システム化で1万時間を創出。リース業務を支える新基盤「DAISY」が、組織の意識変革を導く

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いすゞグループ唯一のリース会社として、商用車のライフサイクルを支えるいすゞリーシングサービス株式会社(以下「ILS」)。同社ではオートリース事業の拡大に伴い、表計算ソフトなどで個別に管理していた契約満了業務の作業負荷の増大が課題となっていました。コロナ禍を経てより既存顧客の維持が重要視されるなか、同社は業務プロセスの抜本的な改革を決断。短期間でのシステム化を目指すパートナーとして、パッケージ製品ではなく独自のシステム開発を提案した電通総研を選定しました。
独自の業務要件を汲み取りながら、あるべき姿をともに模索する共創型のプロジェクトにより、わずか半年でリース業務を支援する新システム「DAISY(デイジー)」をリリース。これにより、個別管理ファイルの更新やアナログな連絡業務が撤廃され、年間約1万時間の業務時間削減を実現しました。さらに、新システムの直感的な操作性と安定性は現場社員への浸透を促進し、主体的なマニュアル作成や、データ活用への意識変革をもたらしています。単なる効率化を超え、攻めの提案ができる組織へと変貌を遂げた同社のDXの軌跡を追います。

既存顧客維持の重要性が高まるなか、個別管理と属人化が足かせに

いすゞグループ唯一のリース会社として、トラックやバスなど商用車の導入から整備、満了後の対応までを一気通貫で支援するILS。オートリース事業が順調に拡大を続ける一方で、現場の業務負荷は限界に達していました。特に課題となっていたのが、契約期間を終えた車両の手続きを行う「満了業務」です。
営業本部でこのオペレーション業務を担っていた角田氏は、当時の状況をこう振り返ります。
「当初は1つのファイルで管理できていたのですが、取り扱い台数の増加に伴い対応が追いつかず、苦肉の策として期や担当者ごとにファイルを分割することに。その結果、データが散在し、どれが最新かわからない状態に陥っていました。繁忙期には、常に10個以上のウィンドウを開いて作業をしなければならないこともありました。共有しないと誰かが開いていると更新できませんし、共有するとファイルが壊れてしまうことも日常茶飯事。前日のバックアップから復旧作業を行う必要があるなど、非常に不安定な運用でした」(角田氏)
また、既存の基幹システムは重厚なパッケージ製品であり、現場の細かな要望に合わせて改修するには多大な費用と時間を要します。そのため、最新の商談状況などの情報は各現場が持っている管理ファイルや個人のメモ、記憶の中にしかなく、他部署との連携は電話やメールに頼らざるを得ませんでした。
当時、コロナ禍の影響で新車の供給が滞り、オートリース業界全体が「既存顧客への提供価値をいかに高めるか」に取り組み始めた時期でもありました。取締役であるソリューション開発本部長 奥村氏は、経営視点での危機感を語ります。
「お客さまとの関係を継続するためには、満了のタイミングを逃さず最適な提案をすることが不可欠です。しかし、その起点となる管理業務が属人化した個別管理では、攻めの提案どころではありません。社長からも『早急にシステム化せよ』という号令がかかり、待ったなしの状況でした」(奥村氏)

決め手は「製品ありき」ではない提案力。独自スクラッチ開発で描く、業務のあるべき姿

我々の目的は、パッケージの導入ではなく、顧客情報を一元管理できるプラットフォームをつくること。電通総研だけが、製品ありきではなく当社のあるべき姿を実現する提案をしてくれました。

いすゞリーシングサービス株式会社
取締役 ソリューション開発本部長 ソリューション開発部長
奥村 直士氏

プロジェクトの発足にあたり、ILSは半年での立ち上げというタイトな期限を設けましたが、同社が選んだのは、当時はまだ取引実績のなかった電通総研によるスクラッチ開発の提案でした。奥村氏は選定の理由をこう語ります。
「正直なところ、満了業務のことだけを考えれば、既存のパッケージ製品を入れるのが一番早かったはずです。しかし、我々が本当に実現したかったのは、商談を行う『期初』から、メンテナンスを実施する『期中』、そして『満了』に至るまで、お客様の情報を一元的に把握できるプラットフォームを作ることでした。一般的にシステム会社は自社製品を前提とした提案が多いなかで、電通総研は、我々の描くあるべき姿を汲み取り、それを最大限実現するためのシステムを提案してくれました。その提案力と熱意が決め手となりました」(奥村氏)
システム担当の島津氏も、その技術的な柔軟性を高く評価しています。
「私は今までパッケージ導入の経験しかなかったので、サーバーレスやマイクロ開発基盤などの最新技術を駆使し、アジャイル開発で柔軟に拡張できる電通総研の提案は衝撃的でした。『これなら、我々のやりたいことが実現できる』と直感しました」(島津氏)

対等な議論とスピーディーな並走が手戻りを防ぐ

ただ要望どおりに作るのではなく、『その仕様では業務と矛盾する』と先回りして指摘してくれました。対等なパートナーとして意見を交わせたことが、プロジェクト成功の最大の要因だと思います。

いすゞリーシングサービス株式会社
ソリューション開発本部 基幹刷新PRJ室 室長 / ソリューション開発部 ソリューション開発課 課長
若山 陽志氏

開発は、短期間かつフルスクラッチという高難度なプロジェクトとなりました。確実な遂行が求められるなかで奏功したのは、電通総研の御用聞きにならない姿勢と、密なコミュニケーションでした。
期初業務の要件定義から参画した業務改革推進担当の若山氏は、プロジェクトの進め方をこう評価します。
「システム開発では、クライアントの要望どおりに作った結果、現場では使いものにならないという失敗がよくあります。しかし電通総研のチームは違いました。『ILSの業務フローに当てはめると、この仕様では矛盾が生じます』『手戻りになりそうです』と、常に先回りして指摘してくれたのです。対等なパートナーとして意見を交わせたことが、結果としてクリティカルな問題を未然に防ぐことにつながりました」(若山氏)
現場をリードした角田氏も、そのスピード感に助けられたといいます。
「私はシステム開発が未経験で手探り状態でしたが、週2回の定例会に加え、チャットツールでは質問に対して即座にレスポンスが返ってくる環境が整っていました。インフラ周りの設計で認識の齟齬があった際もすぐに軌道修正してくれましたし、未経験の私たちが迷わずに進めたのは、電通総研が常に並走してくれたからです」(角田氏)

新システムが現場に定着、作業時間が低減し「攻め」のチームへ

一から作り上げた『DAISY』は、現場も皆、愛着を持っていて、マニュアルを主体的に作るほど。手作業の恐怖から解放され、前向きな業務に取り組めるようになりました。

いすゞリーシングサービス株式会社
営業本部 オペレーション推進部 業務推進一課 課長
角田 美紀氏

2023年夏、ついに新システム「DAISY」が稼働開始しました。社内にあった他のシステム名にちなんで花の名前を採用し、花言葉の「希望」に想いを託して角田氏が名付けたものです。
導入効果は劇的でした。共有ファイルの破損に怯える時間はゼロになり、他部署との連携もシステム上で完結。試算では、年間約1万時間もの業務時間が削減されています。導入当時2万台だった満了台数は現在3万台を超えていますが、現場は人員をほぼ増やさずにこの増加分をカバーできています。
さらに、数字以上の成果は現場の意識変革にあります。空いた時間を活用して、営業部門へのサポート強化や再リース率向上施策など、付加価値の高い業務に取り組めるようになり、組織全体が攻めのチームへと進化を遂げました。
「最初はシステムが変わることに戸惑いもありましたが、自分たちの意見を取り入れて一から作り上げたシステムには、特別な感情があります。現場のメンバーが主体的に操作マニュアルを作成するほど、皆がDAISYに愛着を持っています。私にとっては、苦労して生み出した子どものような存在ですね」(角田氏)

データドリブンな文化が、いすゞグループ全体の信頼を育てる

リリース後の不具合が圧倒的に少なく、安定稼働しています。サーバーレスなど最新技術への挑戦も含め、電通総研の開発プロセスの確かさは本物だと感じました。

いすゞリーシングサービス株式会社
ソリューション開発本部 基幹刷新PRJ室 マネージャー
島津 尚矢氏

満了業務から始まったDAISYプロジェクトは、その後、商談管理などの期初業務へと領域を拡張。さらに今後は、グループの販売会社にも情報を共有し、シームレスな連携基盤となることを見据えています。
また、システム内に蓄積されたデータをBIツールと連携させる取り組みも進んでいます。これにより、これまでは見えにくかった商談プロセスや成約率などのデータを可視化・分析できるようになり、経験や勘だけでなく、客観的な数値に基づいた戦略立案が可能になりました。
奥村氏は今後の展望をこう語ります。
「メンテナンスの契約加入率も向上しており、システム導入の成果が経営数字としても表れ始めています。営業やサービス部門もDAISYのデータを参照するようになり、全社的にデータを見て動く文化が根付きつつあります。販売会社の方々にとっても使いやすい仕組みを提供することで、『いすゞのリースは便利だ』と信頼していただけるプラットフォームに育てていきたいです」(奥村氏)
リリース後のトラブルも少なく、安定稼働を続けるDAISY。手作業の山に埋もれていた現場から希望が芽吹き、ILSのビジネスを支える大樹へと成長を続けています。

会社名:
いすゞリーシングサービス株式会社
所在地:
神奈川県横浜市西区高島一丁目2番5号 横濱ゲートタワー5階
設立:
2013年4月
資本金:
143億7,500万円
事業内容:
商用車リース、商用車メンテナンス受託サービス等
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