スルガ銀行株式会社

顧客サービス向上のためのリテールバンキングの中核3システムをSalesforceで刷新。
電通総研の知見と実践的な内製化サポートにより、ITコストの削減を実現

  • 顧客接点改革
  • 業務・プロセス改革
  • クラウド
写真左より スルガ銀行株式会社 システム部 開発推進室 副部長 櫻井聡司氏、同室 アシスタントマネージャー 勝又悠介氏、同室 アシスタントマネージャー 島田佳彦氏、同室 マネージャー 柳田卓郎氏

静岡県沼津市が本店のスルガ銀行は、1990年代より30年以上にわたり、リテールバンキング(個人向け金融サービス)に特化した銀行として実績を重ねてきました。1990年代後半には、他の銀行に先駆けて個人向け戦略に合わせた自動審査システムやCRMなどのシステムを構築し、蓄積したデータとノウハウを活用して革新的なサービスを提供してきました。

現在、同社は「あってよかった、出会えてよかった、と思われる存在でありたい。」という企業理念のもと、2019年から始まった中期経営計画「Re:Start2025」の第2フェーズを推進中です。この計画の一環として、ITコストの圧縮・適正化を目指し、「クラウドサービスの利用促進」と「重要戦略分野の内製化」に注力しています。

2021年に、顧客情報の一元化を通じてより良いサービスを効率的に提供することを目指して開始された、インターネット支店預金口座開設システム、コールセンターシステム、CRMシステムの3つを「Salesforce」で刷新する全社的なプロジェクトにおいても、クラウド利用と内製化の双方に取り組みました。そして、その推進パートナーとして、電通総研が選ばれました。

プロジェクトの全体マネジメントを担当したシステム部 開発推進室 副部長の櫻井聡司氏は、「電通総研のSalesforceに対する深い知見と私たちの課題を解決するための幅広い提案力により、非常に納得感のあるシステムが実現できました。可能な限りカスタマイズせずに、Salesforceの標準機能で構築したいという制約がある中、目的と要望に沿って柔軟に対応くださったことが、成功につながったと考えています」と評価しました。


ITコストの削減と迅速なシステム更改を図る全社的プロジェクト。Salesforceと金融業界への深い知見がサポート依頼の決め手に

ITコスト削減を重要な目的としていた中で、さまざま方面から提案をいただけ、内製化についても我々ができそうだと感じる具体的な内容を提示くださった点がとてもありがたかったです

スルガ銀行株式会社 システム部 開発推進室 副部長 櫻井聡司氏

スルガ銀行では、リテールバンキング事業の場合、一人の営業担当が数百人のお客さまを担当するケースが多いため、早くからお客さまとの対話内容を共有するシステムを導入し、営業現場の効率化を進めてきました。しかし、先進的なIT化を進める中で、顕在化してきた課題があったと櫻井氏は話します。

「今回再構築したシステムには、主に3つの課題がありました。まず、各システムを個別に最適化してきたため、重複する機能や活用頻度の低い機能が積み重なり維持費用が増加していました。次に、システム開発を外部委託していたため、営業現場からの要望をすぐにシステムに反映するのが難しくなっていました。さらに、3つのシステムすべてが自社のサーバーで動いていたため、定期的にシステム更新する必要があり、費用も手間も大きな負担になっていました。」

これらの課題を解決するため、多くの業種で導入が進んでいたSalesforceを使った新システム構築プロジェクトが始まりました。櫻井氏は、Salesforceを選んだ理由を次のように話します。「開発の効率性や保守性の高さ、定期的なバージョンアップにより常にシステムが最新化される点に魅力を感じました。また日本国内でも多くの会社が導入しており、他社の事例や活用方法といった情報がインターネットなどから簡単に得られる点も良かったですね」

新システムの構築と同時に、内製化の推進も重要な課題でした。その背景には、システム部オフィスが所在する静岡県内での技術者確保の難しさと、常に顧客に寄り添ったサービスを提供したいという思いです。
「特に大切にしたのは変化への対応力です。より良いサービスのために何かを変える必要が出てきた時に、我々自身が対応し、スピード感を持って行えるようにしたかった」と櫻井氏は説明します。

Salesforceを中心とした新システムの構築と内製化。この2つの柱を持つ全社的なプロジェクトで、電通総研によるサポートを選んだ理由について、櫻井氏は次のように話します。「Salesforceは多くの企業で導入が進んでいますが、深く活用するには難しいツールです。そこで、豊富な知見を持った専門家にサポートをお願いしたいと考えました。電通総研は大規模な案件を含めSalesforceの導入実績が豊富で、金融業界での経験も多く、銀行にとってどのような提案が役立つかをよく理解していました。さらに当社との従前からの関係もあり、私たちの文化などをよく理解頂いている方が担当してくれたことも、安心感につながりました」


タイトなスケジュールの中、eKYCによる本人確認機能の強化と業務効率化を実現する預金口座開設システムを構築

プロジェクト全体を通して非常にシビアなスケジュールの中、柔軟な対応と丁寧なレビューやアドバイスをいただけたことで、実際の内製がスタートした際もスムーズに取り組むことができました

スルガ銀行株式会社 システム部 開発推進室 アシスタントマネージャー 勝又悠介氏

プロジェクトは、インターネット支店の預金口座開設システムから始まりました。システム部 開発推進室 アシスタントマネージャーの勝又悠介氏によると、新システム構築に伴い解決すべき課題は主に2つあったといいます。「一つは業務効率とコスト体系の抜本的な見直しのため、既存の機能や業務自体を整理すること。もう一つは、不正口座の開設防止のため、eKYCなどを用いた本人確認機能を強化することです」

電通総研は、セブン銀行と電通総研の合弁会社であるACSiON社のeKYCサービス「Proost(プルースト)」とSalesforceを組み合わせた開発経験を活かし、連携方法や効率的な業務フローを含めた提案を行いました。まず1つのインターネット支店で、キャッシュレス決済のチャージに適した「スマ口座」の開設サイトを勝又氏らと共同構築し、実践的な内製化のサポートを行いました。勝又氏は「Proostを使った本人確認の連携や利用方法をはじめ、システムの基盤部分を一緒に構築できたことで、今後JPKI(公的個人認証サービス)など、他の本人確認サービスとの連携時に応用できる知見と経験を得られました」と振り返ります。

その後も、スルガ銀行の社員による、外国籍顧客の対応機能の拡張や他のインターネット支店への口座開設サイト展開といった内製開発を電通総研が支援しました。また開発中のレビューやアドバイスを通して実践的な知見を共有し、「電通総研からは開発前の調査方法やSalesforceの知識、勉強方法、注意事項までを教わり、完全内製化に向けた準備がしっかりとできました」と勝又氏は評価しています。


「安定稼働」が一番の成果! 「Amazon Connect」との連携で、スピード感のあるサービスを実現したコンタクトセンターシステム

次に構築が進められたのが、コンタクトセンターシステムです。現在、このプロジェクトで構築した3つのシステムをまとめて担当する「CRMチーム」のリーダーで、システム部 開発推進室 マネージャーを務める柳田卓郎氏は、次の提案が印象的だったと話します。

「本システムの課題は、櫻井が話したとおり改修や更新にかかるコストの増加とスピード感の不足です。電通総研からは、Salesforceへの移行によって初期導入費用とランニングコストの両方を、大幅に削減できる案を提示してもらいました。また、Salesforce自体の標準機能が充実しているため、それを使いこなせれば、スピード感を持ったサービス提供が実現出来るとわかりました。例えば今回、音声通話基盤の『Amazon Connect』とAPI連携して、お客さまへの電話対応を行う形にしていますが、お客さまの情報をリアルタイムで画面に表示したり、通話内容を自動で記録する機能を実装しました。これにより、オペレーターの対応スピードが向上し、お客さま満足度の向上にもつながっています。担当者からは、実際に利用されたお客さまからも好評だと聞いています」

現在、内製による保守作業が行われる中で、一番の評価ポイントは「安定稼働が続いていること」だといいます。「2022年5月に稼働を開始してから、様々な改修や機能追加を行ってきましたが、電通総研の内製化支援もあって、苦情やトラブルは特に発生していません。お客さまと直接関わる大切な領域で、使い始めた時点から安定稼働するシステムを構築できたこと自体が非常に大切で、Salesforceにも音声基盤にも精通していた電通総研の協力があったからこそだと考えています」。


2,000名が使用するCRMは、約7割を標準機能で構築し、開発期間と費用を削減

初めてのアジャイル開発でしたが、区切られた期間ごとに各目標を立てて進める方法を教わり、自分が何に注力すべきか明確で非常にわかりやすかった。密なコミュニケーションをとりながら開発を進められたことでSalesforceの開発ノウハウが効率的に習得できました

スルガ銀行株式会社 システム部 開発推進室 アシスタントマネージャー 島田佳彦氏

スルガ銀行のCRMは、全社で2,000名が使用する重要なシステムです。システム部 開発推進室アシスタントマネージャーの島田佳彦氏は、以前のCRMシステムについて「銀行の基幹システムや社内の業務システムとの連携により独自の進化を遂げた、一般的なCRMの範疇を超える存在でした」と語ります。

しかし、大規模なシステムゆえの課題も蓄積されていました。島田氏「どこか一カ所を改修するだけでも手間がかかり、さらに技術者が確保しづらい製品を採用していたことで、特定の企業に頼らざるを得ない状態に陥っていました」と話します。度重なる改修を重ねて個別最適化が進んだうえ、他システムとつながっている複雑化したシステムは、経営層からの営業戦略をスピーディーに反映させることが難しく、蓄積された情報を活用した戦略の実践が困難でした。

この課題を解決するため、新たなCRM構築には標準機能が豊富な「Salesforce」を採用し、「極力カスタマイズしないこと」を重視し、約7割の機能をSalesforceの標準機能で構築しました。これにより、開発期間とコストを当初の計画通りに抑えることが出来ました。

内製化にあたっては、電通総研が核となる基盤部分をウォーターフォール形式で、島田氏らの内製化チームが、営業支援やレポートなどに関する一部機能等をアジャイル方式で、開発を進めました。島田氏は、「銀行のシステム開発はウォーターフォール方式が主流でしたが、今回初めてアジャイル開発を経験しました。電通総研の支援のもと、アジャイル開発の基本概念や振り返りのタイミング、進め方のポイントなどを学びながら実践的に開発を進めました。疑問をその場で解決し、段階的に知識を積み重ねることで、効果的な学習と開発が実現出来ました」と振り返ります。


内製化への移行で数億円のコストダウンが実現!Salesforceへのシステム統一により、柔軟な人材配置ができる実務的なメリット

新システムの構築と内製化の結果、コスト削減と開発スピードの改善において、大きな成果が得られました。
インターネット支店の預金口座開設システムでは、最初に稼働した預金口座開設サイトを横展開する形で内製開発により他8支店分の開発を行ったことで、数億円の開発コスト削減を実現しました。Salesforceの標準機能を活用することで、項目の追加や軽微な修正を1日以内に反映できるようになるなど内製ならではの迅速な対応も実現しました。
また、コンタクトセンターでは、従来と比較して約20%の費用で新システムを完成させ、ランニングコストも40~50%削減しました。
また、各システムをSalesforceに統一したことで、学習コストが低減し、システム開発における人材の柔軟な配置が可能になりました。これにより、組織内での人材の配置替えや新しい機能の導入がスムーズに行えるようになり、組織全体の効率性が向上しました。


事業において一番大事な“お客さまを知る”ためのインフラ基盤。今後も活用推進のための幅広い提案を期待したい

業務部門を巻き込み、CRMの“あるべき姿”について整理して、業務フローの見直しも含めた提案をいただけた。我々も知識を整理しながら進めたことでプロジェクト成功に至ったのだと考えています

スルガ銀行株式会社 システム部 開発推進室 マネージャー 柳田卓郎氏

柳田氏は電通総研のサポートを振り返り、「CRMを含む大規模なシステムが連携するプロジェクトでは、ユーザー受け入れテストや外部接続テストのフェーズで問題が発生しがちです。しかし今回は電通総研が事前に各事業部署と綿密に連携し、仕様を早期に固めたことで、テスト工程がスムーズに進行しました。このような計画的なアプローチがプロジェクトの成功に大きく貢献したのではないかと思います」と評価しました。
また今後の展望として、「構築した3つのシステムを顧客情報の収集・蓄積の基盤として活用し、お客さまお一人おひとりを正しく理解した上で、最適なサービスの提供を目指したい。また今回のプロジェクトによってお客さまの情報を可視化するためのインフラ基盤も整いました。今後もSalesforceを活用するためのさまざまなアイデアを取り入れ、トライアンドエラーを繰り返しながら進化させたいと考えています。幅広い導入実績をお持ちの電通総研には、引き続きアイデアや工夫、提案などをもって、データやシステムの活用推進にご協力いただけたらうれしいです」と話します。

スルガ銀行株式会社 会社概要新しいウィンドウで開きます

社名:
スルガ銀行株式会社
本社:
〒410-8689 静岡県沼津市通横町23番地
設立:
1895年(明治28年)10月19日
資本金:
30,043百万円
従業員数:
1,209名(2024年3月31日現在。※出向者除く)
事業内容:
普通銀行業務(クレジットカード発行・信託業務含む)
  • 記載の会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。
  • 記載情報は取材時(2024年7月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。

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