SnowflakeとASTERIA Warpで海外拠点を繋ぐデータ基盤を構築
データ統合によって営業活動の精度向上と効率化を実現

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銅やレアメタルなど非鉄金属を中心に資源開発から製錬、リサイクル、電子材料の製造・販売まで幅広く事業を展開するJX金属株式会社。特に圧延銅箔、半導体用スパッタリングターゲット、高純度タンタル粉、InP基板などの先端材料の分野では世界トップクラスのシェアを誇る製品を数多く保有し、スマートフォンや半導体、AIサーバーなどの成長分野を支えています。

成長の追い風のなか、主力製品である圧延銅箔や高機能銅合金条などを手掛ける機能材料事業部では近年、中国、台湾、タイ、マレーシア、フィリピンといった、海外拠点の事業データ分析に課題を抱えていました。拠点ごとに独自のシステムが構築されており、営業活動のために必要なデータの集約に多大な工数を要していたのです。

この課題を解決するため、同事業部は2024年、データクラウドの「Snowflake(スノーフレイク)」とデータ連携ツール「ASTERIA Warp(アステリアワープ)」を導入、電通総研とともに海外拠点をつなぐ統合データ基盤を構築しました。

その成果についてプロジェクトリーダーの技術本部情報システム部の三田将司氏は「営業活動に必要なデータを加工レスで入手できるため、グローバル観点でのデータ分析がスピーディーに行えるようになりました」と語ります。

電通総研を構築パートナーに選んだ三田氏は「10社以上の候補の中でも特に2つのソリューションの双方に精通し、専門人材と技術力を兼ね備えていました」と話し、「電通総研の支援チームはさまざまなノウハウを駆使し、プロジェクトを短期で完了させてくれました」とプロジェクトを振り返りました。

営業の精度とスピードを削ぐ“データの壁”

「解決しなければならない課題でした」。そう話すのはJX金属の機能材料事業部 営業部の立石真之氏。その課題とは、海外拠点で管理されている事業データの壁でした。

独自のシステムで管理されているこれら現地データは、言語はもちろん形式も異なり、国内の営業担当は、在庫の把握や販売・生産予測のため、手間をかけてデータを収集・加工しなければなりませんでした。表計算ソフトで行われるその作業には入力漏れや記入ミスのリスクもあり、それは予測の精度やスピードを阻害する構造的なボトルネックとなっていました。

機能材料事業部の営業部は稼ぎ頭の主力製品を扱っており、その営業活動の精度は同社の成長戦略に直結する大きな課題です。これを解決するために新たな仕組みが求められていました。

2つのソリューションの連携、熟練の構築支援

電通総研は熟練のノウハウを駆使して、プロジェクトを短期で完了させてくれました

JX金属株式会社 プロジェクト推進本部 企画管理グループ (兼)技術本部 情報システム部 技師 三田将司氏

2024年8月、これら課題解決に向けたプロジェクトが始動します。

目指すのは膨大かつ多様な形式の事業データを一元的に集約するデータ基盤。その実現に向け三田氏が描いたのは2つのソリューションを連携させる仕組みでした。セキュリティ上の観点から、各拠点のシステムとクラウド環境を直接ネットワークで接続することには制約があるため、クラウドへの接続経路は国内の自社サーバーに集約。その後、それをクラウド上のデータウェアハウスに集約する構想です。

データ連携ツールとして選ばれたのは、国内市場で1万社以上の導入実績を持つASTERIA Warp。「自社のオンプレミス環境に手軽に導入でき、システム開発もノーコードで行えます」と三田氏はその特長を話します。「さらに、このツールにはデータの変換、結合、バッチ処理などのテンプレートが豊富に揃っており、短期のスピード開発に適していました」。

一方、データの集約と活用の仕組みとして採用されたのは、データクラウドのSnowflake。そのメリットについて三田氏は「アクセス制御が容易なほか、データマーケットプレイスを通じて為替レートなどの外部データへの接続も手軽に行えます」と話します。「また、サーバーレスなのでインフラを管理する手間が要らず、従量課金制であるためコストパフォーマンスに優れています」。

基盤構築のパートナーとしては電通総研が選ばれました。その経緯について三田氏は「複数の技術ベンダーに声をかけましたが、ASTERIA WarpとSnowflake双方に深い知見を持ち、優れた人材や技術力を兼ね備えた電通総研を選定しました」と話します。「社内に専門知識をもつスタッフが少ないなか、電通総研のサポートチームはローコード開発やテンプレート活用など熟練のノウハウを駆使して工数を削減し、プロジェクトを短期間で完了させてくれました」。

営業活動の精度向上と効率化、システム開発とインフラ運用コストにメリット

属人的なプロセスから解放されたことで、営業活動の効率化にもつながります

JX金属株式会社 先端材料事業本部 機能材料事業部 営業部 主事 立石真之氏

2025年3月、UAT(ユーザー受け入れテスト)などの最終プロセスを経て、統合データ基盤はリリースの時を迎えます。翌4月、手始めとして機能材料事業部の主力製品(圧延銅箔と高機能銅合金条)を扱う営業チームでの運用が始まりました。

この新たな仕組みについて、圧延銅箔の営業を担当する機能材料事業部 営業部の林光彦氏は、「各拠点の生産実績や在庫を一元的にリアルタイムで可視化できるようになり、営業活動の精度が上がった」と話しています。また、高機能銅合金条の営業に携わる立石氏は「表計算ソフト依存の属人的なプロセスから解放され、入力ミスや集計の齟齬が大幅に削減された」と語ります。「これは在庫リスク低減や販売機会損失の抑止など、販売体制の強化につながります」。

三田氏はシステムの開発と運用にコスト削減効果を見ています。「ASTERIA Warpに備わっているテンプレートの活用により開発コストを約40%削減できました。またサーバレスであるSnowflakeを活用することでインフラ運用コストを約50%削減できました」。このほかにも三田氏は「従来行われていたデータ収集・加工に係る工数が30%近く削減された」と話しています。

生産実績や在庫をリアルタイムで可視化できるようになり、営業活動の精度が上がりました

JX金属株式会社 先端材料事業本部 機能材料事業部 営業部 受注担当課長 林光彦氏

追い風を成長に変えるインフラ

2つのソリューションを連携させて立ち上がった今回の統合データ基盤。今後は、生産管理部門や製造部門など、他部門への横展開を視野に入れています。

「今回のプロジェクトの成果のひとつは、全社規模でグローバルに拡張できるデータ基盤を構築できたことです」と三田氏は話します。

AIサーバーをはじめとする半導体・電子デバイス市場が急速に拡大するなか、JX金属の生み出す機能材料へのニーズは高まりを見せています。今回構築された統合データ基盤は、その追い風を成長に変えるためのインフラともいえるでしょう。

「将来的にはSnowflakeに集約されたデータをもとにAIによる需要予測や更なる分析の高度化も検討したい」と三田氏は語ります。「そのためにも電通総研のさらなる支援に期待しています」。

社名:
JX金属株式会社
本社:
〒105-8417 東京都港区虎ノ門二丁目10番4号 オークラ プレステージタワー
資本金:
750億円
従業員数:
連結:10,413名/単体:3,267名(2025年3月31日現在)
事業内容:
薄膜材料事業、タンタル・ニオブ事業、機能材料事業、金属・リサイクル事業、資源事業
  • 記載の会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。
  • 記載情報は取材時(2025年9月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。

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