パリ協定から欧州グリーンディールへ

本稿では、欧州グリーンディールにおけるETSや排出権市場について基本的な内容を整理し、EU圏におけるGHG排出量削減政策に伴うEU ETSや排出権市場の動向について、関連データと共に考察する。さらに、パリ協定などの国際条約の基礎となる科学的データに関して、専門家の見解を紹介する。加えて、2024年11月に米大統領選でトランプ氏が再び当選して以降、米国での地球温暖化対策後退、大手銀がNZBAから離脱する動きなどについてその影響を見るものである。

1.パリ協定から欧州グリーンディールへ

2015年12月に開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)では、“パリ協定”が当初196カ国によって採択され、翌2016年11月には、京都議定書以来の気候変動に関する国際条約として施行され、具体的な地球温暖化対策を定めている [1]。パリ協定を受け、2019年にEUでは欧州グリーンディール(=European Green Deal)が提唱され、環境政策、排出権取引システム(以下、ETS)をはじめとする社会インフラ構築への法整備が進み、2050年までに温室効果ガス(以下、GHG) 排出量ネット・ゼロを目指している [2]。EUで運用される排出権取引システム“EU ETS”は、発電、製鋼を含む特定の産業セクターに適用され、域内排出量の約40%は、EU ETS適用セクターによるものとされる [3] [4]

2.ETSの仕組み

ETSは「Emission Trading System」を意味しており、排出権取引市場の観点では「Compliance Carbon Markets」(以下、CCMs)とも分類される [5]。一般にETSの枠組みでは、監督機関が特定のセクターに対して、GHG排出量に上限を設定し、該当する事業者は、排出権を政府等当局から無償で取得するか、排出権取引市場を通して購入する。実際の排出量が、排出権で認められた排出量限度を下回る場合、当該排出者は排出権の余剰分を売却でき、上回る場合には排出権を購入することで排出量規制に対応する。すなわち、排出者はGHG排出量を抑えることで経済的利益を得るインセンティブを持つことになる。

3.EU ETSとEuropean Green Dealについて

EU ETSも大枠では”Cap and Trade”の仕組みで運用されている [3]。EU ETSは2005年に開始されており、同年には京都議定書の国際条約も施行されている [6]。以降、EU ETSでは数年ごとの期間(フェーズ)を設け、フェーズごとの達成目標に基づいて、運用体制の整備や関連規制の施行などを実施している。現在、EU ETSは2030年を期限とするフェーズ4の段階にあり、またEU全体では同年までにGHG排出量を1990年比55%削減することを目標としている。この目標値は、当初の1990年比40%削減に対して、2021年に政策強化されたものである。EU ETSにおいても年間排出量上限の減衰率が年2.2%から年4.3%~4.4%への改定が行われ、2024年以降に適用されている [7]

EU ETSはEuropean Green Dealに基づく排出量削減政策の主軸の一つで、対象セクターによるGHG排出量は、EU全体の約40%を占める一方、EU ETSの対象から外れる大部分のセクターに対しては、Effort Sharing Regulation(ESR)による排出量削減目標が設定される [8]。このESR対象セクターの排出量削減を促進するため、EU ETSとは別にEU ETS IIを導入する動きもあり、その運用体制は2027年中に整う見通しとされる [9]。こうした ETSによる排出量削減政策に加えて、EUではCarbon Border Adjustment Mechanism(CBAM) [10]といった経済政策も進められている他、International Climate Financeへの資金供給も行われている [11]

4.EUの排出権取引市場

EU ETSの枠組みで発行される排出権 (以下、EUA)の取引市場は、オークション(プライマリー市場)と、セカンダリー市場に分類される [12]。セカンダリー市場では、通常のEUA(スポット)だけではなく、EUAを裏付けとした先物やオプションといったデリバティブ商品も取引される [13]。EUAおよびそのデリバティブは金融商品とみなされ、現在それらの取引は原則MiFID IIの規制対象とされている [12]。こうした規制が適用されることにより、投資家保護の向上が見込まれる一方 [14]、MiFID IIを適用開始した2018年以降、投機的な動きの緩やかな増加傾向がみられる [15] [16]

EU ETSではMarket Stability Reserve (MSR)という仕組みがあり、EUA市場の需給リバランスや将来の市場リスクへの耐性を整えることを目的としている [17]。例えば、EUA価格が過度に下落する局面では、GHG排出量削減へのインセンティブが低下し、逆に過度な上昇局面では、長期的な排出量削減対策への投資が損なわれる(EUA調達コストの増加)といったリスクが想定されるが、そうした状況に対してMSRが是正効果をもたらすことが期待される。

5.パリ協定以降の市場動向

2018年以降、EUA価格の上昇は顕著である。EUA価格は、2018年1月の月平均8.39 €/tCO2Eから、2022年1月の月平均83.3 €/tCO2Eと約10倍まで上昇し、2024年12月では月平均67.4 €/tCO2Eの水準で推移している[Fig.2]。この間、EUA価格は最高値を更新しているが、ここからはそうした価格変動の背景を時系列で追っていく。

5-1.2018年から2019年の動向

この間の特筆すべき取引制度の変更として、2018年にEUA取引が原則的にMiFID IIの規制対象に含まれた点が挙げられる [12]。一般に、同規制によりEUA市場は投資家保護をはじめとする堅牢性向上につながり、排出事業者だけではなく、一般投資家によるEUA投資の促進が見込まれる。2017年から2018年では、オークションでのEUA取引量に大きな変化はみられない一方、セカンダリー市場のEUA取引量は63% 増加している[Fig.3][Fig.4]。また、MiFID IIの規制対象になることで、市場参加者に対して生じる規制対応コストもEUA価格に反映されているとする見方もある [14]。MiFID II以外の要因として、2018年から2019年にかけては、MSRの導入が行われた時期と重なるが、MSRはEUA供給量を制限し得る性質があることから、その場合EUA価格上昇圧力となる [17]。なお、2018年から2019年では、オークションにおけるEUA取引量は36% 減少している[Fig.3]

ここであらためて排出量削減に目を向けると、ETSセクターによるGHG排出量は、2018年では前年比3.5%削減、2019年では前年比8.7%削減しており、ETS発足以降の年間削減量としては比較的良好な進捗といえる[Fig.1]

5-2.2020年以降の動向

2020年12月から翌2021年12月にかけて、EUAの月平均価格は29.8 €/tCO2Eから80.6 €/tCO2Eへと大きく上昇した。欧州中央銀行 (=ECB)の公表記事 [16]では、2021年初頭以降のEUA価格上昇について、主に4つの要因を提示している。

1点目は、2021年初旬のEU圏における著しい寒波に伴うエネルギー需要増加を指摘し、短期的にはこれがEUA需要増加、価格上昇につながったとするもの。この点について、寒波を測る指標Heating Degree Days(=HDD) Indexを計測することで、寒波の程度を例年と比較することができ、その指標からは、EU域内における2021年初旬の寒波が前年同期比で厳しいことが認められる[Fig.5]。また、EU圏における世帯が消費するエネルギーでは、天然ガスの割合が最も多く、主に暖房用途へ使用されるが [18]、EU域内の天然ガス消費量は2021年初旬では前年同期比で増加している[Fig.5]。ただし、2021年は前年と比べて、寒冬および天然ガス消費量の増加も認められる一方、少なくとも2017年以降では、2021年暖房期の水準が例外的に突出しているとは言い難く、後述の規制改定や天然ガス価格高騰がEUA価格高騰へより大きく寄与したと考えられる。

2点目は、2021年7月に欧州委員会が公表した排出量削減強化に関わる法案 (Fit for 55) に対する反応で、先述のように、この法案には2030年までのEUの排出量削減目標を1990年比55%へと強化する内容が含まれる [3]。これに伴いETSセクターにおいても、近い将来のEUA供給量の枯渇が懸念され、EUA価格上昇へ寄与したものと捉えられる。この規制強化による、ETSセクターでの、2024年から2030年にかけての排出量上限の下方修正は、EUA 1,486 millionに相当する [19]

3点目は、2021年からEU ETSフェーズ4への移行やMSR改定 [20]の結果として、EUAの市場供給量を制限する点を挙げている。フェーズ4への移行に伴い、Capの年間減衰率が前フェーズの1.74%から2.2%へ加速することも、近い将来のEUA供給量の減少を示唆している [7]。また、この点は、先述のFit for 55に対応して、フェーズ4期間中にMSR改定が実施されることへの反応とも捉えられ、2点目の要因と同様に、規制改定に伴うEUA供給量見通しの下方修正という側面がある。

4点目は、ガス価格の高騰を指摘し、これが発電事業者に対しガス発電から石炭発電への転換を促し、EUA需要増加につながったとするものだ [51]。2021年の各指標の動向を見ると、EU域内の天然ガス価格高騰は下半期に顕著であり、前年同期比では、世帯向けで最大1.3倍(平均1.16倍)、非世帯向けで最大3.6倍(平均1.86倍)まで高騰している [Fig.6]。さらに、EU域内全体の発電量に対する各発電方法が占める割合を見ると、2020年下半期から2021年同期では、天然ガス発電が16.6%から13.7%、石炭・製造ガス発電が13.3%から15.4%へとそれぞれ推移している[Fig.7]

ここまで、2021年のEUA価格上昇に関して、ECBが指摘する要因について検証したが、1点目の要因、寒波については偶発的ともいえる一方、2、3点目については、EUA供給量に関わる規制改定なので、2021年以降の市場へも継続的に影響を与える。4点目のガス価格の高騰に関しては、International Energy Agency (IEA)の2022年4月付Gas Market Report, Q2- 2022 [21]によると、2021年〜2022年の暖房期では、ロシアから欧州へのパイプライン経由での天然ガス供給量が前年と比較し、約25%減少していたとされる。加えて、ノルウェーを除き、欧州では天然ガスの生産量が低下していた点にも言及している [21]。これらの点については、不明瞭な部分もあるが、2021年12月段階で、ベラルーシを経由するヤマル・ヨーロッパ・パイプラインへのガス供給停止に関し、ロシアと西側諸国間の緊張を原因とすることについて、ロシア側は否定しているとEuronewsは報じている [22]。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を経て [23]、天然ガス価格も高水準で推移する中、同年5月EUではエネルギー政策REPowerEUを開始、ロシアからの化石燃料への依存から脱却することを目指す構造改革を進めている [24]。REPowerEUへは、当初計画による €300 billion の資金供給に加え、EUAオークション収益からも2026年8月までに、€20 billionの追加拠出を目指している。その一部資金として、2030年12月までにMSRからEUA 27 million 相当のオークション収益が拠出される見通しである [25]。一方、2023年夏頃から2024年初旬にかけてのEUA価格下落は、EUAオークション収益によるREPowerEUへの資金調達に起因するとの見方もある [26]

2020年以降のETSセクターによるGHG排出量を見ると、2023年には前年比で15.8%削減しているものの、2021年〜2022年には排出量削減の進捗が鈍化していたと言わざるを得ない[Fig.1]。この間、パンデミックによるロックダウンとその解除という特殊な環境下にあった一方、先述のEUA価格が高騰した時期とも重なり、後述の経済的コストの増大により、排出量削減対策への投資が圧迫されていた可能性も無視できないと考えられる。

6.排出事業者の経済的負担

EU ETS対象事業者がその規制対応のために負担する経済的コストは、直接コストと間接コストに分類される [27]。直接コストは排出量削減対策あるいは排出権調達にかかるコストを指す。間接コストは、EU ETS対象事業者が規制対応への負担を、事業者の生産物へ価格転嫁することで生じる消費者コストとされ、例えば電力事業者による電気代への価格転嫁などが挙げられる。

先述のEUA価格変動は、このようなコストを通して事業者や消費者の経済活動へ影響する。また、EU加盟国の間でも、各国の産業構造、経済規模の観点から、経済的負担の度合いに格差があることが認められる。EUではファンド等を通して、経済的支援を実施する一方、排出量削減に伴う経済的負担を起因として、EU域内の政治的緊張へつながるリスクも内包している [28]

6-1.直接コスト

排出権調達コストは、実際のGHG排出量のうち、EUA無償割当分からの超過排出量に比例する。EUA無償割当分はEU各国へそれぞれ一定量供給する枠組みとなっている [29]。EU各国で生じ得るEUA調達コストを超過排出量とEUAオークション年間平均価格から概算すると、2023年は、ドイツが €14.1 billionと突出し、ポーランドが €9.3 billionと続く。この概算コストの各国経済規模(同年の名目GDP)に対する比率[Fig.8]を見ると、EU加盟国の中央値0.28%に対し、ブルガリアの1.33%が最も高く、続いてポーランドの1.24%となっている。EUではブルガリアやポーランドを含む一部の国に対し、一定条件の下 EUAを無償で追加供給する規定がある [30]と同時に、オークション収益対名目GDP比率は他のEU加盟国と比較して高い傾向にはある。それでも、先の指標からはブルガリア、ポーランドにおいては、同国内で生じるEUA調達コストの負担は相対的に大きいことが示唆され、また、オークション収益もコスト負担者へ還元されるとは限らない。

EUA調達コスト対名目GDP比率が高い国においては、石炭・製造ガス発電の割合が高い傾向が認められる。2023年では国内発電量に対する石炭・製造ガス発電量の割合[Fig.9]は、ブルガリアで27.0%、ポーランドで59.4%、EU全体では11.7%。その他高い傾向を示すところでは、チェコの38.6%、ドイツの25.6%がある。

EUではEuropean Green Dealの目標達成を促進するために、幾つかのファンドを通してエネルギー転換等への資金援助が行われている。例えば、2023年12月には、ブルガリアに対して、Just Transition Fundから€1.2 billionが拠出され、石炭発電からの転換の促進や、新たな雇用機会の創出へのサポートへ充てられている [31]。こうした投資により、より排出量を抑えた発電方法への転換が加速し、EUA調達コストの負担減、European Green Dealの目標達成(グリーン・トランジション)に向かうことが期待される。

6-2.間接コスト

EU各国において、EUAのオークション収益の内50%以上は気候あるいはエネルギー関連の目的で活用されることを原則としてきたが、2023年以降、その全収益をグリーン・トランジションおよび、それによる社会的影響への対策へ充てるものとなった [32]

間接コストの公的補填については、EU域内で統一的な政策は取られていないものの、一部のEU加盟国では、欧州委員会のガイドラインにのっとり、間接コストの補填を行っている。EUAオークション収益もこの間接コスト補填に活用されており、2022年に発生した間接コストに対しては、15のEU加盟国によって同年オークション収益の内 16%がその補填へと充てられている [33]

気候変動対策において、優先すべき分野はEU加盟国の間で、大きく異なる背景はあるものの [34]、特に2021年から2022年では電気価格が高騰[Fig.6]した中、間接コストの補填金額は同期間にEU全体で83%増加している。また、補填金額のオークション収益に占める割合も、2021年の10%から2022年では16%へと増加している [33]

間接コストの高騰が加速すると、エネルギー転換等の抜本的対策への資金供給が圧迫され、排出量削減の足かせになりかねない。EU各国に対し、間接コストへの公的補填は原則オークション収益の25%を上限に設定している [33]。但し、2023年以降では天然ガス価格、電気価格の高騰も一服し[Fig.6]、間接コストの補填も一旦は落ち着いているとみられる。

昨今では、EUに限らず世界的にインフレが進む中、間接コスト高騰も物価上昇圧力となっていることは想像に難くない。EU加盟国の中にはコスト補填政策が施行されていない状況下、2021年から2023年にかけては、年10%超のインフレに直面した国も複数存在する。先述のようなファンドを通した資金供給は行われているものの、こうした物価上昇にみられるような国家間の経済的負担感の格差拡大は、グリーン・トランジションへのリスクになり得ると考える。ここでは深く言及しないが、一般に気候変動対策のための資金援助(International Climate Finance)に関して、発展途上国を中心とした被支援国に対する出資金額が不十分である点や、出資方法により被支援国の負債につながるなどの問題も指摘されている [35]

7.科学的側面

EU ETS発足以降パリ協定を経て、排出権市場の取引量は急速に拡大してきた。原点に振り返ると、こうした仕組みが構築されてきた背景には、排出量削減による地球温暖化対策がある。パリ協定では「世界平均気温上昇を産業化前の水準から2℃未満にとどめる」との目標が掲げられている [1]。しかし、将来の気温上昇予測など、政策決定を行う上で根幹ともいえる科学的側面について、その周知は限定的である。ここでは、科学的詳細について深掘りはしないが、関連機関やその政策決定への影響、さらに専門家の目線からの意見にも触れる。

パリ協定等の国際条約は、気候変動に関する国際連合枠組条約の締約国会議 (以下、COP)にて採択されるが、その科学的側面に関しては、国連の下に設立された政府間の組織である「気候変動に関する政府間パネル (以下、IPCC)」が助言を行う [36]。IPCCは温暖化の原因、影響、対策についての評価報告書 (以下、AR)を数年毎に公表しており、そこには政策決定者向けの“要約”も添えられる。政策決定者の多くは、その要約を把握していたとしても、報告書の詳細を熟読し、科学的側面を十分理解した上で政策決定しているかは疑問の余地がある。

スタンフォード大学でシニア・フェローを務めるSteven E. Koonin氏は、自身の著書『Unsettled』 [37]の中で、ARの要約がミスリードにつながる懸念を示している。同氏は、ARの要約が提示するメッセージと、同レポートの科学的内容との間には顕著な差異があると指摘する。例えば、AR6の見出し文には、「持続可能で居住に適した将来を担保する機会は、急速に失われつつある。」との記述がある [38]。しかし、AR6では前回報告書(AR5)と比較して、温暖化予測が下方修正されており、これは報告書の要約を通して広く周知されるべき事実であると、Koonin氏は指摘する。さらに、将来のGHG排出量について、標準的シナリオでは、産業化前からの気温上昇は2.7℃程度との予測である一方、報告書では通常からかけ離れたハイリスク・シナリオが最も頻繁に参照されているとも述べている。

マサチューセッツ大学アマースト校の教授Robert Pollin氏は、自身ならびにNoam Chomsky氏、C.J. Polychroniou氏との共著『Climate Crisis and the Global Green New Deal』[39]の中で、Global Green Dealを“保険”として捉える考え方を示している。これは、不確実ではあるものの将来的な生態系破壊などの深刻なシナリオに対し、Global Green Dealを通じて人類や地球を保全しようとする姿勢を表している。 一方で、Koonin氏はIPCCの報告における極端なシナリオ(テールリスク)の扱いに対して懐疑的な立場をとっており、こうした前提に基づく政策判断には慎重であるべきだと主張している。

両者の立場を対比すると、現在の地球温暖化対策やGlobal Green Dealを、テールリスクへの備えとして正当化すべきかどうかという点が、一つの重要な論点となっていることがうかがえる。ただし、このような枠組みでの理解が社会に十分浸透しているとは言い難い。

パリ協定、European Green Dealの提唱以降、世界経済および地政学的状況は大きく変遷している。2024年のCOP29でも、発展途上国を中心に、地球温暖化対策に関する経済的な不満が露呈するなど、多くの問題を抱えている [35]。少なくとも経済政策の面で国際的合意が維持されなければ、政治的緊張につながり、パリ協定離脱を表明する国が今後さらに出てくることも懸念される。地球温暖化対策を将来の環境危機に対する”保険”と捉えるならば、”保険料負担”については様々な角度から検討する余地があるものと考えられる。

8.米大統領選後: 相次ぐ大手銀のNZBA離脱は後退の兆しか

2024年11月、米国でドナルド・トランプ大統領が再び当選、翌2025年1月の就任後、米国がパリ協定から再度離脱する大統領令に署名するなど [40] [41]、地球温暖化対策の後退につながる動きがみられる。既に当選後の2024年11月下旬には、資産運用大手3社が、環境活動を通して反トラスト法に抵触したとして、米国の複数の州から訴訟を提起されたと報じられている [42]。独系エネルギー企業も、米国のエネルギー政策を巡る先行き不透明感を警戒し、同国での再生可能エネルギー関連プロジェクトへの出資を一旦削減するなどの動きもみられる [43]

金融界でも、米銀に続いて邦銀もNZBA (Net-Zero Banking Alliance) からの離脱を表明しており [44]、こうした大手銀の動きを懸念材料と捉える向きもある [45]。但し、2024年11月以降に相次ぐ大手銀のNZBA離脱自体は、必ずしも温暖化対策後退に直結するとは限らない。2022年10月の段階でも、米大手6銀は、ESG (Environmental, Social and Governance) 活動やNZBAとの関係について、消費者保護法への抵触が疑われた [46]。欧州では、2023年1月、ドイツでサステナブル・バンクとして知られる金融機関もNZBA離脱を表明、同アライアンスの意義が問われるような動きもあった [47] [48]。2024年のECBのワーキング・ペーパー“ Business as usual: Bank Climate Commitments, Lending, and Engagement” [49]でも、NZBA等のアライアンスを通した気候変動対策の有効性については疑問を呈している。今のところ、EUではEuropean Green Dealの後退を示唆する目立った政策変更はみられないが、既存政策をどこまで堅持できるか、引き続き注視すべきである。EUではCBAM導入を段階的に進めており、これは米国を含む域外からの輸入品に対し、カーボン・フットプリントに応じた調整コストを求める仕組みである [10]。トランプ大統領就任後、米国が様々な関税導入へ動く中 [50]、EUはCBAM導入をスムーズに進められるのか、楽観視はできない。

さいごに

環境保全のために社会が経済的負担を負うことは必要だが、急進的ともいえる温暖化対策を通して、一部企業や経済圏が疲弊する傾向もみられるようになった。そうした面にも考慮してか、欧州委員会委員長二期目に入ったフォンデアライエン体制では、「成長との共存」が打ち出される[52]ようになっており、温暖化対策負荷の実質的な軽減と成長のバランスを取るためにどのような手が打たれていくかがポイントとなる。金融業界でみた場合に、主要邦銀もNZBA離脱を表明しているが [44]、現段階では気候変動対策への取組みを大きく変更したとは言えず、米国の動きとともに欧州の枠組みへの対応をどのように進めていくかが注目される。

執筆者:DENTSU SOKEN UK, LTD. 30 Moorgate London EC2R 6DA United Kingdom

Abbreviations (略語)

略語 正式表記 日本語訳

AR

Assessment Report

評価報告書

CBAM

Carbon Border Adjustment Mechanism

炭素国境調整メカニズム

CCM

Compliance Carbon Market

コンプライアンス炭素市場

COP

Conference of the Parties

締約国会議

ECB

European Central Bank

欧州中央銀行

EEA

European Environment Agency

欧州環境機関

EEX

European Energy Exchange

欧州エネルギー取引所

ESG

Environmental, Social and Governance

環境、社会、ガバナンス

ESR

Effort Sharing Regulation

努力分担規則

ETS

Emission Trading System

排出量取引制度

EU

European Union

欧州連合

EUA

European Union Allowance

欧州連合排出枠

EU27 (2020)

European Union which consists of 27 countries as of 1 February 2020.

2020年2月1日時点の27カ国からなる欧州連合

GHG

Greenhouse Gases

温室効果ガス

HDD

Heating Degree Days

暖房度日

IEA

International Energy Agency

国際エネルギー機関

IPCC

Intergovernmental Panel on Climate Change

気候変動に関する政府間パネル

MiFID II

Markets in Financial Instruments Directive II

第二次金融商品市場指令

MSR

Market Stability Reserve

市場安定性準備金

NZBA

Net-Zero Banking Alliance

ネットゼロ銀行同盟

tCO2E

Tonnes of Carbon Dioxide Equivalent

二酸化炭素換算トン

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