エンタープライズアプリケーションでお客様に感動を
ISIDが2018年10月末にリリースしたエンタープライズアプリケーションの開発基盤「aiuola(アイウォーラ)」。この開発は、デジタルビジネス時代に必要とされる企業向け業務システムの在り方を問う、私たちの新たなチャレンジです。開発コンセプトにビジネスの環境変化に呼応する柔軟性と俊敏性の実現・グループ経営に求められる高度な業務要件への対応・すぐれたユーザー体験の創出を掲げ、従来のエンタープライズシステム開発手法とは一線を画す新しい設計思想を採用しています。開発メンバーである藤川健二と杉山拓也が、プロジェクトの歩みを振り返るとともに、aiuola開発に込めた想い、aiuolaの可能性、そして今後の展望を語ります。
「企業アプリは使いにくいのが当たり前」という固定観念を打ち破りたい
エンタープライズアプリケーションとは、企業に勤める従業員が企業活動をおこなう上で日々活用する情報システムです。主に会計、経営管理、人事といった企業の基幹業務を担うシステムであるため、有するべき機能は多岐にわたります。さらに、安定性や信頼性、処理能力、障害時への対策なども不可欠、技術的にも非常に難易度の高いシステムです。
藤川:ISIDでは、これまでにもさまざまなエンタープライズアプリケーションをソリューションとして提供してきました。その過程で我々が痛感したのは、世にある企業向けの情報システムは、複雑で使いづらいことでした。
杉山:非常に大規模なうえ、個別企業からの要求への適合力も求められます。だから、これまでのエンタープライズアプリケーションは機能性ありきで、利便性という観点での品質をないがしろにしてきたんだと思います。 我々のお客様も長い間、使いづらい業務システムを使い続けていたこともあり、「最初は使いにくく感じても、そのうち慣れる」「業務システムが使いづらいのは仕方がない」とどこかであきらめていたんですね。
藤川:せっかく導入した情報システムが企業の課題解決につながっていない、利便性が低く生産性の妨げとなっている、何より、愛着を持っていただけていない、こういう状況を何とかしたいということはずっと考えてました。海外パッケージが使いづらくて既存機能をアドオン機能で置き換えるようなことはエンタープライズアプリケーションとしては健全な状況とは言えません。ISIDのこれまでのコンサルテーション経験とaiuolaチームの技術力を掛け合わせればこの状況を打破できるのではと考え、「いつかは自社製品で」と開発のタイミングをずっと見計らっていたところでした。そんな折り、ワールドワイドで著名なパッケージソフトウェアが続々と刷新を計画しており、このタイミングが一つのターニングポイントになるだろうと考えました。そこから、お客様にとって本当に価値のあるエンタープライズアプリケーション、そしてその開発を加速するための開発基盤を自分たちの手で作ろうと動き始めました。
彩り豊かな花が咲き乱れる花壇のように
こうして、2016年にaiuola開発プロジェクトが始動。2018年のリリースに向け、「つかいやすい」「つくりやすい」「つながる」をテーマに掲げ、開発が進められていきました。
藤川: 3つのテーマのうち一番大事にしたのは、ユーザーが「つかいやすい」こと。企業向けでありながら、まるでコンシューマーアプリケーションのようなシンプルな使いやすさを提供したいと考えました。お客様は日頃からPCやスマホで便利なサービスを利用しています。その使いやすさを実現するエンタープライズアプリケーションが提供できればお客様に感動を与えられるはず。テクノロジーが日々進化し続ける今、開発基盤も作って終わりではなく、スピーディーかつ柔軟にトレンドを取り入れられることが必要です。モックアップ、プロトタイピングを駆使したアジャイル開発手法を採用し、常に新たな技術を取り入れ、なおかつ高いユーザビリティをその都度検討できるようにしました。
杉山:私たちが開発しているのは、あくまでもエンタープライズアプリケーションを開発する基盤なのですが、その基盤で開発されたアプリケーションを使用する人が“マニュアルがなくても使える”ことを念頭に置いて開発を進めています。例えば、入力サジェスト、認証、様々な通知/リマインダー等、すべてのアプリケーションに共通して求められる機能はあらかじめコンポーネント化しており、その機能もとことん使いやすさにこだわりました。
藤川:次に、こだわったのは「つながりやすさ」。aiuolaはすべてを自前で作らず、すでにある優れた技術やサービスの積極的な活用を設計思想としています。オープンソースの活用はもちろんのこと、ビジネスチャットやスケジューラーなどの機能はAPIエコノミーを積極的に活用しています。さらに我々のお客様は自社で多くのシステムを保有していることが多い。その周辺システムとも連携が容易にできるよう設計されているのもポイントです。
そして最後は開発者にとって「つくりやすい」こと。繰り返しになりますが、エンタープライズアプリケーションは一つひとつの機能が本当に複雑です。アプリケーション開発者には、実現したい機能に応じてこのように実現するべきというベストプラクティスを提供できるよう様々な機能をパターン化しています。さらにはグループ経営のためのマルチカンパニー対応や、グローバル展開をするお客様向けに多言語・複数タイムゾーン対応等も開発基盤として提供しているため、このような共通機能はアプリケーション毎に開発する必要はありません。ロジックのカスタマイズ機能もあらかじめ備えてあり、お客様の個別要件にも柔軟に対応できるようになっています。
杉山:エンタープライズアプリケーションの開発生産性を高め、さらに我々のお客様に多い、グローバル展開・グループ経営をしている企業で求められる複雑で高度な業務要件への対応も可能にしているということです。
藤川:そして開発基盤のブランド名はaiuolaとしました。aiuolaとは、イタリア語で花壇を意味します。彩り豊かな美しい「花=アプリケーション」を、「花壇=プラットフォーム」に咲かせて、課題を抱える日本の企業に届けたいという気持ちを表しました。
マニュアルがなくても直感的に使える喜び
aiuolaは、2018年10月にリリース。そして、ほぼ同時に第一弾のアプリケーションである経費精算システム「Ci*X Expense(サイクロス エクスペンス)」が最初の企業に導入されました。
杉山:aiuola上の最初のアプリケーションとなった、経費精算システム「Ci*X Expense(サイクロス エクスペンス)」と自動仕訳システム「Ci*X Journalizer(サイクロス ジャーナライザ)」も同時期にプロジェクトを立ち上げ、開発を行いました。アプリケーションとしての一体感をプロダクトに反映させたかったので、aiuolaの開発メンバーもCi*X開発チームに合流し、共に開発するスタイルを取りました。
aiuolaやCi*Xの開発にはユーザーが行っている業務の複雑で多岐にわたる課題に対して、最も的確に解決を図るための思考法であるデザイン思考のアプローチを取り入れました。さまざまな業種の企業を訪ねて、経理のご担当者にインタビューしたり、実際に業務を見せていただいたり。そして、この結果を分析してプロトタイプを作成し、評価するというサイクルをひたすら繰り返すといった、アジャイル開発を行いました。
藤川:プロトタイプの評価には、チームのメンバーが実際にユーザーや開発者の立場になって使ってみるというロールプレイも実施しています。これにより、「導入する企業側は、こんなに煩雑な作業が発生してしまう」「アプリケーションの開発者は、この部分に作りづらさを感じてしまう」といった問題点を具体的にあぶりだしていきました。
杉山:また、開発中から意識していたのは、できる限り早くaiuola上で開発したアプリケーションを市場に出すこと。まずは、お客様に使っていただいて、しっかりと評価をいただくことが大切だと考えていました。お客様に実際に使用いただくのはaiuolaではなく、Ci*Xです。その評価をいただくことで、Ci*Xだけでなく、aiuolaの開発にも活かしていける。Ci*Xの本稼働は期待もありましたが、緊張もしましたね。
藤川:実際にCi*X Expenseの本稼働を迎えたお客様から、分かりやすさ、操作性のよさを評価いただいています。「マニュアルがなくても使えるエンタープライズアプリケーションに、初めて出会った」「導入後、社員からの問い合わせがまったくなくなった」というお褒めの言葉をいただいています。
杉山:お客様からの声も反映し、aiuola・Ci*Xは今後さらにバージョンアップしていく予定です。2019年8月からはモバイル端末でも簡単に経費精算ができるようになり、ユーザーの生産性はさらに高まっていくと思います。
aiuolaが生み出す次なるソリューションとは
お客様や開発者から喜びの声で迎え入れられたaiuola。今後は、次なる花を咲かせるべく、着々と準備が進んでいるという。
藤川:現在、注力しているのは、Ci*Xシリーズの第2弾となる会計業務領域の新アプリケーションの開発です。また、「aiuola next」というプロジェクトも立ち上げ、Ci*Xシリーズとは違う領域でも、花壇に美しい花を咲かせたいと構想しています。
杉山:「分かりやすくて使いやすい」という点においては、今回のリリースでは一定の評価を得ることができました。しかし、私たちの目標は「エンタープライズ業務に感動を!」です。更なる高見にチャレンジしたいですね。煩雑な社内独自の仕組みを簡単にaiuola上で開発できたり、エンタープライズシステムを利用するユーザーがまだ気づいていないような部分で、新しい価値をもたらすような仕掛けを考えています。
藤川:Ci*X Expenseでお客様から高い評価をいただいた経費精算業務ですが、企業に勤める従業員とって煩わしいと感じる業務は経費精算だけには留まりません。避けては通れないが非生産的な業務は可能な限り手間なく簡単に実現できるようにしたい。 例えば、現在でも決裁をするために紙の文書を回覧する企業は多々あると思います。このとき、ともすると単にハンコを押すだけの作業になりがちですが、本来は、コンテンツの妥当性にフォーカスを当てるべき。さらにはシステムが確認すべき項目を能動的に教えてくれるようになると、業務効率は飛躍的に上がります。単に電子化するだけのIT投資から顧客の業務を積極的に支援する。このような形がこれから求められるエンタープライズアプリケーションなんだと思います。
また、そういう業務機能を我々のお客様が自分たち自身で開発できるようなプラットフォームにまで進化させることも考えています。
杉山:aiuolaやaiuolaが届けるエンタープライズアプリケーションによってお客様の業務における時間やお金のかけ方も変わってくると思います。お客様が本来やりたかったことに、より集中できるような環境の創出。そして単に業務効率を上げるだけでなく、その業務へのモチベーションやエンゲージメントを上げるところまで考えてaiuolaを開発していきたいです。
藤川:これからもaiuolaは進化していきます。どうぞご期待ください。
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※記載情報は取材時(2019年7月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。
2019年10月更新