統合型LMS「CAREERSHIP」を活用し、組織を変革する“自律創造型人財”を育成
株式会社JTB旅行だけでなく、広く人々の交流を創造する企業に生まれ変わろうとしている株式会社JTB。国内・世界各地に支店やグループ会社を有し、現在、約2万人の社員が働いています。2013年、各店舗に散在していた社員の情報を一元化し、よりよい人財活用を進めるため、電通総研の統合HCMソリューション「POSITIVE」を導入されました。さらに2018年、従業員の主体的かつ自律的な学びを促すために、統合型LMS「CAREERSHIP」の利用を開始しています。
CAREERSHIPの活用は、2021年に発表された中期経営計画「『新』交流創造ビジョン」によって大きく伸展しました。「『新』交流創造ビジョン」は、「旅行業の枠を超えたイノベーティブな交流を創造すること」や「旅行業の変革」を本気で目指し、そのために、組織体制、事業戦略、教育体系、人財育成システムなどを大幅に見直すことが盛り込まれた計画です。これに基づき、研修改革という名のもと、一気に、教育プログラムの刷新、CAREERSHIPを中心としたeラーニング活用が進められました。
こうした学びの変革によって、「一斉型の集合研修からハイブリッド型の柔軟な研修へ」「履修主義から修得主義の教育へ」と、社内の教育環境や意識が大きく変わったという同社。具体的にどんな改革を行い、どうCAREERSHIPを活用しているのか、POSITIVEとどのように連携させているのか? 人財開発マネージャー統括 臼井氏と、人事企画チーム 桑山氏にお聞きしました。
集合型の一斉研修から、eラーニングを含む多様な研修へとシフト
JTBがCAREERSHIPを導入したのは2018年のことでした。それまでは、研修=集合研修を指し、自社独自の「研修申し込みポータルサイト」だけで運用していました。研修申し込みサイトをリプレイスすることになり、課題点を洗い出す中で、「時代に合わせて集合研修だけでなくeラーニングを採り入れたほうがよいのではないか」「社員の履修記録などがデータとして残せるようなシステムが必要なのではないか」という話が出てきました。他に「社員に合った研修をレコメンドするような機能もあったほうがよい」という意見も。これらの意見を勘案して、SaaS型の統合型LMSに着目しました。
「以前は、東京都多摩市の研修センターなどを使って、主に集合型の一斉研修を行っていました。これら一斉研修に申し込むためのサイトを自社で構築していたのですが、『申し込むときにしかアクセスしないため、なかなか使い方が覚えられない』『上司から受けろと言われたから申し込むケースが多く、階層別必修研修案内が大変』『研修によっては、自社サイトではなく他の窓口で申し込みをしなければならないこともある』など、課題が多くありました。ですから、『とにかく入り口を一本化したい』と考えました。ここにアクセスすれば、自分に必要な研修の情報が得られ、申し込みができ、さらにeラーニングで学びそのものが深められるといったシステムがあるといいなと思いました」
こう話すのは、同社で人財開発を統括する臼井氏。課題を解決するソリューションを探し、CAREERSHIPに行きついたと言います。以前は臼井氏とともに人財開発を担当しており、現在はPOSITIVEの運用や管理を行っている桑山氏は、導入の決め手についてこう続けます。
「CAREERSHIPを選んだ決め手は、JTBグループの社員約2万人がスムーズに使えるというところ。『1,000人、2,000人なら問題なく使えます、実績もあります』ということではなくて、数万人単位の使用に耐えられるシステムという点で評価できると感じました。また、本社でも運用するけれどもグループ各社でも運用できるような、柔軟性のあるシステムがよいと思っていました。POSITIVEも『本社・個社で柔軟に活用できる』という点が当社のニーズと合致すると感じて導入しましたので、同じ思想ですね。グループ会社や社員が多いからこそ、柔軟性のある運用や管理ができるシステムが好ましいと考えていました」
他に、「自社オリジナルのeラーニングコンテンツを簡単に作れる機能」「個々の社員に適した学びの情報を届けられる機能」「自身の受講状況がリアルタイムで把握できる機能」などにも惹かれたと言います。さらに、eラーニング、集合研修、テストなどを組み合わせて、「学びのパッケージ」として提供できる点も大きなメリットだと感じ、JTBの規模に合った柔軟で安定したシステム、数々の機能などにも魅力を感じて、導入を決定したとのことです。
自律創造型人財の育成へ!新型コロナウイルスの流行で、学びの変革が加速した
CAREERSHIPを導入した翌年の2019年度、新型コロナウイルスの感染が拡大し始めました。これにより人の行き来が制限され、集合研修が行えなくなり、また旅行業そのものが大きなダメージを受けて、これまでのように予算をかけて研修を企画すること自体が難しくなりました。
「コロナは私たちにとってあまりにも大きな出来事でした。長年、事業の軸として大切にしてきた旅行業が一気に傾いてしまい、利益も大幅に減ってしまいました。何もできない日々が続きました。やがて社内に、『これを機に私たちは本気で変わらなければいけないんだ』という強い危機感が広がるようになって、『コロナのいまだからこそ、学びを止めてはいけない』という声が上がるようになりました」(臼井氏)
新型コロナの影響により、社として事業自体の存続にも関わる事態となる中、人財の流出やエンゲージメントの低下が大きな課題となりました。未曾有の危機においても社員の学びを止めずに会社を元気にすること、そして「自律創造型人財」の育成というミッション実現を目指し、社員が講師となり学びを深め合う「学びのサマーフェスティバル」を企画したといいます。また、階層別・職種別に行っていた履修主義の一斉研修を、CAREERSHIPを活用して、一人ひとりが必要な時に、必要な学びができるように修得主義に方針自体を変更しました。若手もマネジメントを学べたり、ベテランも学び直しができるといった、柔軟な仕組みに変えています。さらに、「eラーニング→修得度・理解度をセルフチェックできるテスト→フォローアップ」という学びの流れを、CAREERSHIP上でパッケージ化して提供することも行っています。受講必須のプログラムをパッケージ化したり、任意で受けられる研修、学び放題のeラーニングを豊富に取り揃えることで、学びの質と量を大幅に向上させました。
「現在、提供している当社オリジナルのプログラムは112種類。他にeラーニング学び放題サービス『まなびプレミアム』のコンテンツもあり、数えきれないぐらい多くの学習プログラムを提供できるようになりました。内容も、新人向けや管理職向けといった階層別のものから、コーチング、ファイナンス、プロダクトデザインなどテーマに沿って知識の習得を目指すもの、英語力を磨くものなど、大変バラエティに富んでいます。まさに、『必要な時に、必要な学びの提供』『いつでも、どこからでも自由に学ぶことができる』仕組みが整いました。社員からも『こういうものを待っていた』と、とても好評です。苦しい状況でしたが、コストを抑えつつ充実した学びが得られるようめいっぱい工夫し、それが変革につながりました。会社が求める、突破力・推進力のある『自律創造型人財』を育てる環境が整ったと感じています」(臼井氏)
2023年度のCAREERSHIP受講者は約9,600名。今後もコンテンツの精査や拡充を推し進め、一人ひとりの社員の「Will /Can/ Must」を支援する、よりよいプログラムを届けたいと考えています。
学びの窓口を一元化することに成功。今後はPOSITIVEとの連携強化を目指す
「コロナの拡大で、旅行業は大きなダメージを受けました。だからこそ、『学びを止めないこと』『成長し変わること』が必要だった。CAREERSHIPが、こうした変革に大きく貢献してくれたと感じています」
株式会社JTB 人事企画チーム 人財情報担当マネージャー 桑山京子氏
CAREERSHIPを導入して何よりもよかったと感じているのが、「学びに関する情報を一元化できた」点でした。これまでは、上司が口頭で伝えたり、人財開発チームがメールで知らせていた研修やテストの案内が、すべてCAREERSHIP上で行えるようになりました。申し込みや受講状況の確認もサイト上で行うことができ、「CAREERSHIPにアクセスすれば、学びに関する情報がすべて取得・管理できる」ようになったことだと言います。
「自宅をはじめとする社外の環境からサイトにアクセスできるようになったところも喜ばれています。以前、使用していた研修申し込みサイトは、自社で構築した自社限定のサイトだったため外部からはアクセスできなかったんです。SaaSのサービスにしたことで、いつでもどこでもアクセスできるようになり、自己啓発に活用してもらえるケースが増えていると感じています。
POSITIVEは人的資本経営のもっとも川上の部分にある仕組みだと考えています。そこで溜めた情報をいろいろなツールに落としていきたいと思っていますし、また、いろんなツールからのデータを吸い上げていきたいと思っています。次は、連携とデータ活用のフェーズへ。ますますの活用を、模索したいと思っています」(桑山氏)
企業概要データ
社名 株式会社JTB
本社 東京都品川区東品川二丁目3番11号 JTBビル
設立 1963年
資本金 1億円
従業員数 18,663名(グループ全体 2023年3月31日現在)
事業内容 旅行業、旅客鉄道会社及びその他の運輸機関の乗車船券類の発売に関する事業、観光地の開発並びに旅行及び観光施設に関する事業をはじめとする「人々の交流を創出する事業」
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