田辺三菱製薬株式会社

RPA活用のパイオニア、田辺三菱製薬が取り組む
「RPA2.0プロジェクト」の可能性

  • 医療・ヘルスケア
  • RPA

国内屈指の製薬会社として知られる田辺三菱製薬株式会社。同社は、他社に先駆けてRPAを導入し、その後も先進的な取り組みに挑戦し続けていることで注目を集めています。2016年末にRPAの情報をキャッチし、翌2017年にPoC(概念実証)を実施。10体のロボットによって1,000時間の業務時間を削減することに成功。現在は約350体のロボットが、50,000時間超の業務時間削減効果を生み出しています。

そんな同社が、2021年4月に満を持して開始したのが「RPA2.0プロジェクト」です。「RPAの活用をもうワンランク引き上げたい」、そう考えた、田辺三菱製薬グループ全体のデジタル化推進を担う田辺三菱製薬プロビジョン株式会社 ワークイノベーション部の佐々木孝之氏が旗振り役となって、「RPA&Friends(RPAを中心としたローコードツール総動員)」をテーマにRPAのさらなる活用の模索が進められています。現在は、RPAとMicrosoft 365、RPAとチャットボットを連携させる取り組みなどが進行中。実験段階ではありますが、これまでにない革新的な仕組みが生まれつつあると言います。プロジェクトリーダーの佐々木氏と、そのパートナーとして伴走を続けるISID 金融ソリューション事業部の間中英明が、プロジェクトの経緯やその先進性、RPAの可能性などについて、大いに語り合いました。

「これぞまさにイノベーション!」、大きな衝撃を受け、
RPAを導入した

— まずは「RPA2.0プロジェクト」の前段となる、RPA導入 プロジェクトについてお聞かせください。どのようなきっかけ でRPAの導入を検討されることになったのでしょうか。

佐々木:2016年頃ある大学の「イノベーターシッププログラム」に1期生として参加したことが転機になりました。そのイノベーターシッププログラムは、イノベーションを引き起こすために必要なリーダーシップや知見について総合的に学ぶもので、非常に貴重で、刺激的な体験ができました。講義の中で、「これからはビッグデータ、AI、クラウドの時代がやってくる」と強くおっしゃっており、調べていく内に、「システム開発の民主化」という大きな潮流の変化が起きていることに気付きました。そして、今後、企業が大きく飛躍するためには、ITを実装できる人材を現場単位で育成していくことが極めて重要になるということを感じました。

そのようなタイミングで、たまたま参加していた研究会で、「面白いロボットを紹介するよ」と言ってRPAを紹介してくれまして…。Webからある値を取ってきてExcelに書き出すといったような処理をすべて自動でやっている様子を見て、もう即座に「すごい!」「これぞまさにイノベーション、現場レベルでの業務改善とIT人材の育成を実現する魔法のツールだ!」と思いました。

興奮冷めやらぬままに、メンバーを集め、自分達でロボットを開発し、会社の幹部らに「これからRPAの時代がやってくる!」と熱くプレゼンをしたことを覚えています。当時は、会社側も、「業務改善による時間と費用の捻出」「働き方改革」が重要と考えていた時期でした。そこにRPAがバチッとはまって、導入プロジェクトがスタートすることに。「IT人材の育成」というコンセプトにも大きな賛同が得られました。2017年にPoC(概念実験)を開始し、10体のロボットを使って、約1,000時間の業務時間を削減するという成果を出すことができました。

ISIDのセミナーがきっかけになり、「RPA2.0プロジェクト」がスタート

高い技術力と時代の先を行く発想力を持つ間中さんと出会ったことで、RPAを中心としたローコードツールのハイレベルな活用の取り組み「RPA2.0プロジェクト」がスタートしました。

佐々木孝之氏 (田辺三菱製薬プロビジョン株式会社 ワークイノベーション部)

—佐々木さんは2021年の6月に、RPAの活用をワンランク引き上げるための「RPA2.0プロジェクト」をスタートされています。このプロジェクトは、ISIDの間中と出会ったことがきっかけで始まったとお聞きしました。遡って、間中との出会いについてお聞かせください。

佐々木:以前から「RPAだけでなく、AI-OCRやチャットボットなどを導入してみたい」と考えていたこともあって、ふらっと間中さんのチャットボットセミナーに参加したんです。

実際に参加してみたら、チャットボット単体の話ではなく、「RPA×チャットボット」というまったく想像もしていなかったようなことがテーマになったセミナーでした。「RPAはRPA、チャットボットはチャットボット」と考えていた私にとって、目から鱗が落ちるような話でした。「デジタルツールをつなげることで活用の幅が劇的に拡大する」「これまでリーチできなかった業務も改善できる」と知って、大きな衝撃と感銘を受けたことを覚えています。

間中:私が「RPA×チャットボット」のセミナーを担当していた2019年頃というのは、やっと国内でRPAの活用が始まったくらいの時期でした。まだまだ「RPAを入れたばかり」「活用法もよくわからない」という企業が多く、正直なところ、なかなかそのテーマは理解されにくかったように思います。

RPA単独での業務効率化にはもちろん取り組んでいましたが、将来必ずRPAと別のソリューションを組み合わせた更なる業務効率化(Hyper Automation)が必要になるときが来ると確信があったんです。 その概念をどのように実現するか検討していく中で、1つの可能性として、RPA×コミュニケーションプラットフォーム(Microsoft Teamsなど)を活用して、コミュニケーションすらも自動化出来ないだろうか?と考えるようになりました。
そういった検討の中から生まれたのが、RPA×チャットボットです。このソリューションが世の中で受け入れられるか確認する意味も兼ねて、セミナーを開催しました。

そのセミナーに佐々木さんが参加してくださり、そして、強く共感してくださった。しかも、佐々木さんは、既に自社でRPAを活用されていて、十分な結果を出されているというではないですか。そのような方にご理解とご賛同をいただけて、とても励みになりました。

佐々木:その後、ISIDの営業担当の取り計らいで、間中さんと直接お話する機会を持つことが出来て……。日本企業の未来やデジタルシフトについて幕末の志士のように(笑)大いに語り合い、意気投合して、「一緒にRPAのさらなる可能性を模索するためのプロジェクトをやりましょう!」ということになったんですよね。

Microsoft Power AutomateによるMicrosoft Teamsのメンバー入れ替え自動化

—「RPA2.0プロジェクト」では、実際にどのようなことに取り組まれているのでしょうか?

佐々木:「RPA&Friends(RPAを中心としたローコードツール総動員)」をテーマに据えて、さまざなまローコードツールのハイレベルな活用を模索しています。

間中:私たちISIDは、そのための技術支援、コンセプトやアイデアなどの提供を行っています。これまでに、「RPA×Microsoft 365」「RPA×チャットボット」「RPA×Power Automate」など、さまざまな組み合わせや、課題に対するベストなツール選択をともに考え、試行錯誤しながら検討を進めてきました。

佐々木:現時点で現場の悩み解決につながったのが、Power AutomateによるMicrosoft Teamsのメンバー入れ替えですね。これまでは、Microsoft Teamsを使った研修を行う事務局の方は、期替わりのメンバー入れ替えの度に、数十人のメンバーをすべて削除して、新しいメンバーの登録を手作業で行っていました。他にも、当社に在籍する約400名が使うチームの毎月のメンバー変更など、メンバー入れ替えは多くの方から「地味に大変だね」という話があったんですよね。そこで、Power Automateによってメンバー入れ替えを自動で行える仕組みを作りました。我々が開発したプログラムを入れてもらえれば、Excelのリストから、自動で、瞬時に、メンバー入れ替えができてしまう。実際にこのプログラムを使った社員からは「こんなに簡単にできるの?」「とても便利になった」などのたくさんの声が届いています。しかも、ノンカスタマイズで使える魔法のようなソリューションです。

間中:開発の際に心掛けたのが、「プログラムを配ったらすぐに使えるようにする」ということ。配布先の部署で設定やカスタマイズなどをしなくても済むように、徹底的に先回りして調整を行いました。結果、ノンカスタマイズで利用できる「入れて終わり」のプログラムが出来上がり、ユーザーからも好評で、大変大きな手応えを感じています。

佐々木:現在は、田辺三菱製薬プロビジョンのなかだけで使用しているのですが、間もなくグループ全社に展開していきます。毎月の人事異動のたびに200~300名の管理者がメンバー入れ替えを行っており、これがすべて自動化されるわけですから、効果はかなり大きいと思いますね。また、もうひとつの狙いもあります。200~300名の方がこのローコードツールを体験いただくことで、「これができるなら、こんなこともできるのでは?」といったことを考えるきっかけ作りになると考えています。

ゆくゆくはチャットボットを入口にRPAを立ち上げられるようにしたい

社員と会社の未来のために、より便利な仕組みを、本気で創出しようとされている。佐々木さんのような熱い方がいらっしゃるからこそ、挑戦が続けられているのです。

間中英明(ISID 金融ソリューション事業部)

—「RPA×チャットボット」についてもお聞かせください。なにか具体的に進んでいる取り組みなどありますか?

間中:現在、私が所属するISIDの事業部内で、「出勤時や退勤時にチャットボットの質問に答えると、それがそのまま勤務報告システムに反映される」という仕組みを作って試験的に活用しています。これはコロナの影響でテレワークが進み、チャットや勤怠管理システムなどあらゆるツールに勤怠の記録を入力しなければならなくなってしまって、「結構な手間だね」「記入のし忘れなども増えたね」ということが問題になり試験的に開発したもの。出勤時間及び退勤時間になるとチャットボットが「何時から業務を始めますか?」「業務は何時までですか?」など勤怠に関する質問を投げかけてきて、それに応えるだけで、一気に上司への報告や業務報告システムへの登録が済むようになっています。
この仕組みをヒントに、田辺三菱製薬でも同様の導入ができないかと考えているところです。

佐々木:「RPA×チャットボット」の部分については、取り組みを始めたばかり。まだまだ構想段階ですが、直ぐにでも、チャットボット経由でRPAを動かしたいと考えています。現在、当社では、約350体の業務ロボットが稼働しているのですが、今後は、1,000体、2,000体のロボットが、当たり前に稼働するようになると思っています。そうなったときに、コンソール等を立ち上げて、ひと手間かけてRPAを起動するのではなく、チャットボットで、サクッとPRAを起動したいですよね。さらに、「そろそろお休みされてはどうですか?」「この2か月、有給を1日も取られていないですよね?」「来月の23日(金)を休暇にすると4連休になりますが、スケジュール登録しておきましょうか?」みたいな、人を潤すようなコミュニケーションを取ってくれる。そういう、有能な秘書やコンシェルジュのような「RPA×チャットボット」を作りたいと考えています。

先進的プロジェクトを成功させるには、よいパートナーが欠かせない

—他に進んでいる取り組みはありますか? あわせて、今後の展望についてもお聞かせください。

佐々木:Microsoft 365のSharePointカスタムリスト、Microsoft Power Apps、Power Automateを組み合わせて、さまざまな業務テンプレートを作ろうとしています。担当者一覧は、どの部署にも共通してありますが、定期的に確認依頼をして、最新の情報に保つのは手間がかかるもの。こうした作業が楽にできる仕組みがあれば、嬉しいですよね。チームや個人毎のタスク管理を支援する仕組みなど、共通業務のテンプレートをどんどん作りたいですね。

私たちは、「RPA2.0」によって、「すべての社員が、あらゆるシーンで、RPAを使いこなすようになる未来」を目指しています。多くの社員が自動化の恩恵を受け、その便利さを実感し、アイデアを出し、いずれは自らロボットを作ったり、ローコード開発を行うようになって欲しい。各現場で実装者が増え、良いものを作り、配り合う、そんな循環が生まれれば、これほど嬉しいことはありません。

—最後に、こうした先進的かつ実験的なプロジェクトを成功させるための秘訣についてお教えください。

佐々木:やはり、パートナーですね。高い技術力と時代の先を行く発想力を持ち合わせた間中さんという心強いパートナーがいたからこそ、ここまでやってくることができました。今後も間中さん、そしてISIDとともに、単なるDXの枠を超えた、DXingとも言うべきこの取り組みを伸展させ続けたいと思っています。

間中:そのように言っていただいて光栄です。私は、RPAの導入プロジェクトにおいて、お客さまの社内に、佐々木さんのような「DXの旗振り役」となる方が存在するということこそ、プロジェクトを成功に導く大きな鍵だと思っています。単なるコスト削減やリソース確保のためではなくて、社員と会社の未来のために、より便利な仕組みを、本気で創出しようとされている。こういう未来志向の熱い方がいらっしゃるからこそ、田辺三菱製薬は、RPAのパイオニアとして次々と先進的な取り組みを成功に導くことができているのだと思います。今後も、佐々木さんにしっかりと伴走し、よきパートナーとして、田辺三菱製薬のDXingをサポートしていく所存です。

2022年2月更新

田辺三菱製薬 会社概要新しいウィンドウで開きます

社名
田辺三菱製薬株式会社
本社所在地
〒541-8505 大阪市中央区道修町3-2-10
設立
1933年(昭和8年)12月13日
資本金
500億円
売上収益
3,778億円(2020年4月1日~2021年3月31日)
従業員数
単独:3,383人 連結:6,728人(2021年3月31日現在)
事業内容
医療用医薬品を中心とする医薬品の製造・販売
  • Microsoft 365、Microsoft Teams、Power Automate、Power Apps、Excel、SharePointは米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。
  • 記載情報は取材時(2021年11月)におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。

スペシャルコンテンツ