農林中央金庫
「Microsoft 365」と「Microsoft Power Platform」を柔軟に活用し、全社的な働き方改革推進をサポート
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「JAバンク」「JFマリンバンク」「JForestグループ」の全国機関として、農林水産業の発展に尽力する農林中央金庫。1923(大正12)年の設立から約100年間、第一次産業を取り巻く環境が変わりゆく中でも柔軟にビジネスモデルを変化させ、民間金融機関として「食」と「農林水産業」に関わる業界を支えてきました。
そんな農林中央金庫が、かねてより取り組んできた働き方改革の一環として「Microsoft 365」を中心としたITソリューションの導入を決定したのは2021年。これまで約20年にわたり社内業務に利用されてきた中核システムを刷新し、「必要な情報がすぐ見つからない」「どれが最新の情報かが分かりにくい」「管理システムが分かれていて同じような情報をあちこちに入力する必要がある」といった、全社的な業務課題・コミュニケーション課題を解決。プロジェクト進行中の2023年7月時点で、職員の業務効率化とコミュニケーションの活発化が顕著に表れ始めています。
本改革において、Microsoft 365 の各ツールをより柔軟に幅広く活用するためのパートナーに選ばれたのがISIDでした。プロジェクトのリーダーを務める同金庫事務・ITユニット IT統括部部長代理の柏原将飛氏は、「各ツールの特徴を的確に捉え、得意分野や長所を活かした使いこなし方、時には他のソリューションとの連携やアレンジ方法を柔軟に提案いただき、我々が目指していたものをしっかり実現できています。特に課題となっていた規定文書ファイルの検索性が上がり、各職員から業務負荷が削減されているとの声が多く届いています」と、その成果を評価しました。
全社的なコミュニケーションと働き方の課題を打開する、中核システムの見直し
「Microsoft 365を中心としつつも、各ツールの特徴や機能を捉えながら、時には組み合わせて最適化し、活用していきたいと考えていました。ISIDはそうした考え方を理解して的確なサポートをいただけると感じました」
農林中央金庫 事務・ITユニット IT統括部 部長代理 柏原将飛氏
「食農ビジネス」「リテールビジネス」「投資ビジネス」を3つの柱として掲げる農林中央金庫。柏原氏は各事業について、「食農ビジネスでは、われわれの強みである『食』と『農』の知見を活かし、農林水産業を成長産業化させる取り組みを行っています。例えば当金庫が法人・企業と農林水産業との架け橋になり、事業承継問題を解決するためのM&Aのアドバイスやビジネス提案など、さまざまなサポートサービスを提供しています。リテールビジネスでは、全国機関としてJAバンクなどで提供される金融サービスをより効果的にお客様に届けていくための運営を実施。投資ビジネスでは、グローバルな分散投資を通じて安定した収益を確保し、全国の系統団体への還元を進めています」と説明します。
これらのビジネスをITの観点から支えているのが、IT統括部です。柏原氏がリーダーを務める“DX班”は、2022年4月に発足。第一のミッションに、全社的な共通業務の効率化、およびコミュニケーション課題を解決するためのDX推進が掲げられました。その具体的な方法の一つとして着手したのが、長年社内の情報共有基盤(グループウェア)として使われ、サポートが終了する「Notes」からの移管です。「Notesは当金庫で20年以上にわたり使用されてきました。その過程で発生した個々の課題や状況に合わせて『部分最適』化が繰り返され、全体を通した管理・検索ができない状態になっていたのです。また、システム内に大量のDBが乱立して、基盤内での文書の検索性が大幅に低下していました。これまで職員が必要な資料を探すときは各DBを一つずつ見ていく必要がありました」(柏原氏)。
多くの職員がさまざまな場面で閲覧するグループウェアの掲示板情報。その保管先の検索性や利便性の低さは、業務効率が上がらない大きな要因になっていたといいます。また、コロナ禍をきっかけにリモートワークが増える中、スマートフォンから閲覧ができないといった課題も発生。さらに、別システムで運用されていた書類作成時のワークフローも見直しを図ることになりました。これらの解決のために活用されることになったのが、社内のグループウェアとして導入が決まっていた Microsoft 365 です。柏原氏はその複合的な活用に向けて、ISIDをパートナーとして選んだ理由を次のように語ります。
「本プロジェクトでは、社内のポータルサイトやワークフローシステムの構築、規定文書ファイルのリプレースなどを総合的に推進していく必要がありました。その中で Microsoft 365 以外にもboxなどSaaSのワークフローやクラウドストレージなど、複数のソリューションを組み合わせて活用したいと考えていたのです。各社にご提案をいただいた際、ISIDは現行のNotesの機能をただ Microsoft 365 に置き換えるだけでなく、「Microsoft SharePoint」を始めとしたツールの特徴を上手く活かして、見やすく検索性の高い形にアレンジする案を出していただきました。ほかにもいろいろと柔軟なご相談ができそうだと感じ、お願いすることに決めました」
柔軟なアレンジと他システムとの連携提案が、Microsoft 365 の使い方を広げた
「既存の機能だけでは賄えない要望を、他システムとの連携や柔軟なアレンジで実現いただき、“かゆい所に手が届く”提案と技術力に支えられました。ご相談時のスピーディーな回答も助けになりました」
農林中央金庫 事務・ITユニット IT統括部 小宮裕樹氏
現場の窓口として、Microsoft 365 を中心とした社内ポータルサイトや規定(文書)閲覧システムの構築、規定文書ファイルの移管等をリードしたIT統括部の小宮裕樹氏は、ISIDからの具体的な提案を次のように振り返ります。「規定閲覧システムでは、ハブとなるサイトを作り、そこにクラウドストレージのboxに移行したファイルを紐づけることで、一括検索ができるような提案をいただきました。コンテンツ文書を一元的に管理するために、「box」を継続利用したかったのですが、今回リニューアルする規定閲覧システムとの連携方法が懸案となっていたのです。そんな中でISIDから「Power Apps」とboxの実用的な連携方式・仕組みを提案いただけたことで、既存のboxを継続しながら新しい形で利用できるようになったのは大きかったです」
検索機能の向上に加えて、必要な書類が見つからなかった時の照会窓口をポータルサイト上に設け、その回答をFAQとして投稿できる機能も追加。小宮氏はその背景を「これまで照会窓口が一本化されておらず、電話、社内チャット、メールなどバラバラの方法で担当部署への問い合わせが行われていました。その結果、問い合わせ内容や回答が関係者の間で十分に共有されず、確認に時間がかかったり、二度手間が発生したりと効率的ではありませんでした」と明かします。Microsoft SharePoint と「Forms」「Power Automate」「Microsoft Teams」を組み合わせて実装されたISIDの案は、そうしたコミュニケーション課題を解消し、問い合わせの重複や情報の共有もれは削減。一般職員も照会先に迷うことがなくなり、FAQに載せることでユーザー自らが解決できるすべができたことで、双方の負荷が軽くなったといいます。
また、社内の正式な承認記録として使用する目的の別ワークフロー製品は、頻繁なやり取りを伴う稟議や重要書類などの承認工程には向かない特性がありました。そこで新たに提案されたのがMicrosoft Power Apps、Microsoft Power Automate、Microsoft Teams を利用した簡便なワークフローの構築です。気軽に利用できるワークフローがMicrosoft 365 内に実装されたことで、承認工程の際、状況に合わせてシステムを使い分ける対応が可能となりました。
こうした提案・開発はすべてアジャイル型で進行。小宮氏は、ISIDのスピーディーで柔軟な対応が意志疎通を円滑にし、拡張的な開発に寄与したと笑顔を見せます。「私自身の中で形にしきれていない要望をご相談した際、すぐ目に見える形で提示していただけた点が、一番助かりました。具体的なイメージを共有いただけることで方向性が固まりやすくなり、プラスアルファのアイデアも生まれました。また予算面を考慮いただき、他システムと連携しての対応など、極力 Microsoft 365 の標準機能の範囲内で実現できる方法を考えてくれたところもありがたかったです」
日常の業務における“小さなストレス”の解消が、改革の大きな成果に
同プロジェクトは、2024年度末までに完全なシステム移行を目指して現在も進行中です。しかし、規定閲覧システム、社内ポータルサイト等の構築と、そこに伴うFAQやワークフローシステムの実装により、当初の業務課題はすでに改善の様子が見えています。
規定文書の管理を担う部署では、年度切り替え時の規定改正に伴う業務に対して、定量面で大きな効果があったといいます。「規定文書を公開するには、これまで、申請・承認・一般社員に向けた通知のために、別々の分断されたシステムを使う必要がありました。そのため、作業が非常に煩雑になり、一件につき約15分がかかっていたのです。今回のプロジェクトでそれがすべて1つのプラットフォーム内でできるようになり、業務ピークの月では160件ほどの規定の改正に関わる約40時間分の業務負荷が軽減されました」(小宮氏)
また、柏原氏は定量面では測れない効果について、「社員の大きな業務負荷だった『必要な書類がすぐに探し出せない』『どこに聞けばいいかも分からない』といった問題が解決でき、日常業務の中の“小さなストレス”が改善された点は大きな改革だと考えています」と、評価しました。さらに、当初は想定されていなかったメリットも見られているそうです。「今回新たに構築されたシステム全般に対して、統一感のあるUI/UXを提案いただきました。その結果、各職員による社内向けの情報発信のツールとして活用が広がり、コメントの返信や『いいね』機能による交流も生まれています。自主的な発信やそれに伴うコミュニケーションの活発化は、全社的なエンゲージメントを向上させますし、当初は意図していなかったプラスアルファの効果でしたね」(柏原氏)
複合的な成果を実感する中、柏原氏は今後の展望を次のように見据えています。
「さまざまな改訂を進めている最中ですが、当社としてはまだまだMicrosoft 365 を使いこなせていないと感じています。引き続きISIDにしっかりサポートをいただき、ライセンスで利用できる範囲はすべて“使い倒す”くらいの気持ちで活用をしていければと考えています。
ISIDには、SalesforceやRPA関連など、他分野のソリューション活用においてもお手伝いをいただいていますし、そうした幅広いソリューションに精通している点に信頼を置いています。今後は各ソリューションの導入・運用を個別にサポートいただくというよりは、当社の業務課題解決や体制変革のための複合的な活用についてお手伝いいただきたいです。ユーザーにとって使いやすいITソリューションの導入を進め、働き方の改善に寄与できることを目指して、一緒に考えていけたらうれしいですね」
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※Microsoft、Microsoft 365 、Microsoft Power Apps、Microsoft Power Automate、Microsoft Teams は、米国 Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。
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※Microsoft 365 、Microsoft Power Platformは、Microsoft Corporationが提供するサービスの名称です。
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※その他記載の会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。
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※記載情報は取材時(2023年7月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。