株式会社静岡銀行 クラウドベースのWebポータルで事業成長の礎石を築く
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預金額および総資産額で地方銀行ランキング第4位のポジションにつける静岡銀行。マイナス金利政策による収益圧迫、小売大手や新興フィンテック企業の市場参入、そしてデジタル革命による顧客行動の変化など、金融業界をめぐる事業環境が厳しさを増すなか、同行は独自のパートナー戦略とセールスチャネル改革で時代の荒波に挑んでいます。昨年同行が立ち上げた一般投資家向けWebポータルは、そうした攻めの姿勢を示す一例。Salesforce Community Cloudを用いたこのポータルは、店頭を訪れない多くの顧客との非対面の窓口を開くと同時に口座開設の効率を大幅に改善、さらに行内の業務負荷も軽減しています。「この仕組みを利用して、ラップ口座に加え住宅ローンの借入見込額が把握できるサービスを提供していますが、今後さらに多くの商品やサービスをお客様にお届けしていきたい」と導入の旗振り役を務めた米須祐貴氏は語ります。今回のプロジェクト実行にあたり、システム構築から業務フロー設計、ユーザーインターフェースの開発に大きな力を発揮したのはISIDでした。
受難の時代、成長する金融商品
「最初に経営企画部から声がかかりました」と話すのは、プロジェクトリーダーを務めた静岡銀行インターネット支店担当の米須祐貴氏。「声がかかった」というのは、同行が昨年8月新たに提供を開始した投資一任サービス、“ラップ口座”開設用のWebポータルのことです。
近年、受難の時代を迎えている銀行業界にあってラップ口座は注目の商品。かつては特定の富裕層向けに証券会社や投資顧問会社だけが提供していたものをメガバンクが一般向けに販売開始し、人生100年時代を見据えた資産形成のニーズに対応することで口座数や残高を伸ばしています。静岡銀行は他の地銀に先駆けてこの成長市場に参入しようと機会をうかがっていました。
非対面チャネル、連携の課題
今回のプロジェクトでビジネスモデル変革の意識が広がっています
神谷 健司氏
しかし、ラップサービスを販売の仕組みとしてまとめあげるのは簡単ではなかったと米須氏は振り返ります。
「デジタルバンキングが勢いを増し、銀行店舗の来店客が減少するなか、インターネットが主となる非対面セールスチャネルに力を入れていますが、先行して販売していたネット販売型の投資信託では苦戦していました。行内のシステムでは申し込み窓口や顧客情報がつながっておらず、それを営業担当が手作業でまとめているという状況でした。かといってシステムを統合するには膨大な費用がかかります。ラップ口座についてこれまで何度も検討されていましたが、実現しなかったのはこのコストの壁があったからです」。
また、ラップ口座のWebポータルについては「申し込みから取引開始まで円滑に流れていく仕組みを考えていた」と米須氏は話します。
一般的にラップ口座を開設する場合、銀行(預金口座)、証券会社(証券口座)、投資顧問会社(ラップ口座)に口座を持つ必要があり、顧客は来店をともなう書類の取り交わしに加え、同じ情報の繰り返しの入力を求められます。そうした煩雑な手続きを嫌って契約から離脱してしまうケースも多いため、ポータルでは入力情報を一元化し、顧客にできるだけ負荷のかからないプロセスを作りあげる必要がありました。
クラウドで統合、短期間で構築
ISIDは理想の仕組みを短期で実現してくれました。これを活用して顧客接点を改革していきます
米須 祐貴氏
2018年4月、こうした要件をクリアするため米須氏はセールスフォース・ドットコム社のクラウドソリューションに注目します。「クラウドでプラットフォームを構築すればコスト効率よくデータ連携を図れるのではないかと考えたのです」。
システム構築のため数社の企業に声をかけ、それぞれの提案を検討した結果、選ばれたのはISIDでした。「ISIDはシステム構築の実力だけでなく、金融業界での実績やマーケティングのノウハウも豊富なので、こちらの意図を理解して最適な仕組みを作ってくれるだろうと期待しました」と米須氏は語ります。
正式な依頼を受けたISIDは、CRMモジュール Sales Cloud および Salesforce Community Cloud のを使って口座開設のWebポータルを構築。そのほかにもユーザーインターフェース開発や企業の壁を越えた業務フローの策定を支援し、プロジェクト開始からわずか4ヶ月で静岡銀行の「しずぎんラップ(MSV LIFE)」は完成します。同年8月、その新サービスは一般向けにリリースされました。
多彩なメリット、成長への起点
煩瑣な手作業抜きでお客様に対してより有効なアプローチがとれるようになりました
飯田 彩乃氏
有効な見込み顧客を発掘し販売につなげていけると考えています
中山 雅人氏
今回のプロジェクトの成果について、協力企業との業務提携に力を注いだ経営企画部の神谷健司氏は証券子会社の経営層の意識改革を挙げています。
「顧客につながるあらたな手段が求められているなか、今回のポータル立ち上げを起点として、対面型から非対面型へビジネスモデルの変革を急ぐ意識が経営層に広がってきました」と神谷氏は話しています。
またダイレクトチャネル営業部でインターネット投信を推進する飯田彩乃氏は、成果のひとつとして業務効率化を見ています。「今回のポータルでは口座の申し込みが非対面、ペーパレスで完結し、しかも関係者全員がその情報を共有できます。そのため煩瑣な手作業抜きで、お客様により有効なアプローチがとれるようになりました。さまざまな商品をひとつの窓口でおすすめできるという意味で、有効なダイレクトチャネルとして期待できます」。
「しずぎんラップ(MSV LIFE)」に続いて住宅ローンの事前診断サイト「マネピタ」を立ち上げた同営業部の中山氏は、今回立ち上げたクラウドプラットフォームに大きな期待を寄せています。「対面営業は必ずしも効率的なアプローチとはいえません。潜在的な顧客層に対し、対面で対応できる営業担当は限られているからです。ISIDの力を借りて住宅ローンのポータルにはPardotというマーケティングオートメーションの仕組みを組み込みました。潜在層から有効な見込み顧客を発掘し、適時に適切なコミュニケーションを取っていくことで、より多くの取引につなげていけるのではないかと考えています」。
2019年6月更新
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※主要勘定は2018年3月31日現在、拠点数は2018年7月1日現在の数値
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