三菱商事株式会社 STRAVISでグループ全体の連結決算業務を効率化
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世界約90か国・地域に広がる、連結対象会社を含む拠点ネットワークを通じて、幅広い産業を事業領域としてビジネスを展開する大手総合商社の三菱商事株式会社。同社の直接連結対象会社は500社を超えます。2020年6月、同社主計部は、長年運用してきた連結決算システムをISIDのSTRAVISに切り替え、グローバルに展開する連結対象会社から収集される決算データを一元的に管理するプラットフォームを立ち上げました。このプロジェクトを主導したのは同社主計部の予・決算管理チーム。そのリーダーを務める西原直氏は「システムに備わった標準機能を最大限活用することで、これまで課題だった保守運用コストを大幅に低減することができた」と語っています。「ISIDとの共創で立ち上げた今回のプラットフォームが、この先長く安定稼働するということは、三菱商事グループ全体にとってプラスとなるでしょう」。
サポート終了に伴い、連結システム刷新を検討
「サポート終了の知らせが、そもそもの始まりでした」と話すのは三菱商事主計部の予・決算管理チームで統括マネージャーを務める髙岡功氏。「サポート終了の知らせ」というのは、2002年から運用してきた従前の連結決算システムのサポートが切れるということ。当初の期限は2020年とされていました。
三菱商事では国内外の連結対象会社の財務データを取りまとめる連結決算の仕組みを、海外製ERPパッケージで構築し、業務の必要に応じてさまざまな機能を作り込んできました。しかし、時とともにアドオンが積み重なりシステムは肥大化。安定稼働のため保守運用に多くの人員を要するようになっていました。
「連結決算システムは大きく2つのタイプに分かれます」と髙岡氏は説明します。「業務に合わせてシステムをカスタマイズしていくタイプと標準機能をそのまま業務に活用していくタイプです。旧システムは前者にあたり、自前の作りこみでやりたいことはできるようになりましたが、一方でメンテナンスの負荷とコストが増大しました。その轍を再び踏まないため、次期システムでは極力標準機能を活用する後者のタイプで候補を選ぶことになったのです」。
「シンプル」、「効率性」、「柔軟性」
STRAVISは、私たちが掲げていたシステムコンセプトと合致し、標準機能が豊富であること、連結会計に特化したシンプルなシステムであることが魅力でした
三菱商事株式会社
主計部 予・決算管理チーム 統括マネージャー 髙岡功氏
2014年、その方針に沿ってシステム選定が始まります。候補にあがったのは海外製ERPに加え国内ベンダー2社が提供する連結決算システム。評価の末、最終的に選ばれたのはISIDのSTRAVISでした。
鍵となった評価ポイントは、(1)機能が連結会計の業務に特化していること、(2)主計部以外の担当者にとっても使いやすく、グループ全体で連結決算業務を効率化できること、そして(3)会計基準やIT環境などの変化に対応できる柔軟性を備えていることの3点でした。
実際STRAVISはデータ収集、データ連携、多軸分析、帳票作成といった多彩な機能を備え、制度会計にも管理会計にも対応。クラウドへの展開も可能で、財務データのオンライン入力やエラーチェック、複数事業のデータ一元管理、為替変動を加味した決算シミュレーションなどに力を発揮します。
「STRAVISは私たちが求めていた標準機能が豊富であること、さらに連結会計に特化したシンプルなシステムであることが魅力でした」と髙岡氏。しかし、「事業セグメント単位の業績管理や事業再編・組織再編時の対応など我々が求める一部の要件に課題があることもわかりました」と続けます。そこで、三菱商事とISIDは、そうした総合商社特有の業務要件を盛り込んだ“標準機能”を新たに開発することにしたのです。
保守運用コストを約4割削減
長期的なSTRAVISの利用においては、時代とともにニーズも変わります。システムコンセプトである“柔軟性”を生かし、タイムリーに機能強化していきたいです
三菱商事株式会社
主計部 予・決算管理チーム 課長 田中康太氏
2016年から始まった新プラットフォームの開発。しかし、その道のりは決して平坦なものではありませんでした。
事業セグメントが複数あるだけでなく、事業セグメントの下に連結対象会社が連なり、さらにその連結対象会社が事業セグメントをまたいで社内協業することもある総合商社。その複雑さは通常の比ではありません。決算データの入力に携わるユーザーは海外も含め1,000人を超え、管理対象データも多岐にわたります。直接連結対象会社500社、仮に入力項目が100項目だとすると、管理するデータは5万個にのぼります。
システムの仕様決定や機能の整理に奔走した予・決算管理チームの田中康太氏は、「特定の機能において決定した仕様が、関連する全ての機能との間で整合性が取れていないと正確な連結決算を実施できないため、関連する機能を一から紐解き、腑分けしながら一つひとつ詰めていきました」とその苦労を語ります。
しかし、その仕事はやがて成果に結実しました。「最終的には、シンプルでロジックが通ったシステムが立ちあがりました。保守運用の負荷も減り、コストは約4割削減しています」と田中氏は話しています。
自在なデータ検索で業務を効率化
今回の仕組みが安定稼働することは、三菱商事グループ全体にとってプラスとなるでしょう
三菱商事株式会社
主計部 予・決算管理チームリーダー 西原直氏
旧システムとの並行稼働を経て、2020年6月、STRAVIS は本番稼働を開始。連結ベースの決算数値の集計、予算策定や見直し、実績と予算の対比、国別報告書の対応など、年間を通じて広く活用されています。
新システムの大きなメリットとして「データの検索性」を挙げる西原氏。「以前のシステムではデータを検索する際の切り口が限定されていたのですが、STRAVISの場合、事業セグメント、部、会社、国、勘定科目などさまざまな切り口で簡単にデータを抽出することができる。そのため経営層や投資家が求める情報を効率的に届けることができます」。
プロジェクト開始以降、ISIDと二人三脚で作り上げてきた今回のプラットフォームを「手塩にかけて育ててきた子どものよう」と表現する西原氏。「この仕組みが今後長く安定稼働し、ISIDには長期的な保守運用支援、機能追加に関する継続的な提案を期待します」と話します。
2021年3月更新
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※記載情報は取材時(2020年12月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。