人的資本経営時代における人・組織のあり方を考える 第1回人・組織のあり方を考える
- 人事
近年、開示義務化や投資家からの要請を背景に、大企業を中心とした「人的資本経営」の取り組みが加速しています。また、人的資本の情報開示は日本でもISO30414認証※1取得企業が続々と増える状況となっています。
本コラムをご覧になっている方の中にも、現在取り組み中の企業にお勤めの方もいらっしゃるのではないでしょうか?遠くない未来、人材への投資とその成否が、企業の評価を直接的に左右する時代になってくると考えられます。しかしながら、何から取り組むべきか、どのように取り組めばよいのかにお悩みの企業がまだまだ多いのが実情です。
我々は、企業が人的資本経営の上記のような取り組みを積極的に進めるには「自律調和型組織」を実現することが効果的であると考えています。
本コラムでは、「自律調和型組織」の考え方とそのコンサルティングサービスについて、連載形式でご紹介していきます。
今回は第1弾として、「人・組織のあり方を考える」というテーマでお話しします 。
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※1ISO30414は、2018年12月に国際標準化機構(ISO)が発表した、人的資本の情報開示のためのガイドラインを指す 。
人的資本経営とは
人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。
近年は人的資本情報を開示する動きが加速しています。例えば上場企業が開示する有価証券報告書にも一部記載が義務付けられています。(図1)
内閣官房が公表した人的資本可視化指針でも開示を推奨されています(図2)。
また、当然ながら投資家・就活生は人的資本への投資状況を含めて企業を評価しますので、採用強化や企業イメージ向上のためにも取り組みは必須といえます。
企業における課題
現状は、人的資本の情報開示の流れに合わせ、まずは社内情報を収集・整理して開示にこぎつけたという段階にとどまっている企業が多い印象です。しかし、ただ開示するだけでは人的資本経営を実践しているとは言えません。開示は単なるきっかけでしかなく、人材開発やエンゲージメントの向上など様々な活動を実行し、人的資本を高めていくことこそが人的資本経営に必要不可欠なのです。
さらにその高まっていく価値を外部へ開示し企業魅力をアピールすることで企業価値が向上していくのです。
人的資本経営を推進するためのポイント
人的資本経営を推し進めるためには、組織価値・顧客価値・経済価値を循環させることが必要だと考えています。多くの企業において、顧客価値や経済価値については、日々価値を高めるための活動を進められていると思います。一方で、組織価値は前者より存在感が薄いように感じられますが、非常に重要な要素になります。
電通総研はこの組織価値をいかに高めるか、という点に着目してコンサルティングサービスを構築しています。
「自律調和型組織」とは
我々は、組織価値を高めるためには「自律調和型組織」を実現することが重要になると考えています。
自律調和型組織とは、意思決定において全体最適と部分最適を適切に使い分けつつ、部門間が密に連携しながら成長していく組織を意味しています。
つまり、自律調和型組織を実現するためには以下の2点がポイントになります。
① 全体最適と部分最適の適切な使い分け
② 部門間が密に連携している状態の構築
全体最適と部分最適の適切な使い分け
組織として何か意思決定を行う際、「何故このレベルの決定にここまで承認が必要なんだ」と思ったことがありませんか?
逆に「この内容を決定するのに、自分の承認だけでいいのか?」と疑問に思ったこともないでしょうか?
全体最適の考え方は、視座の高いところから決定ができることがメリットとして挙げられます。人材に関連する観点の場合、例えば公平性の担保がしやすくなります。
一方、ステークホルダーが増えるためどうしても意思決定に時間を要します。例えば他社との競合提案などで素早い意思決定が必要な場合には不向きと言えるでしょう。同様に、部分最適においても素早い意思決定は実現できるものの、部署間での連携が不十分であると、部署ごとに異なる仕組みなどが出来上がることで不公平感が生まれるなどのメリット・デメリットが存在し、それらをいかに適切に選択するかが組織価値を高めることにつながると考えています。
部門間が密に連携している状態の構築
我々がご支援させていただいている企業様において、部門と部門の間に壁が存在し、情報やリソースなどが共有されていない状況をよく目にします。
俗に「サイロ型」の問題と呼ばれており、VUCAの時代において隣の部門がどんな取り組みをしているのかが分からない、俯瞰してみた時にリソース効率が悪いなどの事態が発生することが、今まで以上に大きな問題になり得ると考えています。逆に部門間が密に連携されており、他部門の良い取り組みを共有して全社的に展開したり、社として効率の良いリソース配置が実現できる状態になることで企業価値の向上に繋げることができると考えています。そのため部門間が密に連携できている状態を目指したいと考えています。
具体的なユースケースとソリューション概要
当社では、個別部門におけるタレントマネジメントの仕組み構築や個別部門での好事例を反映した全社人事での人材ダッシュボード構築、全社エンゲージメントサーベイの結果から個別部門でのエンゲージメント向上施策を実行など、「自律調和型組織」を実現するためのコンサルティングサービスを多数手がけております。
今年電通総研コンサルティング本部として活動をスタートするにあたり、これまでの実績や方法論などを体系化し、人的資本経営時代に合わせた統合コンサルティングサービスとして整理いたしました。
次回以降のコラムにて、コンサルティングサービスの詳細は次回以降にお伝えいたしますが、人的資本経営の実践に向けたお悩みをお持ちの方、ぜひ下記よりご相談ください。
森 隆コンサルティング本部 ビジネスデザイン第1ユニット
コンサルティング1部 グループマネージャー
高居 宏彰コンサルティング本部 ビジネスデザイン第1ユニット
コンサルティング3部 マネージャー
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