手軽に導入可能となった「DigSports」の新バージョンは、新たな街づくり、人の健康づくりの種となる
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2023年6月3日、品川インターシティ・品川グランドコモンズで開催された「みんなの品川スポーツFES 2023」で、AIが適性のあるスポーツを提案するシステム「DigSports」の新バージョンが初お披露目されました。ISID本社のある品川エリアで開催された同イベントに出展するきっかけとなったのは、テクノロジーを通して“品川の賑わいづくり”を発展させたいという企業同士の協働から。専用機材が不要になり、一般的なノートパソコン1台から導入できるように刷新したDigSportsの新バージョンは、お子さまが行列する人気のコンテンツとなりました。その陰には、難しいテクノロジーを手触りで実感できるシステムへと昇華させたアーキテクチャとUI/UXの刷新がありました。新DigSports改良の裏側と、品川で街づくりを行う企業が目論む、「テクノロジーの発信地・品川」という街づくりの両面からレポートします。
ワーカーも住民も誇れる街・品川のエリアブランディング
ISID本社のある品川は、交通の利便性を生かして立ち並ぶオフィスビルを抜ければ、高層マンションや閑静な住宅街が広がる“職と住”の両立性が高いエリアです。そのエリアブランディングを手掛けるのが日鉄興和不動産株式会社賃貸事業本部・金谷貴央氏。「みんなの品川スポーツFES」の仕掛け人でもあります。
同社では品川エリアのブランディングを、「人が集まり活気のある街」「そこにいることが他人に誇れる街」「イノベーションを生むネットワークが築ける街」「企業の質を高められる街」の4軸を掲げて展開しています。
「企業の質を高めるテーマで大切にしているのが健康経営。品川ワーカーのための健康促進イベント『KARADA RE-BOOT WEEK』を開催し今年で4年目を迎えます。その兄弟イベントとして今年から開催したスポーツイベントが『みんなの品川スポーツFES』です。品川という街の特性を鑑みたとき、オフィスで働く人だけではなく、地域の皆さんと何かご一緒できないかと考え、昨年に地元のプロバスケットボールチームと連携して大会誘致した3x3の公式戦がベースとなっています。品川エリアにお住まいの方・働く方が、品川で暮らす・働くことに対してアイデンティティを感じてもらうことが狙いです」(金谷氏)
今年から企業ブースを設けるなど、品川エリアの企業同士のコラボレーションにも関心があると続けます。新DigSportsは、こちらの企業ブースに出展しました。
次世代育成に向けてDigSportsに可能性を感じた
最初にDigSportsを知ったとき、非常に可能性のあるコンテンツだと感じたと話す金谷氏。「我々が取り組んでいる軸のひとつに企業の質を高められる街があるのですが、より良い企業活動の継続には次世代育成は欠かせません。品川エリアには児童数を多く抱えるマンモス小学校があります。近隣住民に向けて、テクノロジーを駆使して楽しく“気づき”を与えるDigSportsのアプローチが非常に面白いと感じました」(金谷氏)
イベント当日、多くのお子さまが体験していたのを目にして、週末のコンテンツとして出展していただけたのは非常に大きかったと金谷氏は振り返ります。
「当イベントは住民の皆さんが“シビックプライド※1”を築くきっかけになればと企画しています。その熱量をもった方々からの好反応は得られたと思っています。中でもDigSportsはファミリー層の滞在時間が長いコンテンツの一つでした。現在、地元のスポーツチームと子どものスポーツ支援も計画しているので、DigSportsとも協働できたら面白いですね。我々はテクノロジーやR&Dに取り組んでいるわけではなく、社会実装をお手伝いする立場。だからこそ、品川に集まる多様なテクノロジーを持つ企業さんとオープンイノベーションを起こしていきたい。ISIDには、企業同士のコラボレーションを育む核のような存在になっていただければ嬉しいです」
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※1シビックプライド:都市や地域に関係する人々が、地域に対して抱く「誇り」や「愛着」のこと
アーキテクチャを画像処理技術に刷新し利用シーンを拡大
これまでのDigSportsは、体験者が「垂直飛び」や「50m走」「ボール投げ」などを行うと、キネクト技術(Kinect®※2)を用いた深度センサーが人の動きを読み取り、AIによる独自分析で74種目から向いているスポーツを判定していました。自治体での導入や企業の健康イベントへの出展が進むなか、専任スタッフが常駐しない常設での利用や、屋外でも手軽に実施できる機材の軽量化といった新たなニーズが生まれてきました。
改良に携わったISID Xイノベーション本部 スマートソサエティセンターの飯田倫崇は次のように話します。「各自治体における健康寿命延伸の高まりや、子どもたちの運動能力の向上など、社会課題にテクノロジーでアプローチできるDigSportsの利用機会が増えています。今回の改良で、操作する技術者がいなくても、専用の機材がなくても、誰でも簡単に利用できるようになりました。モーションキャプチャ機能(画像処理技術)を中心にアーキテクチャを刷新。AIによる画像認識で人体の関節を推定し、関節の傾きや動いた距離から運動能力を測定します。これにより深度センサーが不要になり、Webカメラ付きノートパソコンさえあれば手軽に導入できるようになりました。また、屋外での測定の精度も上がり、多様なイベントニーズにも応えられます」。一カ所にDigSportsを常設し、複数拠点をオンラインでつないで体験することも可能になり、ますます活用の幅が広がりました。
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※2Kinect®は、米国Microsoft Corporation及びまたはその関連会社の登録商標または商標です。
システムを住民の手に。直感的なUXを完成させたデザインチームの手腕
飯田が技術革新を進める中、操作性を高めて人々を取り込む魅力的なコンテンツに仕上げていったのがISID Xイノベーション本部 UXデザインセンターの高見祐介を中心としたデザインチームです。自分の身体能力を正しく理解して、未体験のスポーツとの出会いによって自信を育んでもらうのがDigSportsの狙い。ロゴは、まだ見つけられていないスポーツを星に見立てて表現しています。「g」と「s」で地面をイメージし、地面を掘って宝石のような星を見つけ出してほしいというメッセージを込めました。
「DigSportsを体験してみて、ただ身体能力測定をするだけでなく、参加する“楽しさ”を実感しました。その“ワクワク感”を伝えるためにロゴや色味のUI調整に加えて、測定スタート前の説明過程にゲームを始める前のような高揚感あるストーリーを設けることで、世界観を作りあげました。同時に子どもが直感的に操作できるように、タッチして進行できるUXを取り入れ、触りやすさと楽しさを追求しました」(高見)
イベント当日、子どもたちが遊びながら体験する姿を見て、SIerのデザインチームとして、人の手に届けるUI/UXデザインの影響力を実感したと振り返ります。
「デザインは、人と技術をつなぐ接着剤。私たちは最新のテクノロジーを活用して、ユーザー目線で使いやすくする橋渡しの存在です。DigSportsはBtoCですが、ISIDはBtoBのソリューションがメイン。クライアントだけでなく、その先にいるエンドユーザーに素晴らしいプロダクトを届けるため、難しいシステムや言語、操作を“翻訳”していくのが、SIerに属するデザイナーの意義だと感じています」(デザインチーム)
日本のテクノロジーの玄関口・品川としての今後
ISID本社のある品川は、地域住民の方々や周辺に拠点を置く企業との交流・協働によって、数多くのイベントやサービスを生み出している地域です。ISIDも地元の街づくり協議会に参加してテクノロジーの観点からイベントのサポートを行うなど、街づくりに参画してきました(過去記事)。
前述の日鉄興和不動産の金谷氏は「新幹線と羽田へのアクセスの良さを併せ持つ品川は、東京はもちろん、日本の玄関口。品川に行けばイノベーションが生まれ、面白い体験ができるなど、“日本の最新技術に出会える街・品川”というイメージを定着させたいですね。そのためには品川で働く人の健康を支え、人種や性別、年齢、宗教を超えて生き生きと働ける国際都市として位置づけ、ARやVRを使った多言語対応などにも取り組みたいです。健康系のDigSportsのようなサービスはもちろん、都市OSを実装してインフラ整備もできるISIDのようなソリューションを持った企業と一緒に都市機能のUX化を叶えていきたい」と語ります。
ISIDでは人の健康をテクノロジーで支えるDigSportsをきっかけに、品川エリアの人づくりや街づくりに広く貢献するとともに、変化する社会を見据えて、土地ごとのソリューションを提供し続けてまいります。
関連ソリューション
運動能力をセンサーで自動測定し、一人ひとりの長所に応じて、どのスポーツに向いているかをAIが提案するシステムです。
2023年9月更新