住信SBIネット銀行 フルクラウドの基盤で高まるコールセンターの機動力
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三井住友信託銀行とSBIホールディングスの共同出資で設立された住信SBIネット銀行。住宅ローン累計取り扱い額は2020年4月30日時点で5兆9千億円を超え、預金残高とともに国内ネット銀行トップの座を占めています。同行は、Amazon Connect(クラウド型コールセンター)とSalesforce Service Cloud(顧客サービスプラットフォーム)を活用し、フルクラウドのコールセンターシステムを構築。これにより従来のシステムで必要であったハードウエア維持のコストが解消されるとともに、ネット銀行事業のかなめともいえるコールセンター運営の機動力が大幅に高まりました。このプロジェクトにおいて基盤構築に大きな力を奮ったのはISIDの金融ソリューションチーム。プロジェクト全体を統括した住信SBIネット銀行システム開発2部の佐藤慎吾氏はISIDのサポートについて「邦銀初となるフルクラウドのコールセンターシステムという難易度の高い案件にも関わらず、銀行業務とコールセンター業務への深い知識に加え、Amazon ConnectとSalesforce Service Cloudという新しい製品に対する高い実装力をもって、プロジェクトを完遂してくれました。更なるコールセンターの高度化に向けて、ISIDには今後も力をお借りしたいです」と話します。
最も重要な顧客接点、現場の悩み
Amazon ConnectとSalesforce Service Cloud という新しいシステム同士の組み合わせを、ISIDは 深い業務知識と高い実装力を持って完遂してくれました。 理想のコールセンターにさらに近づけるため、 今後も力をお借りしたいと思います
佐藤 慎吾氏
「以前のコールセンターシステムでは業務フローや体制を変えたくても、独自のカスタマイズやハードウエアに阻まれ、諦めていた部分も多かったです」。そう話すのは住信SBIネット銀行カスタマーサービス部でコールセンター運営の指揮を執る山本博一氏。長年運用してきたコールセンターシステムは状況に応じた最適な人員配置をしたくても、ツールの設定を柔軟に変えることが出来なかったり新たな機器が必要になったりと、ハードルが高かったというのです。
物理的な支店をもたないネット銀行にとってコールセンターは最も重要な顧客接点。2007年の営業開始以来、山本氏らが統括するコールセンターは、電話やWebなどから寄せられる顧客からの問い合わせに機敏に対応し、右肩上がりの事業成長に貢献してきました。しかし、コールセンターシステムは導入から10年、その技術インフラにそろそろ限界が見えはじめていたのです。
「電話やWebなど、問い合わせチャネル別にシステムを立ち上げていたため、応対履歴や顧客情報を一元的に管理できないうえ、オペレーターの増減や役割変更、IVR(自動音声応答)メニューやガイダンスの設定変更に手間がかかっていました」と山本氏は打ち明けます。また、過去の実績や曜日・時間帯などの変動要因をもとに、着信呼数を予測する入電予測やそれに則した人員管理は熟練者の経験に頼るしかなく、効率化の足かせとなっていました。
基盤構築、“安心できるパートナー”
電話、Web、チャットなど、さまざまなチャネル からの問い合わせや応対履歴、さらに勘定系の 顧客情報をひとつの窓口で参照できるので、 応対が大幅にスピードアップしました
山本 博一氏
おりしもそのコールセンターシステムは、機器のサポート切れおよび機器を設置しているデータセンターの契約期限の到来によって、2020年までの更改が決まっており、その期限を見据えて2017年2月、行内で“コールセンターシステム高度化プロジェクト”が始動します。
「コールセンター管轄部署に加え、システム開発やVOC(お客様の声)分析を担当する部署からも人が集まり、組織横断的なプロジェクトチームが立ち上がりました」と山本氏は振り返ります。
同チームは次期システムのあるべき姿として“多様化する問い合わせチャネルへの対応”、“応対現場での生産性向上”、“基盤のフルクラウド化”を基本方針に掲げ、各部署の要件を取りまとめてRFP(提案依頼書)を作成。2017年10月、ISIDを含む国内の主要なITベンダーから提案を募りました。
テレフォンバンキングとの連携性を備えたフルクラウドの基盤という要件、さらに厳しい予算設定というハードルが課されるなか、各社から提案を受け、数ヶ月にわたる評価のすえ選ばれたのは、ISIDでした。
その選択理由について、プロジェクトを指揮したシステム開発2部の佐藤慎吾氏は「技術的な説得力はもちろんのことながら、コールセンターや銀行業務のフローを深く理解していたことが大きかった」と語ります。「フルクラウドのコールセンターシステムは邦銀初の取り組み。各社実績がない中での提案でしたので、技術面、業務面の両方で安心できるパートナーを求めていました」。
フルクラウドのアーキテクチャ
ISIDが提案したシステムアーキテクチャは、PBX/CTI/IVR(電話交換機/電話とコンピューターの連携/自動音声応答)など電話関連機能をAmazon Connectに集約、オペレーターによる顧客情報や応対履歴の照会と記録にはSalesforce Service Cloudを活用しています。
Amazon Connectはアマゾン ウェブ サービス(AWS)が開発するクラウド型コールセンターシステムで、オペレーターのアカウント管理、パフォーマンスの分析レポートなどのコールセンター運営に必要となる基本機能はもとより、他システムとの連携機能も備え、迅速なコールセンターの立ち上げを支援します。利用した時間による従量課金のため、業務量が変動しやすいコールセンターにおいて、従来のように最大需要を見越したシステム投資が不要となり、低コストでの運用が可能となります。 Salesforce Service Cloudは、電話・Web・対面等、あらゆるチャネルから入ってきた問い合わせを一元管理することにより、コールセンターのオムニチャネル化を実現します。 しかし、「一つの画面ですべてのオペレーター業務が完結することが生産性の向上のために必須でした」と山本氏は話します。
「Salesforce Service Cloud上ですべてのオペレーター業務を行うには、顧客の口座情報を管理する勘定系システムへのリアルタイム参照など、データ連携の機能も欠かせません。しかしこの実現には、セキュリティなどの不安要素もありました」と佐藤氏は続けます。
ISIDの金融ソリューションチームは、難易度の高いセキュリティ要件をクリアし、データ連携機能を開発。オペレーター業務が、Salesforce Service Cloudという一つの窓口を通して実現できる環境を構築しました。
システムのコスト削減からコールセンターの柔軟な業務運営まで多方面に成果
2019年12月、新しいコールセンターシステムは計画通りリリースされます。
山本氏は最も大きな成果としてオペレーター業務の生産性向上を挙げています。「電話、Web、チャットなど、複数チャネルからのデータ、さらに勘定系の顧客情報をひとつの窓口で参照できるので、応対のスピードが大幅にアップしました。住宅ローン窓口に預金の問い合わせが入ったような場合でも、部署間の受け渡しが円滑に進みます。入電予測も自動化してあるので、人員の最適配置が容易にできるようになりました」。
佐藤氏は、システムコストの削減と事業環境の変化に合わせたコールセンターの機動力向上を成果として挙げています。「従来のコールセンターシステムでは、サーバーを増やせば増やすほどコストがかさんでいました。しかし、クラウドの場合、使用量に対する課金分を支払うだけ。その違いは雲泥の差です。また、拠点や体制の変更もクラウドの方が格段に早い。COVID-19の暫定対応として1カ所にあったコールセンターを2カ所に分割した際のフロア変更にも短期間で対応が完了しました」。
最後に佐藤氏はISIDの導入支援についてこう締めくくりました。「Amazon ConnectとSalesforce Service Cloudという新しい製品同士の組み合わせで、邦銀初となるフルクラウドのコールセンターを構築する。それだけでも難易度の高い案件であったと思います。ISIDは銀行業務・コールセンター業務いずれの知識を持ち、さらに個々の高い技術力をもって、プロジェクトを完遂してくれました。私たちの理想とする機動力のあるコールセンターの実現はこれからも続きます、ぜひISIDには今後も力をお借りしたいと思います」。
2020年7月更新
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※アマゾン ウェブ サービス、AWS、Amazon Connectは、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
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※記載情報は取材時(2020年5月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。
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