガイドライン」を公表しました。ガイドラインには、「個人情報や機密情報は入力しない」「生成物は厳重に確認する」「所属長が適正な利用を監督する」ことなどが明記されており、自治体が生成AIを利用する際順守すべきルールや生成AIの利活用方針などが、A4で4ページの文書にまとめられています。

「ガイドライン策定の背景にあったのが、『業務効率向上や人手不足解消のために、本気で、生成AIを活用したい』という思いだった」と語る中津氏。多くの自治体同様に、少子高齢化により労働生産人口の減少が進む岡山県では、生成AIを活用して業務効率を上げ、人手不足に対応することは、喫緊の課題でした。

「岡山県は、知事の方針もあり、以前からデジタル技術の利活用に積極的に取り組んでまいりました。ノーコードで業務アプリを開発できるツールやAI-OCRの導入などにも早い段階で取り組んでいます。こうした風土があったため、生成AIについても、世に出てすぐに『検討しよう』『使ってみよう』ということになりました。ガイドライン公表前の2023年4月からWeb上で使える無料の生成AIサービスを利用し始めています」(中津氏)

こうした経緯で生成AIを活用しはじめたものの、「やはり、庁内に特化した業務で活用したいこと、その上では会話の内容を学習データとして利用されてしまい、それが情報漏洩につながるリスクを孕んでいることは無視できませんでした」と中津氏。加えて、一般の生成AIサービスの場合は、庁内データの情報を参照して回答を返してくれないという問題もあり、高度なセキュリティが実装された自治体特化型の生成AIツールを導入するため、プロポーザル方式での入札を行うことにしたそうです。


自治体の要件を満たす高度なセキュリティ、RAG( Retrieval-Augmented Generation )機能、手厚い伴走サポートが、採用の決め手になった

我々のセキュリティ要件を満たしていること、RAG機能を備えていることのほかに、価格体系が従量制ではなく定額制のため、予算の見通しが立てやすいという安心感もありました。

岡山県 総務部 デジタル推進課
中津敏晴氏

電通総研が提供する「minnect AIアシスト」は、LGWAN上で稼働する生成AIツールです。自治体のセキュリティ要件を満たしながら安全に生成AIモデルが利用できるよう設計されており、さらに庁内に保有されているデータを参照して回答を生成するRAG機能も備えています。

中津氏は採択の理由について「我々のセキュリティ要件を満たしていること、RAG機能を備えていることのほかに、価格体系が従量制ではなく定額制のため、予算の見通しが立てやすいという安心感もありました。また、導入後の技術支援や定着支援について非常に手厚くレベルの高いご提案をいただいたことも評価につながっています」と話します。

電通総研には「AIトランスフォーメーションセンター」というAIの専門組織があり、ここで最新の生成AIの情報を逐次チェックし、タイムリーにサービスへ反映させる体制を整えています。さらに、生成AIの導入や利活用を支援する経験豊富なスペシャリストが、定着に向けた戦略を提案したり、具体的な定着施策をアドバイスしたり、生成AIツールに関する研修の講師を担当したりするなどさまざまな形で、継続的なサポートを行っています。「技術面だけでなく戦略面でも支援を受けられる点が特によかった」と中津氏。電通総研の強みのひとつである人的リソースを活用した伴走型のサポートも、大きく採択を後押ししました。


生成AIの利活用セミナー、意見交換会、アイデアソンなどを実施。数々の施策でユーザー増を実現

生成AI専門の技術部隊でありながらユーザー増の戦略を一緒に考えてくれ、とても頼もしく感じました。技術だけでなく、その周辺の幅広い領域で親身になってサポートをしてもらい、だからこそ今があると思っています

岡山県 総務部 デジタル推進課
中津敏晴氏

「minnect AIアシスト」の活用は、セキュリティ面の配慮から、使用を希望する職員の登録制で進めていると言います。そのため、やや利用開始のハードルが高く、「いかに多くの職員に生成AIを使いたいと思ってもらうか、登録したいと感じてもらうかが課題でした」と中津氏は振り返ります。

「悩んでいたとき電通総研からアドバイスをもらい、まずは生成AIに関する1時間程度の入門セミナーを2回実施しました。1回目は147名、2回目は45名の職員が参加。これをきっかけに、ユーザー数が伸長しました。さらに7月には、minnect AIアシストを活用している職員にインフルエンサーになってもらい、非アクティブユーザーと対話してもらうような意見交換会を実施しました。10月には、生成AIワークショップ・アイデアソンを開催しました。意見交換会やアイデアソンでは、参考になるユニークな活用事例やアイデアが数多く紹介され、私自身も勉強になったと感じています」(中津氏)

意見交換会では、“おかやまマラソン担当者が生成AIとの対話のなかでより参加者に喜ばれる企画を模索していった事例”や、”次年度の予算を考える際の事業整理に生成AIを活用した事例”などが報告されたと言います。アイデアソンでは、“岡山県産デニムをフランスに輸出する際のPRに関するプロポーザル実施にあたって、生成AIを活用し、仕様の検討や審査基準の明確化を行うというアイデア”が1位として表彰されました。
他に、活用の事例を月1回のペースで掲示板に上げ公開するという活動や、外部講師を迎えたハンズオンセミナーなど、ユーザーの増加や定着に向けた数多くの施策を行っています。

こうした活動は、電通総研や協働している電通西日本との月1回の定例会と日常のやり取りのなかで意見を交わしながら企画していきました。施策が奏功し、「minnect AIアシスト」の登録者数は、半年でリリース直後の約4倍に伸びたと言います。
「登録者数は現在も右肩上がりで増え続けています。電通総研や電通西日本の支援がなかったら、このような増加は実現できていなかったことでしょう」と中津氏。今後も継続して施策を行い、近い将来、ユーザー数の大幅増を実現したいと考えています。


プロンプトのテンプレート機能などを使い、リテラシーに合った活用ができるよう工夫。資料の作成時間が1/3になるなどの効果も!

「minnect AIアシスト」は、生成AI初心者でも抵抗なく使えるような親しみやすく使いやすいインターフェイスや機能を備えています。多くの機能のなかで、特に好評を得ているのが「共通テンプレート機能」です。管理者が活用度の高いプロンプトを登録しておける機能のことで、これによってユーザーは、共通テンプレートを呼び出すだけで生成AIを使うことが可能になります。中津氏は「我々も共通テンプレート機能をかなり活用しています。生成AIをまったく使ったことがないという職員でも、まずはここから始められるため助かっています」と話します。

他に、中津氏が、特に活用度が高いと感じているのが「チャットを作る際にシステムメッセージが入力できる点」です。思い通りの回答を得るためのテクニックやポイント、有用なプロンプトをシステムメッセージとして入力しておくことで、より高度な使いこなしが可能に。「中級者・上級者に喜ばれている機能です」と中津氏は話します。

「実は最近、システムメッセージを活用して、プロンプトそのものを生成できることに気付きました。システムメッセージに、プロンプトを自動生成するためのプロンプトを入れておくと、チャットで『こんなプロンプトを作ってほしい』と指示するだけで最適なプロンプトを生成してくれるようになるんです。」(中津氏)

初級者は共通テンプレートを、中上級者はシステムメッセージを使うことで、職員のリテラシーに適した生成AI活用を実現。機能の利活用や周知、地道な定着支援を続けたことで、最近では「資料の作成時間がこれまでの1/3程度に圧縮できた」「表計算ソフトのプログラムコードを生成AIに書いてもらうことで、圧倒的短時間で新規機能を開発できた」などの嬉しい声がデジタル推進課に届くようになりました。

今後について、「年度内に、庁内でも要望の高い画像生成機能がminnect AIアシストに付加されマルチモーダルAIにシフトしていく予定があると聞いています。また、minnect AIアシストにもプロンプトを生成する機能が実装されるとか。我々自治体の要望に合わせ、スピーディーに機能をアップデートしていただけるところも嬉しいですね。これからも、技術・戦略の両面でのサポートを続けていただき、より大きな効果につなげていきたいと思っています」と話す中津氏。自治体に伴走し、その声を吸い上げ、柔軟に進化する「minnect AIアシスト」の魅力を、存分に感じていただけている様子でした。


岡山県様 概要新しいウィンドウで開きます

人口:
1,830,382人(2024年11月1日時点)
世帯数:
870,444世帯(2024年1月1日時点)
面積:
7,114㎢(2024年10月1日時点)
特徴:
岡山県は、北側に中国山地、南側に瀬戸内海を抱く、豊かな景観に恵まれた地域です。また、山陽新幹線、中国自動車道、山陽自動車道など主要な鉄道や道路が敷設されている点、瀬戸大橋や岡山空港を擁する点から、中四国のクロスポイントとして機能しているところも特徴です。日本三名園の一つである岡山後楽園や白壁の町並みが残る倉敷美観地区、西日本屈指の高原リゾートである蒜山高原、豊富な湯量と優れた泉質の美作三湯など、温暖な気候、自然とあいまった魅力ある観光資源が県内各地にあります。
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  • 記載情報は取材時(2024年11月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。

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