Salesforce Marketing Cloudの導入で実現する顧客体験の向上
配信担当者のマインドも“お客さま起点”の仮説検証型へと進化
- 顧客接点改革
株式会社セブン・カードサービス マーケティング統括部長 及川 光太郎氏
セブン銀行グループにおいて、クレジットカードとキャッシュレス事業を展開する株式会社セブン・カードサービス。同社はイトーヨーカドー、ヨークマート等のスーパーでお得に利用できるクレジットカード、およびセブン‐イレブン等で利用可能な電子マネー「nanaco」を手掛けています。事業の強みとなるのは、コンビニエンスストアやスーパーをはじめとしたリアル店舗との連携です。全国2万店以上におよぶ店舗を通じた顧客接点を活用し、お客さまの日常に寄り添う決済サービスを提供しています。
2025年4月から、同社は「顧客コミュニケーションのDX推進」をテーマに据えた、Salesforce Marketing Cloud(以下「SFMC」)導入プロジェクトをスタート。最終的なゴールとして、独自のアプリケーションを通じた新たな顧客接点を創出することを目指す中、第一段階として着手したのが、このSFMC導入によるメールコミュニケーションの変革です。電通総研は本プロジェクトのパートナーとして、SFMCの導入および既存システムとの連携に伴走、さらにはメール施策の運用をサポートしました。
本プロジェクトのマネージャーとして全体統括を担った、マーケティング統括部長の及川光太郎氏は、「SFMCによるメール運用開始後は、数値的な成果に加え、配信担当者の提案が“お客さまの行動”をベースとした考え方に変化する等の新たなメリットも生まれています。当社の事業は会員ビジネスなので、1人のお客さまに対して、分断させることなくどれだけ良い体験を提供できるかが重要。引き続きマーケティングを進化させ、全方位的なサービスと顧客接点をしっかり作っていきたいと考えています」と評価し、マーケティング全体のさらなる進化を見据えました。
目次
「お客さまごとに適したタイムリーな情報を届けたい」。手動の一斉配信から、1to1コミュニケーションへの変革を目指す
同社のクレジットカード利用者に向けたメールマガジン施策は、長らく手動で行われ、画一的なコンテンツを一斉配信する形式が取られてきました。「一斉配信でも、情報によって興味を持たれるお客さまは、もちろんいらっしゃいます。一方で、それ以外のお客さまにとってはノイズになってしまう点が一番の課題でした。各情報を“届けたいお客さま”に対して、ピンポイントにお送りすることが難しいというジレンマもあり、解決に向けた一つの手段として、マーケティングオートメーション(以下「MA」)の導入を決めました」。及川氏は、プロジェクト発足の背景をそう振り返ります。
グループ内における「データ環境」が整ったことも、MA導入を後押ししました。2023年のセブン銀行グループ加入後、同行とのシステム連携を前提としたデータ収集・分析環境の整備が進み、顧客データを取り扱う上でのシステム的な制約が大幅に改善。MAを利用して、お客さまと1to1コミュニケーションを取るための環境ができあがったといいます。
「クレジットカード業界はカスタマージャーニーがはっきりしており、入会後3カ月間のアクションが特に重要です」と及川氏。続けて、「運営会社としては、カード発行後できるだけ早いタイミングで初回のご利用をいただき、3カ月以内に2回目、3回目の継続利用へとつなげられることが望ましい。当社のサービスを利用されるお客さまには、イトーヨーカドーでのお得な買い物や、セブン‐イレブン利用時等に満足度の高い顧客体験を希望される方が多くいます。お客さまの利用チャネルに適した情報をタイムリーに届け、満足いただきながら継続利用をいただくことが、私たちのミッションです」と話し、クレジットカードならではのジャーニーにおける、MA活用の必要性を強調しました。
Salesforceサービスに留まらない「分析環境」への知見が、柔軟な提案を可能に
当社からの販促情報をお伝えするだけでなく、“お客さまの行動変容を促せたか”を意識するマインドへ。担当者の視点がお客さま起点に変わったことが最大の成果です。
株式会社セブン・カードサービス
マーケティング統括部長
及川光太郎氏
導入するMAの選定において、特に重視されたのは「拡張性」でした。同社のコールセンターでSalesforce製品が利用されており、CRMとの連携が可能なこと、さらにセブン銀行が先行導入していたことから将来的にはより精度の高いデータの利活用を促進できることが、SFMC選択の決め手になったと及川氏。導入をサポートするパートナー選定においても、セブン銀行の導入時に伴走した電通総研の対応が後押しになったと明かします。
「電通総研は、当社グループのシステムアーキテクチャーに精通しており、私たちがお伝えする情報に対しても、キャッチアップのスピードがとても速かった。セキュリティやプライバシーポリシーは個社ごとに異なりますが、その差異も勘案した上で最適な構築の形を整理し、論理的で納得感のある話をしてもらえたので、早い段階で信頼関係を構築できました」(及川氏)。
また、及川氏は電通総研の提案について次のように続けます。「プロジェクト当初から、当社の特殊な環境やセブン銀行との連携を見越したうえで、私たちの要望に対する実現可否やMAの活用方法を提案いただきました。例えば当社でSFMCから配信したメールの結果を分析する場合、一度セブン銀行の分析環境に配信結果のデータを戻す必要があります。電通総研はこうした状況を知っているので、広い視点で支援してもらえました」
SFMCによるシナリオメールの配信は、2026年4月からスタート。メールは定期配信とスポット配信を組み合わせて運用され、スポット配信は主に入会後3カ月以内の顧客に対して「初回利用済み」「未利用」などの状況に応じた、柔軟なアプローチのために活用されています。電通総研の提案は、これらのメール配信シナリオ構築時にも生かされました。メールの配信対象となる顧客を状況ごとに分け、施策を詳細化する際、顧客のパターンが一部細分化されすぎて、増えすぎてしまう状況が生じたそうです。
「システムリリースの直前まで、社内はシナリオのバリエーションをどうするかで揺れていました。そんな中で、電通総研が『利用動向を見るとAとBは一緒にしても良いのでは』など増加したパターンを整理してくださり、必要以上に複雑化させないベターなシナリオができました。現在入会いただいたお客さまには、最初に入会の御礼とカードの利用方法を記載したメールをお送りしています。そのタイミングもSFMC導入前よりも迅速です。さらに3カ月以内の利用有無によって、その後のメール内容の出し分けにつなげられている点は、本プロジェクトで実現した大きなメリットだと感じています」(及川氏)。
運用後はカード稼働率と稼働単価がアップ。“お客さま起点”の考え方が仕事の仕方も変える
SFMCによるメール配信開始から約2カ月。及川氏はその成果について次のように語ります。「長いスパンでの検証はできていませんが、入会直後の会員様に対する細やかなアプローチができている実感はあります。数値で言うと、今のところ入会直後のカード稼働率は導入前と比較して6ポイント上昇、稼働単価も約9ポイントアップしています」
さらに、内部的な成果として、及川氏はメール配信担当者の「仕事の仕方が変わった」と言及します。これまで配信担当者の工夫や検討は、タイトルや、クリック率につながるコンテンツ内容に重きを置いて行われてきました。しかしシナリオ型の配信を行う現在は、メールを配信することで「お客さまの行動変容を促せたか」を重視。担当者自身がお客さまの行動を起点にシナリオやメール配信のタイミングを検討する、「仮説検証」観点の分析を行うようになりました。
「現場のスタッフが『お客さまの行動をしっかり見て、成果を上げていく』視点に変わってきたのは、とても大きな成果だと考えています。MA導入の目的の一つには、当社からの販促情報をお伝えするだけではなく、お客さまの行動ベースのマーケティングに変えていきたい、という思いがありました。その点をきちんと理解して、SFMCを活用しようというマインドに変わってきているのは、とてもうれしいですね」(及川氏)
またプロジェクト全体を振り返り、「期間中タイトなご相談もしましたが、スケジュールやコミュニケーションを含めて、柔軟に対応をいただいたおかげで、大きな遅延や問題なく導入できました。要望への優先順位を付けて、われわれが一番運用しやすい形を検討してもらえたと同時に、運用時に活用できるドキュメントなども残していただけました。セブン銀行側の環境を手掛ける他ベンダーの皆様とのコミュニケーションも担当してもらえ、スムーズな構築につながったと思います」と評価しました。
今後はアプリマーケティングを視野にDXを拡大。引き続き「提案と実行」を両立する伴走に期待したい
優秀なコンサルタントの存在も電通総研さんの強み。SFMC導入の伴走で、『提案』と『実行』をしっかり両立いただけることを実感しましたので、今後はもう一歩先のDXに進化させていくご相談ができるとうれしいです
株式会社セブン・カードサービス
マーケティング統括部長
及川光太郎氏
セブン・カードサービスは、2026年8月に「nanacoクレジットカード」をリリースしました。このカードは、利便性を追求したアプリベースの設計とし、電子マネー「nanaco」のブランド力を活用した新たなサービスとして展開されます。
新サービスを見越して、及川氏は今後の顧客コミュニケーションとマーケティングの展望を次のように語ります。「SFMCによるメールマーケティングを経て、今後は早急にアプリマーケティングへ進化させたいと考えています。どのような形で進めていくのが当グループにとって最適かは、電通総研が一番理解してくださっているのではないかと思っています」
さらに、「電通総研は個々のソリューションにこだわった提案ではなく、当グループのマーケティングを全方位的に支援したいという思いをもってくださっている。ゆくゆくはSalesforceをはじめ、さらに幅広いシステムを連携させた『本当に最適なマーケティングプラットフォーム』などの提案もいただければと考えています」と話し、システム全体の進化を見据えた、電通総研の幅広い提案と伴走に期待を寄せました。
-
※記載された会社名・商品名は、それぞれ各社の商標または登録商標です。
-
※記載情報は取材時(2026年5月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。