全日本空輸株式会社 クラウドベースのデータ分析基盤で市場競争力を高める
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全日本空輸株式会社(ANA)は、1952年、2機のヘリコプターでの創業から、安全運航を第一に航空輸送サービスを提供し続け、今日では、年間旅客数が5,300万人を超える世界トップクラスのエアライングループに成長。英国SKYTRAX社のワールド・エアライン・レーティングにおいて最高評価の「5スター」を7年連続で獲得しています。また、経済産業省および東京証券取引所が選定する「攻めのIT経営銘柄」にも2年連続で選ばれ、2019年は最も「デジタル時代を先導する企業」として東証企業で1社のみ選定される「DXグランプリ」も受賞し、IT・デジタルへの先端的な取り組みにも定評があります。「オープンイノベーションとICTの活用」を経営戦略の柱の一つに掲げる同社は、社内に蓄積された膨大なデータからより多くの価値を創造するため、クラウドベースのデータ分析基盤を構築しました。2014年、10人ほどの小編成で立ち上がったプロジェクトチームは実証実験を繰り返しながら、BIツールの導入、データベースの再構築、データ分散処理環境や機械学習エンジンの組み込みを経て、2018年、このプラットフォームを本格稼働させました。現在は、経営層を含む国内外の営業・マーケティング部門がこの仕組みを使って市場分析を行い、マーケティング戦略や各種施策の意思決定に活用しています。「クラウドへの基盤構築は手探りの部分が数多くありましたが、迷走せずに進めたのはISIDが事業部横断体制で支援してくれたおかげです」とITサービス推進部データ戦略チームリーダーの筆島一氏は話しています。
激変する市場、読めない顧客行動

「人の判断のみに頼るのではなく、データ中心で統計学的に判断できるような仕組みがほしかったのです」。そう話すのは、全日本空輸株式会社(ANA)ITサービス推進部でデータ戦略チームを率いる筆島一氏。同氏の部隊は、ANAのデータ分析基盤の開発運用含む全体管理を担っています。
他の産業同様、エアライン業界でもインターネットやスマートデバイスの普及により顧客行動が急速に変化しており、従来のやり方ではそのスピードについていくのが難しくなっていました。「従来の実績に基づく分析だけでは、どうしても過去の経験値と照らし合わせて結論を導き出そうとしてしまいます。しかし、市場では日々新しいことが起きている。経験値に囚われず、データから市場の動きを読む仕組みが必要だったのです」と筆島氏は振り返ります。
海外の競合エアラインはそうしたデジタル武装を進めており、グローバルな市場競争を勝ち抜いていくためにも、新しいデータ分析基盤の構築は喫緊の課題でした。
とにかくやってみる、組み換えや拡張を見据えた「クラウド」という選択肢
クラウドへの基盤構築は手探りの部分が数多くありましたが、迷走せずに進めたのはISIDが全社体制で支援してくれたおかげです。
筆島 一氏

2014年、技術パートナーとして参画していたISIDからの提案によりクラウドの利用を検討しはじめます。オンプレミス環境にある社内システムは、開発を繰り返すうちに複雑化し、管理の手間とコストが膨らんでいた一方で、クラウドの技術は長足の進歩を遂げており、かつて大きな予算を必要としたテクノロジーやサービスが手頃な費用で使えるようになっていました。
「オンプレミスで新たなシステムを構築してしまうと後戻りがききません。しかし、クラウドであれば柔軟な組み替えや拡張が可能です。正直なところ未知な領域でしたが、ISIDの全面的サポートも期待できたので、とにかくやってみることにしました」と筆島氏は話します。事業の中核となるシステムのデータをクラウド上に展開するというのは、当時業界でも非常に野心的な試みでした。
綿密な検討の結果、プロジェクトチームは当時続々と新サービスを発表し業界の注目を集めていたAWS (アマゾンウェブサービス)の採用を決め、まず既存データをAWS環境に連携させ、本格運用に向けて小規模な実証実験を試みはじめます。
増え続けるデータ、関連づける仕組み
また、筆島氏らはデータの格納方法についても再検討を加えました。「データの持ち方を従来の1層構造から3層構造に組み換えました」と同氏は話します。「増え続けていくデータを自在に加工できるようにしておかなければ、今後、対処に窮してしまいます。そのためCold(ローデータ)、Warm(サマリデータ)、Hot(分析用データ)の3層に分け、加工や変更にも柔軟に対応できるようにしました」。
「もうひとつ重要なのが、データの可視化です」と続けます。「数値データから価値を導き出すにはデータをさまざまな角度で切り取って視覚化することが不可欠です。そこで使い勝手のいいBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを選んで、ダッシュボード形式でいろいろな見せ方を検討しました。同じ販売データでも路線や便だけでなく、顧客属性や地域、競合他社の実績など、切り口を変えて互いに関連づけてみると、これまで見えなかったものが見えてきます」。

機械学習の導入、需要予測に成果
今後進めていくデジタル革新の取り組みにおいても、技術展開のノウハウやベストプラクティスに長けたISIDは欠かせないパートナーです。
筆島 一氏

2018年、筆島氏らのチームは既存の社内データ分析基盤をクラウド上に完全統合し、経営層や海外拠点を含む営業・マーケティング部隊に向けて、今回のプラットフォームを本格展開します。
最終的にそこには機械学習エンジンとデータの分散処理環境も組み込まれ、これまで難しかった長期の需要予測も高い精度で行えるようになりました。
「運用開始からまだ一年経っていませんが、今回の仕組みはすでに営業やマーケティング部門になくてはならないものとなっています」と筆島氏は成果を語ります。「経営層をふくめ、意思決定はデータに基づいて行う、という文化も浸透しはじめています」。
こうした結果を生むうえで大きな力となったのがISIDのサポートだと筆島氏は強調します。「クラウドベースでビッグデータの解析基盤を構築するにはどんな技術が必要なのか、リスクを回避しながら徐々に拡大展開していくにはどういう手順がいいのか、ノウハウやベストプラクティスを数多く提供してもらいました。今後進めていくデジタル変革の取り組みにおいても、ISIDは欠かせないパートナーです」。
2019年6月更新

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※記載情報は取材時(2019年2月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。
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