福岡県宮若市 申請書類のデジタル化と職員の業務効率化で行政サービスの質向上を目指す
- RPA
人口は約2万7000人の福岡県宮若市は自動車関連企業が多数立地し、産業と豊かな自然が両立する都市です。ICTを活用して市民の暮らしやすさを向上させる取り組みにも積極的で、かねてから窓口業務のデジタル化に取り組んできました。
2020年5月、市役所庁舎の移転をきっかけに、複数に分散していた市民の申請業務をワンフロアで行う総合支援型窓口を導入。これにより、手続きに訪れた市民が各所管課で同じことを何度も書いたり聞かれたりという負担が軽減されました。
また、2021年に入ってからは、ISIDの支援により「電子申請システム」の推進が本格的にスタートしました。これは、手書きの申請書を記入する代わりに、事前にPCやスマートフォンを使って申請目的や氏名、住所、生年月日などを登録するシステム。登録した情報は二次元バーコード化され、それを市役所にある専用端末で読み込むと、RPAにより自動で業務システムに書き込まれる仕組みです。
その初めての試みとして、7月から「児童手当の現況届」の電子申請を開始。同市総務課の吉田哲也氏は、「申請書類に多くの必要事項を書く手間がなくなること、また、業務システムに情報を入力・確認する作業の時間が大幅に削減されることで、市民の負荷軽減はもちろん、職員の業務効率化にもつながるはずです」と語ります。
市民の負荷を減らすために、申請データを市役所内で共有化
以前から申請業務のデジタル化に取り組んできた宮若市は、2020年5月にさまざまな申請業務をワンフロアで行う総合支援型窓口を導入。最初の窓口で市民から申請業務に必要な情報をヒアリングし、実際に手続きを行う各所管課と共有する仕組みを構築しました。
「これまでは手続きのたびに手書きで申請書を記入してもらい、窓口で同じことを何度も尋ねるといったオペレーションだったため、市民にとっても負担になっていました。窓口で確認すべき項目は、氏名、住所、生年月日などのほかにも、申請目的によっては国民健康保険への加入が必要か、障害者手帳を持っているか、世帯主の変更があるかなど多岐にわたります。特に他市から転入する場合はシステムに住民票の情報が登録されていないので、転出証明書に記載されていない事項などの確認事項が多くなります」(吉田氏)
総合支援型窓口を導入して市民の負担は軽減できたものの、さらに踏み込んで、よりスムーズな窓口申請の実現と職員による情報の入力・確認業務の効率化を目指し取り組んだのが、WEBやRPAを活用した事前申請システムでした。
業務効率化は、より良い“行政サービス”を提供するための手段
ISIDは、電子申請に留まらず、自治体のDX推進の観点から様々な提案をしてくれました。提案~システム構築までスピード感があるのも大変刺激になりました。
宮若市 総務課 吉田哲也氏
「宮若市は、職員数も予算も規模の小さな自治体です。だからこそ、職員は限られた条件の中で効果を出すために、“市民のための行政サービスを考える”ことにもっと注力していかなければと思っています。そして、より良い施策につなげて市民に還元していくこと。これこそが私たちが果たすべき役割です」と、吉田氏。
一方で、コロナウイルス感染症の影響で、職員は特別定額給付金などの給付事務やワクチン接種などのイレギュラーな対応に追われ、業務負荷が増えている現実もあります。「そんな時代だからこそ、ICTの力で業務の効率化を実現させたいと考えました」と吉田氏は説明します。
実際に市の業務のデジタル化を牽引しているのは、総務の実務経験もあり職員時代には電算化を強く推進していた市長でした。「市のICT化を進めていく上でも電子申請システムの導入に積極的に取り組んでほしい」と強く要求されていることもあり、吉田氏もできるだけ早いタイミングで導入したいと考え、複数社に声を掛けました。
そこで吉田氏をはじめ宮若市の職員が選定したのはISIDでした。 「ISIDは私たちが想定していた“電子申請システム”の範囲にとどまらず、職員の業務効率化も実現できる仕組みを提案してくれました。自治体のDXは市民サービス向上だけでなく、職員の業務効率化との両輪が必要という話は説得力がありました」
申請から基幹系システムへの書き込みまでをRPA連携で自動化
ISIDの電子申請システムは、申請データを基幹系システムまで自動連携できることが大きな特長です。基幹系システムは他のネットワークと分離されているため、データ連携させることが難しく紙の申請書からの入力、確認と職員の業務効率化の障壁になっていました。しかし、ISIDの電子申請システムはRPAソフトウエアであるUiPathを活用することで、申請内容の確認、基幹系システムへの書き込みまでを自動で行えるようになりました。
「市民はまず、自宅でPCやスマートフォンを使って、WEB上で必要項目を入力。入力が終わると画面に二次元コードが表示されるので、それを持参し来庁します。一方、市役所では市民から二次元コードを受け取って、専用PCで読み込みます。その後は自動で申請データがUiPathのロボットPCに送られ、データの入力・確認、さらには基幹系システムへの書き込みまで行われます」(吉田氏)
ISIDの電子申請システムは、シンプルなつくりで、コストもコンパクトです。まずは必要な申請書から導入しようと、「児童手当の現況届」から運用を開始しました。
吉田氏
宮若市では児童手当の現況届から電子申請システムの活用をスタートさせました。吉田氏は、
「コロナ禍で密を回避するため現在は郵送でも受け付けているので、どこまで利用されるかわかりませんが、今後はスマートフォンの二次元コードを持参する人が増えると考えています。現況届は申請書の情報を職員が手入力で登録した場合、これまで1件につき平均7~8分の作業時間を要していました。児童手当の現況届の対象者は約1,600人。昨年度までは入力専任の職員が約1カ月かけて入力していましたが、今後はこの時間を大幅にカットできると期待しています」。
さらに、吉田氏は「手入力するとどうしてもミスは避けられない。電子申請システムによって基幹系システムの入力まで自動化できたことは、ミス軽減にもつながります」と続けます。
スモールステップで導入し、ゆくゆくは可能な限り多くの申請に拡大予定
申請システムの自動化は、現在、全国の自治体に掲げられている大命題の一つ。総務省が推進する「自治体DX推進計画」にも、各種行政手続きのオンライン化が明確に打ち出され、今後の推進イメージが具体的に示されています。
ISIDは、これまでもさまざまな自治体にサービス・ソリューションを提供し、DX推進に貢献しています。「この電子申請システムもかゆいところに手が届くといった印象で、これからも使い続けていきたいですね」と、吉田氏は微笑みます。
ゆくゆくは行政手続きで使用している申請書は可能な限り電子申請システムを活用する予定。中でも早急に導入したいのは、提出書類の多い住民異動届や、待ち時間の長いマイナンバーカードの申請手続きだといいます。
「従来の手書きでの書類も引き続き受付していきますが、この電子申請システムは、書類を手書きで書くのが面倒な方、窓口での待ち時間を減らしたい方などにはとても喜ばれるシステムです。私たち職員も業務効率化を実現させることで、行政サービスの質向上を目指したいと思います」(吉田氏)
2021年10月更新
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※記載情報は取材時(2021年7月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。
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